敬老の日 行事見直す地域相次ぐ 高齢者増加など背景 広島 福山

敬老の日の18日、広島県内の各地でも長寿を祝う催しが開かれました。一方、高齢者の増加などを背景に、毎年開いていた行事をことしは開かないなど見直しを進める地域も相次いでいます。

敬老の日の18日、広島県内の各地ではさまざまな催しが開かれ、このうち福山市北部の加茂地区では、自治会などが地元の中学校の体育館でお祝いの行事を行いました。

行事には77歳以上の高齢者90人が参加し、中学生による合奏や地域の人による日本舞踊が披露されました。

参加者は知っている曲を演奏者と一緒に歌ったり、拍手をしたりしながら、笑顔で楽しんでいました。

参加した83歳の男性は「楽しかった。久しぶりに会う人たちもたくさんいて、交流ができてよかった」と話していました。

加茂地区では、新型コロナの影響で去年までの3年間、敬老の日の行事を開かなかったことを除き、長年の間、毎年、行事を開いてきたということです。

行事の実行委員長の久保辰己さん(71)は「高齢者は外出する機会が少ない上、コロナ禍でますます人と会うことがなかったので、セレモニーで機会を作りたかった。楽しんでもらえてうれしい」と話していました。

こうした敬老の日のお祝いの行事。

福山市ではコロナ禍の前の2019年まで、市と地域の共催で、市内に80ある地区や学区ごとに原則としてすべての地域で開かれてきました。

しかし、行事の対象の高齢者が年々増えていることに加え、開催を担うのが地域の高齢者となるなど、負担が重くなっているという意見が寄せられていました。

このため市は、ことしからすべての地域で行事を開くことをやめ、地域ごとに判断して開く場合などには市が補助金を出す方法に見直しました。

こうした結果、ことしは80の地域のうち、敬老の日やその前後に行事を開くのは22の地域にとどまり、このほか58の地域は記念品を配るのにとどめたり、地域の催しと合わせて行事を開いたりする対応を行うことになりました。

このうち8の地域では行事や記念品の配布などを全く行わないということです。

また、市はお祝いの対象とする高齢者の年齢も、ことし、これまでの75歳以上から77歳以上に引き上げました。

今後、80歳以上まで引き上げていくとしています。

市によりますと、今回の見直しで、行事や記念品の配布にかかっていた費用は昨年度が8100万円だったのに対し、今年度は5100万円になったということです。

今回の見直しについて、福山市高齢者支援課の細井隆司課長は「高齢化が進み、75歳以上の対象者が増えていて、高齢者像も変わる中で見直しを求める声をいただいた。身近なところで地域の実情に応じた敬老のお祝いができるよう、持続できる環境づくりを後押ししていきたい」と話していました。

行事を開かない地域は

ことし、敬老の日のお祝いの行事を開かなかった福山市の地域の代表は、高齢者の増加や地域の担い手不足で負担が重くなっていたことを理由にあげています。

市の中心部に近い旭地区では、例年、敬老の日などにほかの地区と同じように行事を開いてきましたが、ことしは行事を開かず、高齢者に記念品のタオルを個別に配るのにとどめました。

この地区の町内会連合会長の大原博さん(82)によりますと、毎年同じような内容が続きマンネリ化が進んでいたことに加え、お祝いの対象となる高齢者が年々増え、ことしは1000人近くに達していました。

こうした中、行事の開催も高齢者が担うなど地域の担い手不足で負担が重くなっていました。

こうしたことから、ことし敬老行事を開催するか地区の15人の町内会長にアンケートを行ったところ、3分の2以上が「開催しない」という回答だったということです。

大原さんは「お世話をする側も高齢になってきているし、お手伝いできる人も少なくなっている。お祝いの気持ちは持ち続けたいが、どうしていけばいいのか難しい」と話していました。