東京 八重洲 建設現場で鉄骨落下 2人死亡 事故が起きた状況は

19日午前、JR東京駅八重洲口近くのビルの建設工事現場で、クレーンでつり上げられていた鉄骨が落下し、作業員5人が巻き込まれ、このうち2人が死亡しました。警視庁が現場の責任者から話を聞くなどして事故の詳しい状況を調べています。

警視庁によりますと、19日午前9時20分ごろ、東京 中央区八重洲のビルの建設工事現場で、クレーンでつり上げた長さ30メートル、重さおよそ15トンの鉄骨をほかの鉄骨と固定する作業をしていたところ、突然、落下しました。

この事故で、つり上げられていた鉄骨の上で作業をしていたとみられる男性作業員5人が7階部分から3階部分に転落し、このうち2人が死亡しました。

死亡したのは、埼玉県朝霞市の会社員、原裕一郎さん(33)と千葉県市川市の会社員、花田大和さん(43)です。

このほか40代と20代の合わせて3人がけがをして病院で手当てを受けていますが、いずれも意識はあるということです。

現場は51階建てのビルの建設工事現場で、JR東京駅八重洲口近くの多くのオフィスビルが建ち並ぶ人通りの多い地区にあります。

警視庁は、現場の責任者から話を聞くなどして事故の詳しい状況を調べています。

鉄骨は長さ30m ほかの鉄骨と固定する作業中に落下か

警視庁によりますと、事故があった地上51階建ての複合商業施設の建設現場は、4階部分から7階部分はまだ床がない状態で、事故に巻き込まれた5人は7階部分で、はりにあたる鉄骨を設置する作業をしていたということです。

この鉄骨は長さ30メートル、重さ15トンほどで、現場の作業員の話からクレーンでつるした状態の鉄骨の上に5人が乗って、ほかの鉄骨と固定する作業をしていたとみられるということです。

ところが、何らかの理由で突然、鉄骨が落下し、5人もいっしょに3階部分まで転落したとみられるということです。

また、隣にあった別のはりも一緒に落下したとみられ、3階部分には折れた鉄骨が複数、散らばっていたということです。

死亡した2人の作業員は鉄骨の下敷きの状態で見つかり、5人の中には鉄骨と体が安全帯でつながった状態で倒れている作業員もいたということです。

現場では、ほかの鉄骨が落下するおそれがあるということで、警視庁は安全確認を行ったあと、現場の詳しい状況を調べることにしています。

大林組「誠心誠意対応 原因の究明に全力」

今回の事故を受けて施工している企業体の代表、大林組はコメントを発表し「お亡くなりになられた方のご冥福を心からお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様、被災された方々に心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと、深くおわび申し上げます」とした上で、「工事に従事される方の安全を守れなかったことは悔恨の極みであり、ご遺族の皆様と被災された方に対して今後、誠心誠意をもって対応させていただくとともに、事故原因の究明に全力を挙げて取り組み、全社を挙げて再発防止と安全施工の徹底に取り組んでまいります」としています。

大林組の発表によりますと、事故は建物の7階でクレーンでつるして取り付けていた鉄骨の「はり」1本と、すでに設置済みの「はり」4本の合わせて5本が崩れ、およそ20メートル下の3階の床部分まで落下しました。

落下した「はり」は長さが13メートルから18メートルあり、重量は合わせておよそ48トンだということです。

この事故で「はり」の上で作業をしていた5人が落下して2人が死亡し、3人が病院で治療を受けているほか、3階で作業をしていた1人もヘルメットに飛散物がぶつかり病院で治療中だということです。

企業体では事故を受けて工事を中断し、現時点では再開の見通しはたっていないと説明しています。

東京駅八重洲口の正面 51階建てビルの建設現場

現場は、東京駅八重洲口の正面に位置する地上51階建ての複合商業施設の建設現場です。東京駅前の再開発事業として進められていて、2021年に着工し、2025年の完成予定に向けて工事が進められています。

