キャッシュカードが不要!? 進化するATM

「家に財布を忘れてしまった」。そんな時、顔認証で現金を引き出すことができるATMがあったら、役に立つかも知れません。来年春、キャッシュカードがなくても、顔認証で現金の入出金ができるATMが誕生します。
キャッシュレス決済の普及などで、変化を迫られているATM。最新の動きを取材しました。(経済部記者 真方健太朗)
キャッシュレス決済の普及などで、変化を迫られているATM。最新の動きを取材しました。(経済部記者 真方健太朗)
「高機能」ATMで攻勢
9月12日、私は、セブン銀行が開く事業発表会を訪れました。発表されたのは「顔認証」の技術を活用したサービスです。
その1つが顔認証を活用し、ATMで口座開設や住所変更ができるというものです。
その1つが顔認証を活用し、ATMで口座開設や住所変更ができるというものです。

私も現場で体験してみました。
まずはATMでマイナンバーカードなどを読み取ります。自分の顔も登録され、氏名や住所といった情報は、自動で入力してくれます。
あとは暗証番号を設定し、電話番号や職業、利用目的を入力。3分ほどで口座の開設が完了しました。
こうしたサービス、9月26日から、全国にあるこの銀行のATMのうち5割余りで開始されるというこということです。
まずはATMでマイナンバーカードなどを読み取ります。自分の顔も登録され、氏名や住所といった情報は、自動で入力してくれます。
あとは暗証番号を設定し、電話番号や職業、利用目的を入力。3分ほどで口座の開設が完了しました。
こうしたサービス、9月26日から、全国にあるこの銀行のATMのうち5割余りで開始されるというこということです。

来年春からは、お金の入出金のやり方も変わります。必要なのは顔認証と暗証番号の入力だけ。キャッシュカードはいらなくなるということです。
過去に大きな災害を取材した際には、被災した方がキャッシュカードを失ってお金を下ろせない場面を何度も見てきました。顔認証による入出金は、緊急時にも役立ちそうです。
会社では、2024年度末(2025年3月末)には、すべてのATMで新サービスを利用できるようにするとしています。
過去に大きな災害を取材した際には、被災した方がキャッシュカードを失ってお金を下ろせない場面を何度も見てきました。顔認証による入出金は、緊急時にも役立ちそうです。
会社では、2024年度末(2025年3月末)には、すべてのATMで新サービスを利用できるようにするとしています。
安全面は大丈夫?

確かに便利になるかもしれない。でもセキュリティ面は大丈夫なのだろうか。ふと、不安に感じた私。その点を会社に尋ねました。
会社によると、採用した顔認証は大手メーカーのNECが開発したシステムで、あらかじめ顔を登録する際には、マイナンバーカードや免許証などの写真と本人の顔を組み合わせて認証するとのこと。
このため、登録の段階で他人がなりすますのは難しいということです。もちろん、写真やお面をATMのカメラにかざしても認証されないということでした。
会社によると、採用した顔認証は大手メーカーのNECが開発したシステムで、あらかじめ顔を登録する際には、マイナンバーカードや免許証などの写真と本人の顔を組み合わせて認証するとのこと。
このため、登録の段階で他人がなりすますのは難しいということです。もちろん、写真やお面をATMのカメラにかざしても認証されないということでした。
高機能ATMで収益強化
この日会社は、ATMを活用した新たな構想も発表しました。ホテルのチェックインやふるさと納税、給付金の受け取りなどの行政手続きもATMで完結するというものです。
これまで人が行っていたさまざまな業界の「窓口」を担えるようにしようというのです。
これまで人が行っていたさまざまな業界の「窓口」を担えるようにしようというのです。

