G20首脳会議開幕 成果文書のとりまとめ 難しい調整続くか

G20サミット=主要20か国の首脳会議がインドで開幕し、モディ首相は冒頭で「国際社会が抱える不信感を解消していきたい」と訴えました。しかし、首脳宣言など成果文書のとりまとめに向けては、ロシアとアメリカなど各国の意見の隔たりが大きく難しい調整が続いているとみられます。

G20サミット=主要20か国の首脳会議は、現地時間の9日午前、インドの首都ニューデリーで開幕しました。

議長を務めるモディ首相は冒頭の演説で「G20に集まったすべての参加国に呼びかけます。国際社会が抱える不信感を解消し、ともに信頼に変えていきましょう」と訴えました。

そのあと、アフリカの国々などが加盟するAU=アフリカ連合がG20の正式なメンバーとして承認されました。

最初のセッションは食料安全保障や気候変動などをテーマに行われ、この中で途上国や新興国などいわゆるグローバル・サウスの国々への支援などをめぐり意見が交わされました。

しかし、食料危機などの要因となっているウクライナ情勢をめぐっては、軍事侵攻を続けるロシアと、ウクライナを支援するアメリカなどとの対立が深まっていて、首脳宣言など成果文書の取りまとめに向けて難しい調整が進められているとみられます。

首脳宣言を出せなければ、G20サミットとしては初めての事態となるだけに議長国インドとしてはぎりぎりまで各国との調整にあたる考えです。

岸田首相 “永続的な平和を実現することが必要”

岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、一日も早くロシアの部隊を撤退させ、永続的な平和を実現することが必要だと訴えました。

また、ロシアの侵攻が長期化し、食料危機やエネルギー価格の高騰がグローバル・サウスの国々に深刻な影響を及ぼしていることをふまえ、こうした課題の解決に向けて、積極的に貢献する姿勢を示し、各国の協調を促しました。

このほか岸田総理大臣は、福島第一原発の処理水放出の安全性について説明し、各国に理解と支持を求めました。

さらに、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことを踏まえ、「一部の国が突出した行動をとっている」と指摘し、科学的根拠に基づく行動や正確な情報の発信を求めていく考えを重ねて示しました。

中国 習近平主席 異例の欠席 背景は

今回のG20首脳会議には、中国から李強首相が出席し、習近平国家主席は初めて欠席することになります。

中国はこれまでG20を重視し、国家元首である国家主席が2008年の第1回からすべての会合に出席してきただけに習主席の欠席は異例です。

中国政府は欠席の理由を明らかにしていませんが、国営テレビは習主席が8日まで豪雨の被害を受けた黒竜江省を訪問したと伝えました。

景気回復の勢いが鈍化する中、内政を重視する姿勢を示したものとみられます。

欠席の理由としてこのほかに関連が指摘されるのは、中国と議長国インドの関係です。

中国はインドと係争地を抱え、2020年6月に双方に死傷者が出て以来、習主席とモディ首相の間で個別の正式な会談は行われていないことから、両国関係の冷え込みが影響した可能性もあります。

また11月にアメリカで開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議にあわせてバイデン大統領との首脳会談を目指しているためという指摘も出ています。

アメリカとの外交をめぐっては、ブリンケン国務長官やレモンド商務長官など、閣僚の訪中が相次いでいますが、今回のG20首脳会議では関係改善に向けた具体的な成果が期待できず出席を見送ったとする見方です。

さらに、習主席は8月、ロシアなどとの枠組み、BRICSの首脳会議には出席していて、欧米や日本が加わるG20よりも中国の影響力が大きく、加盟国も11か国に拡大したBRICSを重視するようになった可能性もあります。

このほか、北京では10月、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際フォーラムが開かれる予定で、習主席の招待を受けてプーチン大統領が参加するとみられることから、プーチン大統領にあわせる形でG20サミットを欠席したのではないかという見方も出ています。