東京 狛江の事件 特殊詐欺グループ4人再逮捕 強盗殺人容疑

一連の広域強盗のうち、東京 狛江市の住宅で90歳の女性が暴行を受けて死亡した事件について、警視庁は特殊詐欺グループの幹部ら4人がフィリピンの入管施設から実行役に指示を出していたとして強盗殺人などの疑いで再逮捕しました。

再逮捕されたのは、特殊詐欺グループの幹部、今村磨人容疑者(39)と渡邉優樹容疑者(39)、藤田聖也容疑者(39)、それに小島智信容疑者(45)の4人です。

警視庁によりますと、4人は実行役と共謀し、ことし1月、狛江市の住宅に侵入して、この家に住む大塩衣與さん(90)を結束バンドで縛り暴行を加えて殺害したうえ、高級腕時計などを奪ったとして強盗殺人などの疑いが持たれています。

一連の広域強盗をめぐっては、京都市の時計販売店と千葉県のリサイクルショップの事件で今村容疑者が、足立区の住宅に侵入した事件で今村容疑者と渡邉容疑者、藤田容疑者がそれぞれ「指示役」として逮捕されています。

狛江市の事件では、「キム」や「ミツハシ」を名乗り秘匿性の高い通信アプリ、「テレグラム」を使って実行役とやりとりしていたとみられ、通信履歴の解析や同じフィリピンの入管施設に収容されていた人物の証言などから4人が関わった疑いがあることがわかったということです。

警視庁は、指示系統や役割分担について解明を進めることにしています。

大塩さんの元同僚「4人には罪を償ってほしい」

この事件で亡くなった大塩衣與さんは、30年ほど前、静岡県沼津市のホテルで働いていたということです。

当時の同僚の男性によりますと、結婚式や宴会で料理や飲み物の配膳を担当していたということで「おしとやかで、とても真面目に働いていました。上司からの信頼も厚かったし、客とトラブルになったこともなく、婚礼などの大事な場を任されていました」と振り返りました。

12日、事件の実行役に指示を出していたとして4人が逮捕されたことについては「家族といっしょに幸せな90歳を過ごしていたと思いますが、暴力を受けて亡くなったことがいまでも信じられません。逮捕された4人には罪を償ってほしいし、事件についてもっと詳しい真相を知りたいです」と話していました。

地域住民は

指示役として4人が逮捕されたことについて、現場近くに住む70代の女性は「逮捕されたことを知って、やっといろんなことがわかったんだなと少しほっとしました。事件のあと、相手の顔が見えるインターフォンを購入して対策を取っています」と話していました。

また、20年近くこの地域に住んでいる40代の女性は「8か月たって、逮捕されたことに安心する一方で、この場所で二度とこのような物騒な事件が起きないように、地域の皆さんと声を掛け合いながら防犯意識を高めていきたい」と話していました。

“指示役”特定の経緯

唯一被害者が死亡 狛江の事件がきっかけに

フィリピンを拠点にした特殊詐欺グループが関与した一連の広域強盗事件が表面化したのは、狛江市の事件がきっかけでした。

大塩さんは背中をバールで殴られるなど激しい暴行を受けて亡くなりました。

一連の事件の中で唯一、被害者が死亡したケースで、警視庁は最重要の事件と位置づけて強盗殺人事件として捜査を始めました。

実行役は闇バイトで集められる

フィリピンの入管施設

実行役は闇バイトで集められていました。

捜査の過程で、フィリピンの入管施設に収容されていた特殊詐欺グループの幹部らが関与した疑いがあることは比較的早い段階でわかりました。

翌月には今村容疑者ら幹部4人が日本に送還され、特殊詐欺に関わった疑いで逮捕されましたが、強盗事件への関与を立証するのは簡単ではありませんでした。

スマホを解析 消去されたやり取りを復元

実行役への指示には、一定の時間が経過するとメッセージが消去される通信アプリ「テレグラム」が使われていて、4人が使っていたとみられるスマートフォンなどおよそ15台の端末の一部はデータがほとんど残っていない状態でした。

こうした中、警視庁は「デジタルフォレンジック」と呼ばれる技術を用い、消去されたやり取りを復元していきました。

「実行役に指示出す様子を目撃」証言も

さらに、4人と同じ時期にフィリピンの入管施設に収容されていた人物から「実行役に指示を出す様子を目撃した」などと具体的な証言を得ました。

事件の連続性にも着目

また、実行役4人は「狛江事件の実行後、2件の案件がある」という指示を受けて、翌日、足立区の住宅に侵入する事件を起こしています。

小島容疑者を除く3人はこの足立区の事件で指示を出したとして先月逮捕されていて、警視庁はこうした事件の連続性にも着目。

およそ8か月にわたり、実行役からの聴取に加え、スマートフォンの解析や関係者の証言など、証拠を1つ1つ積み上げていった結果、4人を「指示役」と特定しました。

実行役はイヤホンを耳につけて容疑者らの指示をリアルタイムで聞きながら大塩さんの住宅に押し入ったということです。

“指示役”4人の役割は

スマートフォンの解析や幹部らと同じ時期にフィリピンの入管施設にいたメンバーの証言などから4人の役割が明らかになってきました。

捜査関係者によりますと、狛江市の事件では「キム」や「ミツハシ」、それに「sugar」を名乗る人物が通信アプリ「テレグラム」でそれぞれ実行役に指示を出していました。

このうち「ミツハシ」のアカウントは、発信元の番号などから今村容疑者が使っていたものと特定されています。

これまでの捜査で「キム」は藤田容疑者、「sugar」は渡邉容疑者が使っていたアカウントとみられますが、特定はできておらず、今後、解明を進めるとしています。

「キム」は「高齢者を殴れるか」とか「地下に現金」といったメッセージを送っていたということです。

一方、小島容疑者は実行役を「闇バイト」で募るリクルーターの役割を担っていたとみられています。

今回、実行役として集められたのは19歳の大学生と21歳の土木作業員、それに24歳と52歳の男の合わせて4人でした。

「海外から指示出したとしても必ず捕まえる」

一連の捜査について捜査幹部は「今回の事件が国民に与えた不安や影響は計り知れない。凶悪な事件を二度と発生させないため、海外から犯行の指示を出したとしても関与した人間は必ず全員捕まえる。今後も各地で発生した強盗事件について強力に捜査を推進していく」と話していました。