セブン銀行 松橋正明社長
「ATM(現金自動預け払い機)という名前はそろそろ変えたいと感じている」
「ATM(現金自動預け払い機)という名前はそろそろ変えたいと感じている」
この日、セブン銀行の松橋正明社長は、将来的にATMという呼び方自体を変えることも検討していると明らかにしました。
ATMを取り巻く変化とは
なぜこの会社では、ATMの高機能化を進めているのか。背景にあるのが、ATMを取り巻く事業環境の変化です。
全国にあるATMの設置台数は2013年には11万台余り。しかし、2022年にはおよそ20%少ない9万台近くに減少しました。いま、多くの金融機関は、ATMを“減らす”戦略をとっているのです。
全国にあるATMの設置台数は2013年には11万台余り。しかし、2022年にはおよそ20%少ない9万台近くに減少しました。いま、多くの金融機関は、ATMを“減らす”戦略をとっているのです。


その理由の1つが、「コスト」です。銀行関係者に聞くと、ATMの維持費は、1台あたり月に30万円ほどかかるという声も。保守点検や電気代などコストがかかるためです。
もう1つの大きな理由が、「キャッシュレス決済の普及」です。経済産業省によると、2022年の国内のキャッシュレス決済比率は36%に上り、金額は111兆円に。若い人を中心にATMを利用する機会が減っているのです。
もう1つの大きな理由が、「キャッシュレス決済の普及」です。経済産業省によると、2022年の国内のキャッシュレス決済比率は36%に上り、金額は111兆円に。若い人を中心にATMを利用する機会が減っているのです。
新サービスで新たな収益
このためセブン銀行では、ATMの高機能化を進め、1台あたりの収益力を高めようとしています。
会社の昨年度の経常収益1549億円のうち、ATM事業が占めるのは、6割余り。現在、コンビニを中心に2万7000台余りのATMを設置していますが、今後、設置台数を飛躍的に伸ばすのは難しいのが現状です。
また、入出金による手数料収入だけでは大きな成長は見込めなくなっています。
会社では、ATMの高機能化によって、2025年度末には、新たに40億円の収益を確保するとしています。
会社の昨年度の経常収益1549億円のうち、ATM事業が占めるのは、6割余り。現在、コンビニを中心に2万7000台余りのATMを設置していますが、今後、設置台数を飛躍的に伸ばすのは難しいのが現状です。
また、入出金による手数料収入だけでは大きな成長は見込めなくなっています。
会社では、ATMの高機能化によって、2025年度末には、新たに40億円の収益を確保するとしています。
厳しい地銀 提携で顧客サービス維持へ
この日会場では、静岡銀行の関係者も登壇。ATM事業でセブン銀行と提携していくことを明らかにしました。
この銀行の預金量は、地方銀行の中では上から5番目の規模。206の支店網と159台のATMをもっています。
そんな大手の地方銀行であっても、これらを維持するのは大きな負担で、顧客の利便性を損なわない範囲で固定費をいかに減らすかが課題となっています。
今回の提携で、窓口業務の一部が静岡県内に1000台余りあるセブン銀行のATMでも行えるようになります。手数料を支払うことになっても、それ以上のメリットを見込めるとしています。
この銀行の預金量は、地方銀行の中では上から5番目の規模。206の支店網と159台のATMをもっています。
そんな大手の地方銀行であっても、これらを維持するのは大きな負担で、顧客の利便性を損なわない範囲で固定費をいかに減らすかが課題となっています。
今回の提携で、窓口業務の一部が静岡県内に1000台余りあるセブン銀行のATMでも行えるようになります。手数料を支払うことになっても、それ以上のメリットを見込めるとしています。

静岡銀行 大石康太 デジタルチャネル営業部長
「事前の実証実験では、セブン銀行の新サービスを静岡銀行の支店がないエリアや自行のATMが稼働していない時間に使う人が多く『これはいける』と思った。利便性を高めていきたい」
「事前の実証実験では、セブン銀行の新サービスを静岡銀行の支店がないエリアや自行のATMが稼働していない時間に使う人が多く『これはいける』と思った。利便性を高めていきたい」
全国で減少が続くATM。私たちの暮らしの中でその役割はどう変わっていくのでしょうか。

経済部記者
真方 健太朗
2011年入局
帯広局、高松局、広島局を経て現所属
真方 健太朗
2011年入局
帯広局、高松局、広島局を経て現所属