英 半導体開発会社「Arm」ナスダックに上場 ことし最大規模

ソフトバンクグループ傘下のイギリスの半導体開発会社「Arm」が14日、アメリカの証券取引所ナスダックに上場しました。
時価総額はおよそ9兆5900億円にのぼり、ことし最大規模の上場となりました。

イギリスの半導体開発会社「Arm」はスマホなどに使われる半導体の基本設計を行い、ライセンス収入などを得る形で事業を行う会社で、この分野で圧倒的なシェアを持っています。

14日、「Arm」はアメリカの証券取引所ナスダックに上場しました。

14日の株価の終値は前日に決まった株式の売り出し価格の51ドルを12ドル余り、率にして24%上回る63ドル59セントでした。

企業の価値を示す時価総額は652億ドル余り、日本円で9兆5900億円にのぼり、アメリカでことし最大規模の上場となりました。

この会社は2016年にソフトバンクグループが当時、3兆円を超える金額で買収しました。

その後、アメリカの半導体大手、エヌビディアに4兆円あまりで売却する計画が持ち上がりましたが、欧米の規制当局が市場の競争をゆがめるおそれがあると指摘したことを受けて去年2月に白紙撤回となりました。

ソフトバンクとしては「Arm」の株式を上場させることで株式を担保にした資金調達が行いやすくなり、AI=人工知能など高い成長が見込める分野に投資する方針です。

ソフトバンクグループの後藤芳光CFOは傘下のArmの上場について14日、ニューヨークにある証券取引所ナスダックの前で記者団の取材に応じました。

この中で、後藤CFOは「これは1つの通過点にすぎませんが、Armの価値をしっかりとした上場価値として見ていただくということで、我々はこのステップをベースにArmとグループの発展を目指していきたい」と述べました。

その上で、「AIの普遍化、多くの人々のライフスタイルやワークスタイルがこれから劇的に変化していく中で、Armの位置づけ、役割はより重要になっていくだろう。我々のグループ戦略の中でも非常に重要な役割をこれから果たしていく」と期待を示しました。

上場の狙い

ソフトバンクグループは、主力の投資事業に巨額の資金を投入する戦略を進めてきましたが、その資金の調達は、主に投資先の企業の株式を担保にする形で行ってきました。

これまでは、保有する中国のアリババの株式が中心でしたが、ことし6月末までにほぼすべての株式を売却しています。
今後は、上場したArmの株式を担保にした資金の調達を行うものとみられます。

このため、会社にとっては、Armの事業の成長性を高めて株式の価値をいかに引き上げるかが今後の課題となります。

孫正義社長は、ことし6月の株主総会で、「いよいよ反転攻勢の時期が近づいている」と述べて投資の再開に意欲を示し、Armの上場を機に、今後成長が見込まれるAI分野への投資を加速させる方針です。

今後の課題は

Armは、半導体の基本設計を開発し、ライセンス収入などを得る形で事業を行っています。

主力としてきたスマートフォン向けの市場は成長が伸び悩んでいるほか、売り上げのおよそ4分の1を占める中国向け事業では、アメリカと中国が対立するなか売り上げが減少するリスクがあるとしています。

今回の上場にあたっては、アメリカのアップルやグーグル、韓国のサムスン、さらにはエヌビディアなどArmと取り引きのある企業が株式の一部の保有を検討しています。

いわば安定的な取引先としての関係の強化を進める狙いがあるものとみられます。

一方で、次の成長市場と掲げるAI分野の強化にあたっては、ほかの企業との開発競争や、オープンソースと呼ばれる公開技術の登場によって厳しい事業環境も予想され、ソフトバンクグループは、スタートアップなどの投資先企業とArmの事業を連携させながらAI事業の強化を進めることにしています。