ASEAN 東アジアサミット 北朝鮮情勢など議論も対立浮き彫りに

日本やアメリカ、中国、ロシアなどが参加するEAS=東アジアサミットがインドネシアの首都ジャカルタで開かれ、南シナ海情勢などについて話し合われましたが、大国がみずからの主張を繰り広げ、対立が浮き彫りになりました。

7日に行われた東アジアサミットにはASEAN加盟国の首脳に加えて、岸田総理大臣やアメリカのハリス副大統領、中国の李強首相、そしてロシアのラブロフ外相などが出席し、中国が海洋進出を強める南シナ海情勢や、北朝鮮による核・ミサイル開発、それにウクライナ情勢などについて話し合われました。

冒頭、議長国インドネシアのジョコ大統領はウクライナ情勢や米中の対立などを念頭に、「サミットを対立が激化する場所にするのではなく、連携や協力を強化する場所にしてもらいたい」と述べて、大国間の緊張緩和を呼びかけました。

ロシア外務省によりますと、ラブロフ外相はNATO=北大西洋条約機構が浸透し、東アジアで軍事化のリスクが生じているなどと主張し、ウクライナ侵攻で対立を深めるアメリカを改めてけん制したということです。

また、中国外務省によりますと、李首相は南シナ海について、「域外にある国は南シナ海の平和と安定を守る努力を十分に尊重することを望む」と述べ、ASEANへの関与を強めるアメリカなどをけん制しました。

会議では大国がみずからの主張を繰り広げて、具体的な進展はなかったものと見られ、対立が改めて浮き彫りになりました。

岸田首相「協調の国際社会を実現することが重要」

岸田総理大臣はウクライナ侵攻を続けるロシアや海洋進出の動きを強める中国の動向を念頭に、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、協調の国際社会を実現することが重要だ」と述べるとともに、力による一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対する立場を強調しました。

一方、日中関係については「習近平国家主席とともに、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく」と述べました。

また、北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念を示し、国際社会が一体となって自制を求めていく必要性とともに、拉致問題の即時解決への協力を呼びかけました。

このほか、岸田総理大臣は東京電力福島第一原発の処理水放出の安全性などを説明し、各国に理解と支持を求めました。

さらに、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことを踏まえ、「一部の国が突出した行動をとっている」と指摘し、科学的根拠に基づく行動や正確な情報の発信を求めていく考えを重ねて示しました。

ロシア ラブロフ外相“東アジアでの軍事化に懸念”

ロシア外務省は7日、「東アジアサミットに参加しているラブロフ外相は、NATO=北大西洋条約機構がこの地域に浸透していることで東アジアで軍事化のリスクが生じているとして、このことに注意を払った」と発表しました。

そして、「核を含む戦略的な兵器の配備を想定したAUKUSを推進している」などと懸念を表明し、ウクライナ侵攻で対立を深めるアメリカを改めてけん制しました。

中国 李強首相 アメリカなどをけん制

中国外務省によりますと、李強首相は東アジアサミットの中で、「新たな情勢と挑戦に直面する中、東アジアサミットは引き続き、地域の長期的な安定と持続的な繁栄の実現のために、より大きな役割を果たすべきだ」と述べたということです。

また、南シナ海については「中国とASEAN諸国は『行動規範』の協議を積極的に推進している。域外国は南シナ海の平和と安定を守る努力を十分に尊重することを望む」と述べ、ASEANへの関与を強めるアメリカなどをけん制しました。

さらに、李首相は海洋環境についても触れ、「海洋汚染の影響は深く、歴史や人類に対して責任ある態度で海洋の生態環境を守らなければならない」と述べ、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を始めた日本への批判をにじませました。