林外相 ウクライナ訪問 ゼレンスキー大統領と会談

林外務大臣は、日本時間の9日、ウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領を表敬訪問しました。これに先だち、ロシアによる軍事侵攻で多くの市民が犠牲となったキーウ近郊のブチャを訪れ、犠牲者を追悼しました。

ポーランドを訪れていた林外務大臣は日本時間の9日午前、列車でウクライナに入りました。

去年2月にロシアによる軍事侵攻が始まってから、日本の外務大臣がウクライナを訪問するのは初めてです。

まず、日本時間の午後2時すぎ、ロシアによる侵攻で多くの市民が犠牲となった首都キーウ近郊のブチャを訪問し、遺体が埋められていた教会を訪れ、犠牲者を悼んで慰霊碑に献花を行いました。

このあとキーウでゼレンスキー大統領を表敬訪問しました。

会談では、ロシアへの制裁とウクライナへの支援を維持・強化するため、G7=主要7か国の議長国として国際社会での議論をリードしていく姿勢を伝えたものと見られます。

そして、ことし7月にG7が発表したウクライナの安全保障に関する共同宣言に基づいて、2国間の協力文書を作成することを確認したものと見られます。

今回の訪問には楽天グループの三木谷浩史社長など通信や医療分野の日本企業の幹部数人が同行し、現地の企業関係者と意見交換を行うことにしています。

林大臣としては、こうした取り組みを通じて日本が官民で連携して支援にあたる方針を強調することにしています。

ゼレンスキー大統領 “日本は重要なパートナー 支援に感謝”

ウクライナのゼレンスキー大統領は、9日SNSに、首都キーウを訪れた林外務大臣と握手をしている写真とともに「日本の林外務大臣をウクライナにお迎えした。日本がアジアにおける重要なパートナーであり続け、ウクライナを支援してくれていることに感謝する」などと投稿しました。

林外相 “2国間協力文書作成へ交渉開始で一致”

林外務大臣は、訪問先のウクライナでゼレンスキー大統領を表敬訪問したのに続き、クレバ外相と会談し、共同記者会見に臨みました。

そして、ゼレンスキー大統領との間で、先にG7が発表したウクライナの安全保障に関する共同宣言に基づいて、2国間の協力文書作成に向けて交渉を開始することで一致したことを明らかにしました。

林大臣は「侵略の生々しい傷あとを自分の目で見て、美しい大地に平和が戻るまで、日本はウクライナとともに歩んでいくとの決意を新たにした。今回の訪問を契機に、両国政府間の連携をさらに強化していきたい」と述べました。

クレバ外相「2国間の関係はこれまでにない高いレベル」

ウクライナのクレバ外相は林外務大臣との共同記者会見で「林大臣を迎えて会談できたことはとてもうれしい。われわれの2国間の関係は歴史的にこれまでにない高いレベルに達した。日本がこれまでにウクライナに供与してくれた人道支援や財政支援を決して忘れない」と強調しました。

また、クレバ外相は、会談で、領土の回復やウクライナからのロシア軍の撤退などを盛り込んだゼレンスキー大統領の和平案に対する支持をアジアで広げていくための議論も行ったとしています。

その上で今回、交渉を始めることで合意したウクライナの安全保障をめぐる日本との2国間協定について今後、積極的に協議を行っていきたい考えを示しました。