リビアでの大規模洪水 “災害への備え整わず被害拡大”指摘も

北アフリカのリビアで発生した大規模な洪水で地元メディアは5000人以上が死亡したと伝えていますが、地元の市長は、さらに多くの犠牲者が出るおそれがあるとしていて依然、被害の全容はわかっていません。国が分裂する混乱が続く中災害への備えが整っていないことが、被害拡大を招いたとの指摘が出ています。

リビア東部で11日に起きた大雨による大規模な洪水で、地元メディアなどは国の東部を統治している政府幹部の話として、5000人以上が死亡したと伝えています。

東部の都市デルナではダムが決壊して広い範囲で建物などが押し流され、デルナの市長はNHKの取材に対して「被害地域の規模などから犠牲者の数は2万人以上に上るおそれがある」と述べさらに多くの犠牲者が出るおそれがあるとの見方を示していますが、被害の全容は依然としてつかめていません。

また、デルナの市の幹部は中東のメディアに対し決壊したダムが長期間にわたって補修されていなかったと明らかにしていて、国の分裂と混乱が続く中災害への備えが整っていないことが、被害拡大を招いたとの指摘が出ています。

目撃者“爆発音のような音の後、水が押し寄せてきた”

大規模な洪水が発生した際、甚大な被害が出たリビア東部の都市、デルナにいたというエジプト人の男性がNHKの電話インタビューに応え「未明に爆発音のような音が聞こえ、その後、人々の叫び声が聞こえた。水が押し寄せてきて建物の4階の高さまで達し、木も車もすべて押し流されていった。犠牲になった人たちのほとんどは建物の中にいた。突然押し寄せた洪水から逃れることができなかった」と当時の状況を語りました。

そのうえで「デルナではインターネットも通じず電気もない。寸断されているためここから出ることもできない」と話し、洪水で道路が寸断され、孤立しているなどと現地の様子を話していました。

WMO事務局長“警報発令などで多くの人命助かった可能性”

リビアでの洪水の被害についてWMO=世界気象機関のターラス事務局長は14日、スイスのジュネーブで開いた記者会見で「気象サービスが正常に機能していれば、警報が発令され、危機管理の当局によって住民を避難させられただろう。そうすれば多大な人的被害を避けられたかもしれない」などと述べ、警報などによって事前に避難を呼びかけていれば、多くの人命が助かった可能性を指摘しました。

そのうえでリビアでの気象観測システムについて「支援しようとしてきたが、国の治安状況が非常に困難であるため現地に赴いて改善することが難しかった」として、リビアの不安定な情勢が災害の備えにも影響していたとの見方を示しました。