【Q&A】新型コロナの支援策 どう変わる?

ことし5月に感染症法上の位置づけが「5類」に見直された新型コロナウイルス。それから4か月がたち、これまで続けられてきた「特例的」な公費負担などの支援策が10月から見直されることになりました。ただ、「5類」になったとはいえ、新型コロナ自体がなくなったわけではありません。感染拡大に備えるために、これから新型コロナの制度はどう変わっていくのか。ワクチンの対象者や値段はどのようになるのか。Q&Aで詳しくまとめました。

Q.何が変わるの?

A.10月から見直されることになったのは、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行したあとも継続してきた患者や医療機関などへの以下の支援です。

▽コロナ治療薬の公費負担
▽入院医療費の補助額
▽医療機関への補助金「病床確保料」
▽医療機関への診療報酬の特例加算
▽高齢者施設への支援

Q.治療薬の負担はどう変わる?

A.まずは、治療薬の費用についてです。

外来の医療費は「5類」への移行を受けて、窓口負担分は自己負担に見直された一方、高額な治療薬の費用についてはこれまで全額の公費負担が続けられてきました。

しかし、ほかの病気との公平性を考慮して、10月からは一定の自己負担が求められることになりました。

具体的には、自己負担額の上限が医療費の自己負担割合によって次のように変わります。

▽自己負担1割の人 3000円
▽自己負担2割の人 6000円
▽自己負担3割の人 9000円

厚生労働省の試算によりますと、新型コロナ疑いで外来の医療機関にかかった場合の治療薬のほか、検査料や医療費を合わせた費用は75歳以上の人では次のようになります。

▽自己負担1割の人 4090円
▽自己負担2割の人 8180円
▽自己負担3割の人 1万2270円

Q.入院することになったらいくらかかる?

A.万が一、症状が重く入院が必要になった場合、入院医療費がかかります。

この費用についても10月から見直されることになりました。

これまで、1か月当たりの医療費が高額になった場合に「高額療養費制度」を適用したうえで、さらに最大2万円が補助されてきましたが、10月からは補助額が半額の最大1万円となります。

厚生労働省の試算では、住民税非課税ではなく、年収がおよそ370万円までの75歳以上の高齢者が新型コロナで7日間入院した場合、コロナ治療薬の費用を除く自己負担額は所得に応じて3万9800円から4万7600円となるほか、食事代も別に必要です。

Q.医療機関への支援はどう変わる?

A.今後、医療のひっ迫を防ぐためには必要な病床をいかに確保していくかが重要です。

厚生労働省は、全国およそ8200のすべての病院で入院できる体制を構築するとしています。

一方で、病床の確保に関する制度が10月から変更されます。

見直されるのは、新型コロナの感染者の受け入れに備えて病床を確保しておくための病床確保料、いわゆる「空床補償」です。

「空床補償」についてはことし5月にも見直しが行われましたが、10月からさらに縮小されることになりました。

厚生労働省は5類に移行してから幅広い医療機関による対応が拡大しているとして、感染状況が一定の基準を超えて拡大するまで支給しないこととしました。

また、感染が拡大し、補助金を支給する場合も、対象を酸素投与や人工呼吸器が必要など、症状が重い患者のための病床を確保した場合に限ることにしています。

このうち、大学病院など特定医療機関の一般の病床は一日1床当たりの上限は3万7000円でしたが、10月からは3万円とするなど、補助額は9月までの金額の8割に縮小させます。

ただ、専門家からは新型コロナの患者を受け入れることで病院の経営が悪化しているケースもあり、「空床補償」が削減されることで病床の確保がさらに難しくなるのではないかといった声も上がっています。

このほか、新型コロナの医療提供体制を維持するために設けられていた診療報酬の特例措置についても見直しが行われます。

具体的には、必要な感染対策を実施した外来の患者を受け入れる医療機関や、重症や中等症の入院患者を受け入れる医療機関に対する診療報酬などが縮小されます。

Q.高齢者施設への支援は?今後は?

