G20サミット閉幕 ウクライナ侵攻の事態打開の難しさ浮き彫りに

インドで開かれていたG20サミット=主要20か国の首脳会議は、2日間の日程を終えて閉幕しました。ウクライナ侵攻をめぐり、立場が異なる各国の主張を反映させた首脳宣言が採択されましたが、事態打開の難しさが改めて浮き彫りとなりました。

インドの首都ニューデリーで9日から開かれていたG20サミットには岸田総理大臣やアメリカのバイデン大統領、中国の李強首相、それにロシアのラブロフ外相らが参加し、最後のセッションを終えて閉幕しました。

今回のG20サミットでは、アフリカの国々などが加盟するAU=アフリカ連合が正式なメンバーとして承認され、インドのモディ首相は「2日間の議論で参加したすべての国がさまざまな提案を行った」と述べた上で、今回の成果を来年の議長国ブラジルが引き継ぐことに期待を示しました。

ウクライナ侵攻をめぐり、欧米とロシアなどの激しい対立が続くなか、首脳宣言がとりまとめられるかが焦点となっていましたが、初日に採択されました。

宣言では「すべての国は領土の獲得のための威嚇や武力の行使を控えなければならない」などと欧米の立場を反映した表現を明記したものの、ロシアを名指しで非難する表現は盛り込まれませんでした。

これについて、EU=ヨーロッパ連合の高官は記者団に対し「ロシアがより孤立したと考えている」と述べて評価しましたが、議長国インドが友好関係にあるロシアに配慮して、表現が弱まったとの見方が広がっています。

首脳宣言が出せない事態は避けられましたが、立場が異なる各国の主張を盛り込んだ形で、ウクライナ情勢で深刻化した食料やエネルギー問題などの事態打開の難しさが改めて浮き彫りとなりました。

南ア大統領報道官 “双方と積極的に関わり続ける”

今回の首脳宣言のとりまとめにあたっては、議長国インドだけでなく、ほかのグローバル・サウスの国々も対立する各国との調整に役割を果たしました。

これに関連して、南アフリカのマグウェニャ大統領報道官はNHKなどの取材に対し、ウクライナ情勢について、ロシアとウクライナを念頭に「われわれアフリカ諸国は、食料供給の面で影響を受けている。双方と積極的に関わり続けることがわれわれの利益になる」と述べました。

また、今回の会議でアフリカの国々などが加盟するAU=アフリカ連合がG20の正式なメンバーとして承認されたことについて「大きな成果であり、グローバル・サウスを首脳会議の議論に含めるという確固たる基盤が出来た」と高く評価しました。

習主席 欠席で中国の存在感低下か

中国の習近平国家主席は今回、G20サミットを初めて欠席し、代わりに共産党で序列2位の李強首相が出席しました。

李首相は、議長国インドのモディ首相と笑顔で握手をするなど友好ムードを演出しましたが、インドとの係争地をめぐって両国関係が冷え込むなか、サミットにあわせた2国間の正式な首脳会談は行われない見通しです。

また、習主席は例年サミットで多くの国と個別に首脳会談を行ってきましたが、李首相はイタリアなど数か国にとどまるとみられ、中国の存在感が低下したという受け止めが広がっています。

一方、中国国内では習主席に関するニュースが相次いで報道され、李首相がサミットで発言した内容や、9日に採択された首脳宣言などは大きく取り上げられていません。

中国政府は「G20の活動を一貫して非常に重視し、積極的に参加してきた」としていますが、習主席の欠席でサミットに対する国内の関心が低くなっています。

ロシア ラブロフ外相「西側の企てを阻止できた」

ロシアのラブロフ外相は閉幕後の記者会見で首脳宣言について「ウクライナ危機は言及されているが、あくまでも世界の紛争を解決する必要があるという文脈においてであり、これは非常に重要なことだ」と述べ、ロシアを名指しで非難する表現が盛り込まれなかったことなどを受けて議長国インドの役割を高く評価しました。

そして「グローバル・サウス諸国の強固な立場のおかげで議題全体を『ウクライナ化』しようとする西側の企てを阻止することができた。西側諸国は覇権国家であり続けることはできない」などと述べて欧米をけん制しました。

岸田首相「ロシアが参加し一致できたことに意義」

岸田総理大臣は訪問先のインドで開いた記者会見で「去年の首脳宣言に比べても新たな表現で新たな要素を盛り込むことができている。領土取得を追求するための威嚇や暴力行使を慎むことや、ウクライナにおける包括的公正かつ恒久的な平和、国連憲章の原則の堅持は、去年の首脳宣言には含まれていない。これらがロシアが参加する形で改めて確認され、一致できたことは意義があると考えている」と述べました。