自治体の公営墓地の「無縁墓」半数以上 厚労省に支援要請へ

高齢化や核家族化が進む中、総務省が全国の公営墓地の状況について調査したところ、引き継ぐ人がいなくなって放置され「無縁化」した墓があると答えた自治体が半数以上にのぼったことがわかりました。自治体が墓石を撤去する際の取り扱いについては法律などに規定がなく、総務省は厚生労働省に対し自治体への支援を検討するよう要請することにしています。

総務省行政評価局が全国765の市町村を対象に公営墓地の状況について調査したところ、58.2%にあたる445の市町村で「公営墓地や納骨堂で無縁墳墓などが発生している」と答えました。

無縁化する墓の弊害として、自治体からは墓石やブロック塀の荒廃による倒壊などのリスクや、樹木が生い茂ることによる環境の悪化などが報告されたということです。

自治体が墓地の使用者を探してもわからない場合、最終的には遺骨を合葬墓などに移す必要がありますが、墓石を撤去する際の取り扱いについては法律などに規定がなく、自治体によっては墓石を永年保管するなど対応にばらつきがあったということです。

総務省は少子高齢化や核家族化が進む中、引き継ぐ人がいない「無縁化」した墓が増えるおそれがあるとして、厚生労働省に対し、墓石の保管期限や処分の考え方を整理して示すほか自治体への支援を検討するよう要請することにしています。

専門家 “墓のあり方など社会全体で考える時期に”

墓や葬送の成り立ちに詳しい、シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事は「日本では、これから少なくとも20年間は亡くなる人が増え続ける一方で、総人口は減っていくので、墓を守る人もどんどん減り、この先、無縁墓が増えていくのは明らかだ。墓には単に遺骨の保管場所というだけでなく、亡くなった人と向き合う場所としての意義があるが、ライフスタイルも変わり、家族の縁が薄れる人も大勢いる中、例えば墓の使用期限を10年などに区切るなど、墓のあり方や死者をどう葬るかということを社会全体で考える時期に来ている」と話していました。

そのうえで、「墓地行政についても、福祉や公共政策の観点で捉え直す必要がある。家族がいてもいなくても、お金があってもなくても、誰もが安心して死にゆくためには、最低限ひとしく葬られる場所が用意されないといけない」と話していました。