洋上風力発電めぐる汚職事件 国会質問のたび業界団体が要望

洋上風力発電事業をめぐり秋本真利衆議院議員が逮捕された汚職事件で、贈賄側の風力発電会社の幹部がトップを務める業界団体が、国会質問のたびに秋本議員側の求めに応じて課題や要望を伝えていたことが、関係者への取材でわかりました。東京地検特捜部は、会社側の意向が反映された業界団体の要望と国会質問の関連を詳しく調べているものとみられます。

自民党を離党した衆議院議員の秋本真利容疑者(48)は、政府が導入拡大を目指している洋上風力発電をめぐって東京の風力発電会社「日本風力開発」塚脇正幸元社長(64)から会社が有利になるような国会質問をするよう依頼を受け、その見返りに合わせて6000万円余りに上る借り入れや資金提供を受けたとして、受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。

秋本議員は、国会で洋上風力発電について繰り返し質問していましたが、関係者によりますと、5年ほど前から、国会質問のたびに、秋本議員側の求めに応じて風力発電事業者などが加盟する「日本風力発電協会」が課題や要望を伝えていたということです。

トップの代表理事など協会の主要な役職は日本風力開発の幹部や関係者が務めていて、複数の業界関係者によりますと、協会の意見には主導する日本風力開発の意向が色濃く反映されていたということです。

課題や要望は、協会からメールで伝えることが多かったものの、洋上風力発電事業の入札の評価基準の見直しを求めた去年2月の国会質問の前には、協会トップの日本風力開発の幹部らが秋本議員に面会して、直接伝えたということです。

東京地検特捜部は、会社側の意向が反映された業界団体の要望と国会質問の関連を詳しく調べているものとみられます。

弁護士によりますと、秋本議員は、特捜部の調べに対し、容疑を否認しているということです。

一方、塚脇元社長は調べに対し秋本議員への贈賄を認め、提供した資金について「国会質問の謝礼だった」という趣旨の供述をしているということです。

“政策提言に日本風力開発が大きな影響 秋本議員と利害一致”

洋上風力の導入促進に向けた政策提言などのロビー活動を積極的に行ってきた業界団体の「日本風力発電協会」には、風力発電事業者や関連企業、それに自治体など合わせて500余りが加盟していますが、関係者によりますと、業界のれい明期から風力発電に取り組んできた日本風力開発などの企業が大きな発言力を持つ仕組みになっていて、主要な役員を輩出するなど運営を主導してきました。

去年2月、入札の評価基準見直しを提言した当時も、トップの代表理事は塚脇元社長が率いていた日本風力開発の副会長、政策提言を取りまとめていた副代表理事は日本風力開発の子会社の最高顧問という体制で、反対意見は反映されないまま、日本風力開発の意向が色濃く反映された内容になったということです。

日本風力発電協会の会員企業の関係者は「第1ラウンドの入札結果が公表されたあと、政治家、大学の研究者、それに業界団体が一緒になって変更を求めた。政策提言は業界団体の大きな機能の1つだが、そこには日本風力開発がかなり大きな影響を及ぼしていた。意見を受け止めて支援してもらいたい塚脇元社長や業界団体と、再エネ業界のサポートを得たい秋本議員は、利害が一致していたので、同じ時期に同じ内容の制度変更を主張をしていたのだろう」と話していました。

国会質問の前後に 業界団体らも同様の提言

入札の評価基準の見直しをめぐっては、稼働時期の早さに重点を置くよう求めた去年2月17日の秋本議員の国会質問の前後に、日本風力開発と関係がある有識者と業界団体も同じような内容を提言していました。

第1ラウンドの入札結果が公表された翌月の去年1月には、洋上風力に詳しい国立大学の研究者が、自民党の「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」で、価格偏重を改め入札の評価基準を見直すよう提言していましたが、この研究者は日本風力開発の子会社として設立されたシンクタンクの所長でした。

また、秋本議員の国会質問の5日後には、日本風力開発が主導する業界団体の日本風力発電協会も、洋上風力発電事業を所管する経済産業省と国土交通省に同じような内容の政策提言を提出していました。