アメリカ デトロイトのモーターショーが開幕 各社EV展示に力

アメリカのデトロイトで伝統のモーターショーが開幕し、政府が税制優遇でEV=電気自動車の購入を後押しする中、各社とも販売が好調なEVの展示に力を入れています。

自動車関連企業が多く集まる中西部ミシガン州のデトロイトで、13日に開幕した伝統のモーターショー「北米国際オートショー」には、30を超えるブランドが出展しています。

ことしはEVの展示が目立ち、アメリカの大手メーカー、GM=ゼネラル・モーターズやフォードは現地で人気のあるピックアップトラックやSUV=多目的スポーツ車のEVを展示しています。

日本の自動車メーカーではトヨタ自動車がSUVのEVを展示しています。

各社がEVに力を入れるのはアメリカで販売が好調なためで、JETRO=日本貿易振興機構ニューヨーク事務所によりますと、新車販売台数に占めるEVの割合はことし4月から6月までの3か月間で7.3%と、去年1年間の5.8%を上回りました。

一定の条件を満たしたEVを購入した人が最大で7500ドル、日本円でおよそ110万円の税額控除を受けられる政府の税制優遇も販売を後押ししています。

この税制優遇を受けるには、車両の組み立てが北米地域で行われることや、蓄電池の原料となる重要鉱物の加工などをアメリカと、アメリカがFTA=自由貿易協定を結ぶ国で行うことが条件となっています。

EVと関連の部品供給で世界をリードする中国を締め出すねらいがあると言われており、米中対立の影響がEVの産業にも及んでいます。

中国の戦略とねらいは

中国はアメリカなどが進める「脱中国」の動きに左右されることなく、経済発展を目指す方針です。

建国100年にあたる2049年には、アメリカを超える国家「社会主義現代化強国」を作り上げるとしていて、世界一の経済大国になることを想定しているとされています。

また、「科学技術の自立自強」を掲げ、半導体や電子部品、EV=電気自動車の部品などの強じんなサプライチェーンをつくりあげることで、自国内で開発から生産までを完結させることを目指すとしています。

一方、習近平国家主席は「国際的なサプライチェーンの中国への依存度を高めることで、外国による供給網の遮断に対し、強力な反撃と抑止力を形成する」という方針を示しています。

アメリカなどを念頭に外国が中国に依存する資源などをいわば「武器」として用いるねらいとみられます。

3年前には安全保障に関わる製品などの輸出規制を強化する「輸出管理法」を施行し、8月から始めたガリウムとゲルマニウムの関連製品の輸出規制もこの法律に基づいています。

この輸出規制について、特定の国を対象にしたものではないとしていますが、アメリカのほか、半導体関連製品の輸出管理を厳しくした日本やオランダなどをけん制するねらいがあると見られています。

米政府のEV向け税制優遇措置のねらいは

アメリカ政府がIRA・インフレ抑制法で定めたEV向けの税制優遇措置のねらいについて、経済安全保障に詳しい東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は、EVを普及させるための政策であると同時に「中国への依存を減らし、成長が見込まれる電池産業をアメリカに持ってくるためのインセンティブだ」と述べました。

その効果については「アメリカの自動車メーカーに強いインセンティブとして働き、アメリカの自動車産業の構造変化を促した」と説明しました。

また、中国が先月始めたガリウムやゲルマニウムの輸出規制については、半導体や半導体製造装置の輸出規制などをとったアメリカ、日本、オランダに対して「ある種の経済的報復だ」との見方を示しました。

今後の米中関係の改善には「対話が必要だ」としつつ「アメリカは対中強硬策をとらないと次の大統領選挙で勝てない。中国と融和的な関係を結ぶのは難しい。また、中国は本当は経済活動を広げたいが、アメリカからの圧力を受けるとやりたくてもできず、不満が高まっていく。なかなか困難な状況だ」として、今後も影響が長引くという考えを示しました。

そして「安全保障の問題と経済の問題が企業に影響を与える時代になっている」と述べ、「日本企業は事業を守るためにサプライチェーンの多元化や、影響を受けないための情報収集を積極的にする必要がある」と指摘しました。