長期金利 一時 0.705%に 2014年1月以来の水準まで上昇

11日の債券市場では、日銀の金融緩和策の修正が視野に入ってきたという見方から日本国債を売る動きが強まり、長期金利は一時、0.705%をつけ、2014年1月以来の水準まで上昇しました。

国債は、売られると価格が下がって、金利が上昇するという関係にあります。

長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは、ことし7月、日銀が金利操作のより柔軟な運用を決めてから上昇圧力が高まっています。

こうした中、日銀の植田総裁が報道機関へのインタビューで、金融政策について年内に判断の材料が出そろう可能性があり将来的にマイナス金利の解除を含めさまざまな選択肢があると答えたという内容が伝わり、市場では金融緩和策の修正が視野に入ってきたという見方も広がりました。

これを受けて長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは一時、0.705%をつけ、2014年1月以来、9年8か月ぶりの水準まで上昇しました。

市場関係者は「マイナス金利政策の解除が近いのではないかという観測が広がり、長期金利の上昇圧力が強まっている。当面はさらなる金利の上昇の余地を探る展開が続きそうだ」と話しています。

長期金利は、銀行が住宅ローンの固定金利を決める際の参考にしています。

このところの長期金利の上昇を受けて、大手銀行の間では今月に適用する住宅ローンの固定金利を引き上げる動きが相次ぎました。

専門家「時間かけて金利上がるプロセスに」

長期金利の上昇を受けて都内の証券会社のディーリングルームでは、担当者が投資家からの問い合わせなどの対応に追われていました。

SMBC日興証券金融経済調査部の森田長太郎シニアフェローは、長期金利上昇の要因について「日銀の植田総裁の発言内容が伝わり、いよいよ本格的な金融緩和の正常化の可能性が出てくるということで、金利上昇を後押しした」と分析しています。

そのうえで、今後の金利の動向について、「日本のインフレ率も以前に比べると高くなってきていて時間をかけて金利が上がるプロセスに今、入りつつある可能性は高い。日本も数年先を考えると、長期金利が1%あるいは2%という数字になってもおかしくない。ただ、このスピードは、日銀の金融政策の影響が大きく日銀はかなり慎重にやっていくだろう」という見通しを示しました。

また、暮らしへの影響については「住宅ローン金利が上昇すれば支払いの負担が増えるが、一方で、金利を適正な水準に調整していくことで、過度な円安を抑え、輸入物価の高騰を防ぐ効果もある。適度な金利上昇はそういう意味では必要で家計にとって、プラスになる面もある」と話していました。

松野官房長官「金利動向が及ぼす影響を注視」

松野官房長官は午後の記者会見で「金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべきと考えるが、住宅ローンの金利による家計の負担への影響を含め、金利動向が国民生活や事業者に及ぼす影響をよく注視しつつ経済財政運営に万全を期していく」と述べました。

そのうえで「日銀には引き続き政府と密接に連携を図り、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切に金融政策運営を行うことを期待している」と述べました。