新型コロナとインフルエンザ 最新の感染状況は?

新型コロナウイルスの全国の感染状況は、今月10日までの1週間では1つの医療機関当たりの平均の患者数が20.19人で、前の週の0.98倍となっています。厚生労働省は「緩やかな増加傾向が続いていて、前の週からは減少したもののほぼ横ばいだといえる。引き続き感染対策を徹底してほしい」としています。

厚生労働省によりますと、今月10日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から1545人減って9万9744人となりました。

また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は20.19人で前の週の0.98倍となりました。

都道府県別 1医療機関当たりの平均患者数

都道府県別では、多い順に
▽宮城県が32.47人
▽岩手県が29.87人
▽千葉県が27.45人
▽埼玉県が26.95人
▽石川県が25.65人
などとなっていて、25の府県で前の週より増加しています。

このほか、今月10日までの1週間に新たに入院した人は全国で1万1566人で、前の週と比べて1744人の減少となりました。

厚生労働省は、全国の流行状況について「新型コロナの5類移行後、緩やかな増加傾向が続いていて、前の週からは減少したもののほぼ横ばいだといえる。年齢別では20歳未満が増加している一方でそれ以外は減少していて、学校再開などの影響が続いているとみられる。引き続き、感染対策を徹底してほしい」としています。

新型コロナの病床使用率 6つの県で5割上回る

新型コロナの患者用の病床使用率は、全国の6つの県で5割を上回っています。

厚生労働省は、入院している新型コロナの患者数や、確保されている病床の数、その使用率などを都道府県別に1週間ごとにまとめ、毎週公表しています。

それによりますと、新型コロナの患者用の病床の使用率は最新の今月6日の時点で最も高いのが
▽福岡県で65%、
▽神奈川県が59%、
▽宮城県が58%、
▽山形県が57%、
▽栃木県が51%、
▽兵庫県が50%
と6つの県で5割を超えています。

また、重症患者用の病床の使用率は、
▽和歌山県が44%、
▽山梨県が40%、
▽岡山県、▽愛媛県、▽高知県、▽熊本県が33%
などとなっています。

変異ウイルス オミクロン株の1種「EG.5.1」が最も多い

国立感染症研究所によりますと、国内で検出される新型コロナの変異ウイルスの割合はオミクロン株の1種「EG.5.1」が最も多く、来週の時点で63%になると推定されています。

そのほか「XBB.1.16」が16%、「XBB.1.9」が9%などと推定されています。

EG.5.1を含む系統は、WHO=世界保健機関がVOI=注意すべき変異ウイルスに指定して監視していて、世界的にも先月13日までの1週間で26.1%を占めています。

東京大学医科学研究所の佐藤佳教授らのグループが発表した論文によりますと、EG.5.1は、細胞を使った実験で、細胞への感染力自体は一時、感染の主流となっていた従来の「XBB」系統のウイルスよりも下がっていた一方で、ワクチンの接種や感染によってできる中和抗体が効きにくかったということで、グループは「免疫を逃れる能力が高くなっている」と指摘しています。

「日々の対策を強化したほうがいい時期」

感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、EG.5.1について「免疫逃避しやすいウイルスで、これまでワクチンを接種したり感染したりした人でも再び感染することがある状況だ。マスクの着用や、頻繁な換気など、日々の対策を強化したほうがいい時期だと思う」と話しています。

また、世界的には「BA.2.86」という変異ウイルスへの警戒も高まっています。

この変異ウイルスは感染する際の足がかりとなるスパイクたんぱく質の変異が30か所以上と多いことから、WHOはVUM=監視下の変異ウイルスに指定して監視しています。

先月、イスラエルとデンマークで初めて検出されて以降、日本を含む各国で次々に検出されていますが、アメリカのCDC=疾病対策センターは、現在までに得られたデータによるとほかの系統のウイルスと比べて中和抗体の効果は大きく変わらないことが示唆されるとしています。

