長崎 対馬市議会「核のごみ」文献調査受け入れ求める請願採択

いわゆる「核のごみ」の処分地選定について、長崎県の対馬市議会は12日、第1段階にあたる「文献調査」の受け入れを市が進めるよう求める請願を賛成多数で採択しました。
文献調査の受け入れに応募するかどうかは市長が判断することになっていて、比田勝市長は今月末までの議会中にみずからの考えを明らかにする方針を示しました。

原子力発電にともなって発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は法律で最終処分場を設けて地下300メートルより深くに埋めるよう定められていて、処分場の選定に向けては3段階で調査を行うことになっています。

このうち、第1段階にあたる「文献調査」の受け入れをめぐって対馬市議会には賛成派と反対派の双方から請願が出されていましたが、先月、特別委員会で市に受け入れの促進を求める請願が賛成多数で採択されました。

12日午前10時から本会議が開かれ、傍聴席には地元の住民らおよそ70人が詰めかけました。

冒頭、比田勝尚喜市長は、「議会として請願が審議され採決が済んだあと本会議中に私としての意見を発表したい」と述べ、今の議会の会期中に文献調査に応募するかどうかの考えを明らかにする方針を示しました。

このあと採決が行われ、市に文献調査の受け入れの促進を求める請願が10対8の賛成多数で採択されました。

今回の市議会は今月27日まで予定されていて、市長がどのような判断を示すのか注目されます。

対馬市 比田勝市長「市民が望むことを選択したい」

比田勝市長は議会の終了後、報道各社の取材に応じ、「本当に重い議決だと受け止めています。将来的に本当に安心、安全に住めるのか、これまで培ってきた観光業や島の独特の第一次産業を永続的に継続していけるのか、このことをいちばん懸念しているので、20億、70億といった金の話ばかりではなく本当に対馬市民が望むことを選択していきたい」と話していました。

対馬市 これまでの経緯

長崎県対馬市では、16年前にもいわゆる「核のごみ」の処分地選定をめぐって議論が行われました。

賛成派と反対派が激しく対立しましたが、最終的には、安全性への懸念などで誘致の反対を求める議案が可決されました。

ところが、ことし4月、議論が再燃します。

市の商工会が臨時の理事会を開き、「議論を求める」とする請願書を提出する方針を決定。

続いて、6月には建設業の団体や市民団体などが相次いで賛成・反対双方の立場から請願書を提出。

最終的には8件の請願が出され、市議会では請願を提出した団体の代表者らが参考人として招かれました。

この中で、
▽賛成派の代表者は地域経済の活性化につながるとして受け入れを促進するよう求めた一方、
▽反対派の代表者は被爆地・長崎県の県民感情に配慮すべきなどとそれぞれの主張を訴えました。

そして、先月16日、特別委員会で採決が行われ賛成派の誘致を促進する請願など2件が賛成多数で採択されました。

「核のごみ」処分地選定の調査

「核のごみ」は、法律で最終処分場を設けて地下300メートルより深くに埋める「地層処分」を行うことが決まっていて、処分地の選定に向けた調査は20年程度かけて3段階で行われます。

▽はじめに、文献をもとに、火山や断層の活動状況などを調べる「文献調査」に2年程度、
▽次に、ボーリングなどを行い、地質や地下水の状況を調べる「概要調査」に4年程度かけることが想定されていて、
▽その後、地下に調査用の施設を作り、岩盤や地下水の特性などが処分場の建設に適しているか調べる「精密調査」を14年程度かけて行います。

段階に応じて、対象の自治体には交付金が支払われ、はじめの「文献調査」で最大20億円、次の「概要調査」では最大70億円が支払われます。

はじめの「文献調査」は、公募に応じるか国の申し入れを受け入れることで始まりますが、いずれのケースでも自治体の長が受け入れを決める必要があります。

全国では北海道の寿都町と神恵内村を対象に3年前から「文献調査」が行われていて、
▽寿都町では町長が調査に応募した一方、
▽神恵内村では、村議会で応募の検討を求める請願が採択されたことを受けて、国が調査を申し入れ、村長が受け入れを決めました。

2つの町村での調査はまとめの段階に入っていますが、地元からは最終処分地の選定が「北海道の問題」とならないよう全国的に関心を広げることを求める声が上がっています。

こうした声に加えて、海外で処分地の選定が進んでいる国では、10近くの複数の地点で調査を行ったうえで候補地が決まっていることから、政府は、北海道のほかに文献調査を行う地域を増やすことを目指しています。