建設は、大林組と大成建設の共同企業体が手がけていて、取材に対して「現在、状況を確認している」と話しています。

ホームページによりますと、建設中のビルにはオフィスフロアのほか、国際会議を開催できる会議場や、演劇やコンサートを開催する劇場、それに、商業施設が入るフロアなどが設けられることになっています。

国土交通省によりますと、事故のあった現場は「民間都市再生事業計画」として令和2年に国土交通大臣に認定され、大規模な工事が行われています。

計画では、建物は地上51階、地下4階の鉄骨造りで、オフィスに加え、高速バスの停留所を集約した大規模バスターミナルのほか、国際会議を開催することができるカンファレンスセンターや外国語に対応した医療施設などを整備するとしています。

また、災害時にはバスターミナルを活用して物資の輸送を行うほか、医療施設で救護活動なども実施する計画です。

計画によりますと2021年の秋に着工し、2025年の春に建物の工事が完成する予定で、東京駅前の交通機能の強化や国際競争力の強化を目指すとしています。

東京駅周辺は再開発が盛ん

東京駅周辺では、今、再開発が盛んに行われています。このうち、東京駅八重洲口では、ことし3月に開業した複合施設「東京ミッドタウン八重洲」を含む3件の大規模な再開発事業が進められていますが、事故が起きたのは、そのうち1件の現場でした。

中央区によりますと、この現場は「八重洲1丁目東B地区」とよばれるところだということです。

さらに、一帯では日本橋で5件、大手町で1件の再開発事業が進められていて、今後も、超高層のビルが相次いで建てられる計画です。

現場近くの男性「ドーンという大きな音響く」

現場近くの地下に事務所を構えるレンタカー店の従業員の男性は、午前9時ごろに自動車が壁にぶつかったような大きな音が1度、響くのを聞いたということです。

男性は「事務所は地下2階にありますが『ドーン』という大きな音が響いたのが聞こえました」と話していました。

現場近くの飲食店従業員「聞いたことない大きな音」

また、現場近くの飲食店の従業員は「ドカンという聞いたことがない、かなり大きな音と金属が落ちたような音が聞こえてきたので、何か事故があったのかなと思いました。今もパトカーや消防車がひっきりなしに行き交い、騒がしい状況が続いていて驚いています」と話していました。

現場の近くにいた人「雷が落ちるような音と地響き」

現場の近くにいた40代の男性は「雷が落ちるような音と地響きがして建設工事現場を見ると、警備員がシャッターを開けて慌てている様子だった。2人が頭から血を流しているのが見えた。現場は1年半くらい前から工事をしていて、いつも大勢の人が出入りしていた」と話していました。

斉藤国交相「現場の安全確保 最も重要な責務」

斉藤国土交通大臣は19日午後、国土交通省で開かれた建設業界との意見交換の場で、東京駅八重洲口近くの工事現場で起きた事故について触れ、「お亡くなりになられた方に心よりご冥福をお祈りするとともに事故にあわれた方にお見舞い申し上げます」と述べました。

そのうえで、出席した業界団体に対し「現場の安全確保は建設会社の最も重要な責務であることを肝に銘じていただき、取り組んでほしい」と述べました。

建設業の労災死亡者数 2年連続増加

厚生労働省によりますと建設業における労働災害の死亡者数は全国で2017年の323人から2020年には256人まで3年連続で減少していました。しかしその後、2021年には278人、2022年には281人と2年連続で増加に転じています。

増加の要因としてはコロナ禍からの経済活動の再開などが考えられるということです。

去年の死亡者数で、最も多いのは
▽建築工事業で117人
次いで
▽土木工事業で108人
▽その他の建設業が56人となっています。

内訳として、最も多いのが
▽「墜落・転落」で116人
次いで
▽「はさまれ・巻き込まれ」で28人
▽「崩壊・倒壊」と「激突され」がそれぞれ27人
▽「交通事故」が24人
▽「飛来・落下」が16人などとなっています。

また、建設業では、ことしも先月末までに全国で128人が労働災害で亡くなっていて、都内を所管する東京労働局の管内では10人にのぼっています。

このうち7人が7月と8月に死亡していて、東京労働局は先月、建設会社や発注者などに対して労働災害の防止対策を徹底するよう緊急要請を出しています。