南海トラフ巨大地震の検討会 インフラ施設の被害について議論

南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しに向けて、国が設置した専門家の検討会は電気やガスなどライフラインや鉄道や港湾などのインフラ施設の被害について議論を行い、個別の業種にとどまらず全体的な影響を分析するとともに対策に向け異なる業種の連携の可能性などについて、さらに検討を進めることになりました。

南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しに向けた国の専門家によるワーキンググループは7日、巨大地震や津波による電気やガスなどライフラインや鉄道や港湾といったインフラ施設の被害について議論を行いました。

このなかで鉄道を動かすための電気など異なる業者が複雑に関係しているとして被害や復旧、復興などへの全体的な影響を検討することを確認しました。

出席した委員からは、それぞれの結びつきを踏まえて横の連携を強化すべきだといった意見のほか、施設の老朽化や電力の自由化など現在の想定が作られた10年前とは社会が変化していることを前提に異なる業種が連係を深めていくべきだといった意見が出され、今後、さらに検討を進めることになりました。

検討会のとりまとめ役を務める名古屋大学の福和伸夫名誉教授は「どれかのインフラが止まればほかのインフラにも影響が波及する。全体像を見た上でどういう方向に社会を持って行くべきか考えていくことになる」と話していました。

「半割れ」についても検討 過去のデータを活用へ

南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しをめぐっては巨大地震が時間を空けて発生する「半割れ」と呼ばれるケースについても新たに検討することにしていて、専門家による検討会は同じ地域で2度の震度7の揺れを観測した2016年の熊本地震などで得られたデータを活用する方針を示しています。

南海トラフでは巨大地震の震源域で過去に数日から数年の短い期間にプレートがずれ動いたことが知られ、この「半割れ」と呼ばれるケースについて新たに検討することになっています。

1度目の揺れで建物が損傷したあとに再び起こる揺れで被害が拡大するおそれが指摘されていることから、地震や津波のモデルなどについて技術的な議論をしている専門家による検討会は震度7の激しい揺れが2度にわたって発生した熊本地震のデータを活用して具体的な被害を推計する方針です。

また、地震や津波などによる被害は免れたものの、その後の避難生活による体調の悪化などが原因で死亡する「災害関連死」についても検討し2011年に起きた東北沖の巨大地震などで避難した人のうち亡くなった人の割合など、過去の災害のデータを集めて具体的な人数を推計することになりました。

座長を務める東京大学の平田直名誉教授は、「実態をきちんと理解して数値目標を掲げることは非常に重要で、被害を減らすためにどうしたらいいのかを考えていく必要がある」と話していました。