インフルエンザ 1医療機関当たりの患者数 前週より増加

一方、インフルエンザは今月10日までの1週間に報告された1医療機関当たりの患者の数が全国で4.48人で、前の週より増加しました。

地域ごとでも44の都道府県で前の週より増加しています。

厚生労働省によりますと、今月10日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は2万2111人で、前の週から9473人増えました。

1医療機関当たりでは4.48人で、前の週から1.92人増えています。

国立感染症研究所によりますと、このデータを基に推計されるこの1週間の全国の患者数はおよそ15万1000人だということです。

地域ごとでは、いずれも1医療機関当たりで、
▽沖縄県が13.43人と最も多く、注意報レベルとされる「10」人を超えたほか、
▽長崎県が8.8人
▽千葉県が8.58人
▽福岡県が7.56人
▽宮城県が7.34人
などとなっていて、全国の44の都道府県で前の週より増加したということです。

厚生労働省では例年この時期からインフルエンザの集計を発表し、1医療機関当たりの患者が1人を上回ると全国的な「流行期入り」の目安としていましたが、ことしは、去年12月から1人を一度も下回らないまま新たなシーズンとなりました。

インフルエンザワクチン 3121万本供給の見込み

今年度のインフルエンザワクチンについて厚生労働省は、3121万本供給される見込みだとしています。

これは成人の量に換算しておよそ6242万人分となり、昨年度に実際に使用された量の2567万本を20%あまり上回っています。

インフルエンザワクチンは、13歳未満は2回の接種、13歳以上は原則1回の接種とされていて、65歳以上の高齢者などは定期接種の対象となります。

本格的な供給は今月下旬から始まり、多くの自治体で接種が始まる10月始めまでに高齢者の9割が1回ずつ接種できる量が供給され、11月中旬にはすべて供給される見通しです。

厚生労働省は高齢者など希望する人が確実に接種できるように、医療機関にはまとめ買いをせずに必要な量を購入するよう呼びかけることにしています。

また、新型コロナのワクチン接種が今月20日から、生後6か月以上の希望するすべての人を対象に始まりますが、厚生労働省はインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンを同時に接種することについても、安全性や有効性に問題はないとしています。

「新型コロナ 減少に転じるか注意して見る必要」

感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は、新型コロナウイルスの現在の感染状況について「この夏にかけて感染者数は増加傾向が続いていたが、直近では横ばいとなっていて、ピークが見え始めているように見える。これまでの3年間は8月から9月にかけて感染拡大が続き、その後、収束したが、ことしも同様に横ばいから減少に転じていくのか、これから1週間か2週間は注意して見ていく必要がある」と話していました。

医療体制については「入院患者数は多い状況が続いていたが、直近では患者の数が2週連続で減少している。私たちの大学病院でも感染者専用の病棟では足りず、ほかの病棟でコロナ患者を受け入れていた時期もあったが、現在は検査の陽性率が下がり入院患者は減少した。今のところは混乱なく乗り切れている」と話していました。

「コロナとインフルの同時流行に注意」

また、インフルエンザが同時に流行している状況については「新型コロナとの同時に検査できるキットが普及し、インフルエンザが以前より見つかりやすくなったことも関係していると考えられるが、コロナ対策でここ数年、流行が抑えられ、免疫を持たない人が多いことが影響しているとみられる。今の時期、冬のシーズンのように爆発的に患者が増加するリスクは低いと考えているが、流行状況に注意する必要がある」と話していました。

そして、取るべき対策については「コロナだけでなくインフルエンザも流行し、私たちの周りにウイルスが潜んでいる。かぜの症状が見られたら、コロナやインフルエンザに感染しているかもしれないという意識をもって、無理して外出せず、自宅療養することが大事だ。症状が重くなって不安がある人は、医療機関を受診して早めの診断や治療を受けることが大事だ」と話していました。