A.重症化リスクの高い高齢者が暮らす施設などへの支援については「感染が落ち着いている状況であっても医療崩壊を防ぐために一定程度、施設内療養ができる環境を維持する必要がある」として、要件や金額を見直して支援を継続することになりました。

このうち、感染者が発生した際の経費の補助については、10月からは職員1人当たりの補助の上限が一日当たり4000円になります。

また、施設内で感染者が療養をする場合、9月までは一日につき感染者1人当たり1万円の補助が支給され、クラスターが発生した際にはさらに1万円が追加されますが、10月からは1人当たり5000円とし、クラスターと認定される要件も、より大人数の感染が確認されたケースに限られます。

厚生労働省は例年、年末年始にかけて感染が拡大する傾向にあることから、医療提供体制の状況などを検証し、来年4月からは季節性インフルエンザなどの感染症と同様の対応とする方向で見直しを行うことにしています。

Q.ワクチンの値段や対象者は?

A.新型コロナワクチンの接種は「まん延予防上緊急の必要がある」として接種費用を全額公費で負担する「特例臨時接種」で行われ、ことし5月に感染症法上の位置づけが5類に変更されたあとも、無料での接種が続けられています。

9月20日からは、生後6か月以上の希望するすべての人を対象に接種が始まることになっていて、来年3月31日まで、自己負担なしで接種を受けることができます。

一方、全額公費の「特例臨時接種」は今年度末で終了することが決まっています。

厚生労働省は、来年度以降の費用負担については、新型コロナワクチンの接種を季節性インフルエンザなどと同様の一部自己負担が生じるケースもある「定期接種」にするかどうか検討を進める方針です。

また、接種の対象者は65歳以上の高齢者などの重症化リスクの高い人とし、年に1回、秋から冬の間に接種を行う方向で検討していて、ことし中にも最終的な方針を取りまとめることにしています。

Q.医療現場や専門家の受け止めは?

A.これまで重症化リスクのある患者に新型コロナの治療薬を処方してきた都内のクリニックの医師は、今後、薬の一部が自己負担となると処方を断る人や受診を控える人が出てくるのではないかと懸念しています。

東京・渋谷区のみいクリニック代々木では、発熱外来で一日20人から30人ほどの患者を受け付けていて、新型コロナ陽性と診断される患者の割合は、8月は3割程度でしたが、9月に入ってからは4割と増加しているということです。

これまで、新型コロナに感染した人のうち、基礎疾患がある人や高齢者などの重症化リスクが高い患者、それに症状が重い患者に対しては、自己負担なしで利用できる新型コロナの治療薬を処方してきたということですが、医師によりますと、患者の多くは服用後、のどの痛みが緩和したり、熱が下がったりしているということです。

みいクリニック代々木の宮田俊男理事長「財政上やむをえない部分もあると思うが、新型コロナの治療薬は新薬で高額なので、薬が一部自己負担になると薬を飲むことを断る人が出るかもしれない。感染初期でないと投与の対象にならない薬もあるため、治療の選択肢を広げる意味でもクリニックにかかってほしい。家で我慢したことで重症化してしまうのではないかと懸念している」。

また、感染症に詳しい国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「新型コロナの患者を受け入れる医療機関は、十分に増えているとは言えない。さらに、来月から病床確保料などの支援策が削減され入院患者を受け入れる医療機関が減り、ベッドを探すのが難しくなるおそれがある。新型コロナの患者を受け入れる医療機関の労力は今でもとても大きいので、それに見合うような支援策のあり方ついては今後も検討するべきだ」。

また「医療のひっ迫を防ぐため重症化リスクの高い人が適切に治療薬を使うことも大切だ。来月からは治療薬に自己負担が求められ、薬を使うべきか悩む患者も出てくると思うので医療従事者側がどのような人に治療薬を使うべきなのか、理解をしたうえで丁寧に患者とコミュニケーションを取ることが求められる。新型コロナに関する情報が減ってきていると感じているが、現在でもリスクの高い人が感染すると命に関わる病気であることに変わりはない。そのことを認識し対策を行ってほしい」