世界最高齢の現役薬剤師も 全国100歳以上の高齢者が過去最多

全国の100歳以上の高齢者が53年連続で過去最多を更新しました。
その数は全国であわせて9万2000人余り。去年から1600人以上の増加です。中には、100歳以上で現役で仕事をしている人もいます。

「いまでも学ぶことがある」

「ギネスワールドレコーズ」から「世界最高齢の薬剤師」に認定された女性にも話を聞きました。

100歳以上の高齢者 9万2139人に

厚生労働省は、9月1日時点の住民基本台帳をもとに、国内に住む100歳以上の高齢者の数を公表しました。

それによりますと、15日までに100歳以上になった人は、全国で合わせて9万2139人で、去年から1613人増えました。昭和45年の310人から53年連続で最多を更新しています。

性別では男性が1万536人、女性が8万1603人で全体の88.6%を女性が占めています。
(※厚生労働省が宮崎県分の数字の訂正を発表したことに伴い、記事を修正しました)

国内の最高齢は大阪 柏原市に住む女性の巽フサさんで、明治40年生まれの116歳です。男性の最高齢は、千葉県館山市に住む薗部儀三郎さんで、明治44年生まれの111歳です。

また、人口10万人当たりで見た100歳以上の高齢者の人数は
▽島根県が155.17人と11年連続で最も多く、
次いで、
▽高知県が146.01人
▽鳥取県が126.29人でした。

一方、最も少なかったのは
▽34年連続で埼玉県で44.79人
次いで、
▽愛知県が47.69人
▽千葉県が50.22人でした。

今年度中に100歳を迎える人は、海外に住む日本人や国内に永住する在日外国人も含めると、4万7107人で、厚生労働省は長寿を祝って記念品を送ることにしています。

仕事している人も増加 ギネスに認定された人も

国内では、100歳以上で仕事をしている人も増え続けています。
中にはギネス世界記録で世界最高齢として認定された人も。

5年ごとに行われる国勢調査の結果によりますと、国内の就業者のうち100歳以上は▽2010年が200人、▽2015年が243人で、直近の▽2020年は406人でした。

性別では▽女性が255人、▽男性が151人と女性が6割余りを占めています。

都道府県別では▽東京都が84人と最も多く、次いで、▽神奈川県が41人、▽大阪府が29人、▽北海道が16人でした。

「世界最高齢の薬剤師」の女性は

薬剤師の幡本圭左さん

東京・目黒区で薬局を営んでいる幡本圭左さんは去年100歳となり、今も薬剤師として週に6日、店頭に立って薬の処方などを行っています。

父親の勧めで薬学の専門学校に進学し、太平洋戦争のさなかの昭和18年に薬剤師の資格を取りました。

その後結婚し、2人の子どもを育てながら家計を支えるため30歳のときに薬局を開業。

それから70年、同じ場所で薬剤師を続け、去年7月には世界最高齢の薬剤師としてギネス世界記録に認定されました。

これまで大きな病気やけがをしたことがないという幡本さんは健康を維持するために、毎朝起床後におよそ10分間、手足を動かしたり、ストレッチをしたりするなど、適度な運動を心掛けているということです。

また、遠方に住むなどして直接お礼を言えない人から薬の注文があった場合には、万年筆で手紙を書き、感謝のことばを伝えるようにしています。

幡本圭左さん
お客さんから「いただいたお薬でよくなりました」などとひと言でも言って頂くとうれしいです。健康を売る店なので自分がよろよろしていたら申し訳ない。少しずつ長生きをして、皆さんに迷惑をかけないようにできればもう万々歳です。

やっぱりこの仕事が好きです。店にいらした方と話しているといまでも学ぶこともあるし、楽しくていい職だと思います。仕事を持っていて本当によかったです。みなさんも趣味でも仕事でもいいので、何か続けられるものを持って頑張ってほしいです。

国内最高齢 116歳女性 秘けつは「よく食べて眠ること」

国内最高齢 116歳の巽フサさん

国内最高齢の大阪・柏原市に住む巽フサさん。
明治40年4月25日生まれの116歳です。

9月18日の敬老の日を前に、大阪府の吉村知事と柏原市の冨宅市長が、15日、巽さんが暮らす高齢者施設を訪れ、長寿を祝いました。

車いすに乗った巽さんが姿を見せると、集まった人たちは拍手で迎え「おめでとうございます」などと声をかけていました。

吉村知事は、巽さんの長男の完次さんに長寿の祝い状を手渡したあと「これからもどうぞお元気で長生きでいてください」と述べました。

完次さんは「皆さんにお祝いいただいて母も心から感謝していると思います。これからも毎日を健やかに過ごしてくれるものと思います」と話していました。

巽さんの長寿の秘けつは、よく食べ、よく眠ることで、毎日の食事を楽しみにしているということです。

専門家「世代間交流 増やすことが重要」

高齢者と若者の世代間交流などをテーマに研究している東京都健康長寿医療センター研究所の村山陽研究員は、世代間での交流を増やしていくことが重要だと指摘しています。

東京都健康長寿医療センター研究所 村山陽研究員

社会保障や介護、医療など検討すべき課題はたくさんあると思うが、100歳の方が生き続ける、生活できているということは、それだけ社会の器が広がったということだ。

100年の歴史の中で戦争や震災などを経験し、多様な考え方や価値観を持っている人たちが増えているということは、私たちにとって学びのよい機会になると思う。高齢者にとっても、自分の記憶や思いを下の世代に話すことは自身の幸福や人生の満足につながるし、若い世代も高齢者への理解や思いやり、共感などへの成長につながる。

世代間交流といっても単に『はいどうぞ』では交流は起きないので、コーディネートをする人など工夫が必要になる。たとえば福祉施設の職員などが促すなどして若い世代とのコミュニケーションの場を作ることが重要ではないか。18日の敬老の日は各地でいろいろなイベントがあるので絶好の機会になると思う。