キム総書記乗せた列車ロシアに 宇宙基地でプーチン氏と会談か

北朝鮮のキム・ジョンウン総書記を乗せた専用列車は、日本時間12日、ロシアに入り、北上しているとみられます。
11日極東入りしたロシアのプーチン大統領は、アムール州の宇宙基地を近く訪れる予定があることを明らかにし、双方による首脳会談が宇宙基地で行われるのか関心が集まっています。

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記を乗せた専用列車は、日本時間の12日、国境を越えてロシアに入りました。NHKは、日本時間の12日午前、ロシア極東沿海地方の鉄道路線でキム総書記が乗った可能性がある専用列車を撮影しました。

ロシアの鉄道関係者は、NHKの取材に対して、専用列車は、ロシアのプーチン大統領が滞在しているウラジオストクの方向には向かわず、北上を続けていると明らかにしました。

日本時間の12日午後5時ごろには、ウラジオストクとハバロフスクを結ぶ路線の中間付近を通過したとみられます。一方、プーチン大統領は、ウラジオストクで開かれている国際経済会議の全体会合に出席しました。

このなかで司会者から極東アムール州にあるボストーチヌイ宇宙基地に訪問する予定があるかと聞かれ、プーチン大統領は「そこで予定がある。私が到着すればわかるだろう」と答え、宇宙基地を近く訪れる予定があることを明らかにしました。

キム総書記が乗った専用列車が走行する路線も宇宙基地のあるアムール州につながっていて双方による首脳会談が宇宙基地で行われるのか関心が集まっています。

キム総書記 出発時刻は

12日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」には、キム・ジョンウン総書記がピョンヤンを出発した際の写真8枚が掲載されています。

このうち、駅のプラットホームを写した写真には構内に設置された時計に「午後6時38分2023年9月10日」と表示されていることが確認できます。

また、キム総書記が大勢の人に見送られながら、赤いカーペットの上を歩いていることから、専用列車に乗り込む少し前の様子だと見られます。

北朝鮮は、キム総書記が10日午後に専用列車で首都ピョンヤンを出発したと発表していました。

同行者に軍事分野に関係する幹部ら

北朝鮮のキム・ジョンウン総書記のロシア訪問の同行者には、軍事分野に関係する幹部が目立ちます。

メンバーには北朝鮮軍の2人の元帥が含まれていて、このうち、朝鮮労働党のリ・ビョンチョル書記は、中央軍事委員会でキム総書記に次ぐナンバー2の副委員長を務め、核・ミサイル開発で中心的な役割を担ってきたとされています。

また、党の軍政指導部長を務めるパク・チョンチョン氏は、軍の砲兵部隊を統括する砲兵局長などの経歴の持ち主です。

さらに、人工衛星の打ち上げに関わる宇宙科学技術委員会を率いるパク・テソン書記や、党で兵器開発を指揮する軍需工業部長のチョ・チュンリョン氏、それに、海軍トップのキム・ミョンシク司令官も同行しています。

これについて韓国の通信社、連合ニュースは、軍の最高位の元帥だけでなく、武器取り引きに関わる主要な幹部が同行しているのは、軍事的な性格が強い訪問であることを示していると分析しています。

一方、外交・経済分野では、長年アメリカとの交渉に携わってきた「アメリカ通」として知られるチェ・ソニ外相と、党の経済部長も務めるオ・スヨン書記が名を連ね、いずれも、前回のロシア訪問にも同行していました。

ボストーチヌイ宇宙基地とは

ロシア語で「東」を意味するボストーチヌイ宇宙基地は、ウラジオストクからおよそ1000キロ、モスクワから5000キロあまり離れた極東のアムール州にあります。

宇宙開発を重要な国家プロジェクトの1つに位置づけるプーチン政権が、隣国カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地にかわる新たな宇宙開発の拠点として、建設を進めてきたもので、2016年、最初のロケットが人工衛星を載せて打ち上げられました。

基地では、ロシア以外の国の衛星の打ち上げも行われ、2017年と18年には日本のベンチャー企業が開発した超小型の人工衛星も打ち上げられました。

8月には旧ソビエト以来およそ半世紀ぶりとなる無人の月面探査機「ルナ25号」が打ち上げられました。

ボストーチヌイ宇宙基地の整備は続いていて、有人宇宙船や大型の軍事衛星が搭載できる新型ロケットの打ち上げを目指して、新たな発射台の建設が進められています。

一方、2022年4月にはロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領が訪れ、プーチン大統領との首脳会談が行われました。