月探査機など搭載の「H2A」ロケット47号機 きょう打ち上げへ

天候不良で打ち上げが延期されていた、日本初の月面着陸を目指す月探査機などを搭載した「H2A」ロケット47号機は、7日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。

「H2A」ロケット47号機は、8月28日、種子島宇宙センターから打ち上げられる予定でしたが、上空の風が強く条件を満たしていないとして、予定時刻の27分前になって打ち上げが中止され、新たな打ち上げ予定時間は7日の午前8時42分となっています。

種子島宇宙センターでは、6日夜、機体が組み立て棟から姿を現し、30分かけて発射地点に移されました。

今回の「H2A」ロケット47号機には日本初の月面への着陸を計画しているJAXA=宇宙航空研究開発機構の無人探査機「SLIM」(スリム)と、NASA=アメリカ航空宇宙局などと共同で開発した新たな天体観測衛星「XRISM」(クリズム)が搭載されています。

「H2A」ロケットをめぐっては、ことし3月に新たな主力ロケット「H3」の初号機が打ち上げに失敗し影響が懸念されていましたが、JAXAは共通する部品の検査を強化するなど対策を講じてきました。

「H3」の打ち上げ失敗以降、日本の大型ロケットの打ち上げは初めてで注目されています。

「H2A」ロケット47号機の打ち上げはこのあと午前8時42分の予定です。

SLIMとは

今回の「H2A」ロケット47号機には月探査機「SLIM」(スリム)と天体観測衛星「XRISM」(クリズム)が搭載されています。

このうち「SLIM」は、日本初の月面への着陸を計画しているJAXA=宇宙航空研究開発機構の無人探査機で、精密な着陸技術の実証が主な目的です。

高さおよそ2.4メートル、燃料を除いた重さがおよそ200キロで、デジタルカメラなどで人の顔を認識するのに使われる「画像認識」の技術を応用することで、クレーターの形など地形情報を識別し、目標地点に誤差100メートル以内で着陸することを目指しています。

各国の主な探査機は月面に降り立つ際、目標地点に対し数キロから10数キロの誤差がありますが、「SLIM」はそれを大幅に縮めようとしています。

「SLIM」は、打ち上げから3、4か月後に月の周回軌道に入り、来年1月から2月ごろにかけて月面着陸に挑む計画です。

無人探査機による着陸に成功すれば世界で5か国目で、得られたデータは、宇宙飛行士の月への着陸を目指すアメリカの国際プロジェクト「アルテミス計画」にも利用されることになっています。

このほか、月の岩石などについても調べる予定で、日本初の月面探査で謎の多い「月の起源」に迫ることができるか注目されます。

XRISMとは

一方、「XRISM」は、2016年に打ち上げられたものの、プログラムのミスなどで運用を断念した天体観測衛星「ひとみ」の後継機で、JAXA=宇宙航空研究開発機構がNASA=アメリカ航空宇宙局などと共同で開発しました。

全長およそ8メートル、重さおよそ2.3トンで、エックス線による観測で銀河や星の構造のほか、宇宙のさまざまな現象の解明に役立てられることになっています。

打ち上げ後は科学的な成果が広く共有されるよう、各国の研究者の提案に基づいて、「XRISM」で得られた観測データが公開されることになっています。

加熱する月探査競争

月探査をめぐっては近年、水の存在を示す研究論文が相次いで発表されたことなどを受けて、人類の新たな拠点にしようと国や民間の競争が激しくなっています。

8月23日にはインドが月探査機「チャンドラヤーン3号」を月の南極付近に着陸させることに成功し、旧ソビエト、アメリカ、中国に次いで世界で4か国目に月面着陸を成功させた国となりました。

日本でも去年11月には、JAXA=宇宙航空研究開発機構の無人探査機「OMOTENASHI」がアメリカの大型ロケットで打ち上げられ、日本初の月面着陸を目指しましたが、地上との通信が安定せず着陸を断念しました。

また、ことし4月には、日本のベンチャー企業「ispace」が開発した月着陸船が、アメリカの民間企業「スペースX」のロケットで打ち上げられ、世界初の民間による月面着陸に挑みましたが高度を誤って認識し、着陸に失敗しています。

国家間の争いが激しくなるなか、人類の宇宙への進出の足がかりとして国際プロジェクトも進められています。

アメリカが日本やヨーロッパなどと進めているのが国際プロジェクト、「アルテミス計画」です。

この計画では「ゲートウェイ」と呼ばれる新たな宇宙ステーションの建設を予定しているほか、再来年を目標に人類を再び月面に送り込む計画を進めています。

「H2A」残り4機で運用終了 その後は「H3」に移行

日本の主力ロケットとして現在運用されている「H2A」ロケットは今回の47号機を含め残り4機で運用を終了することが決まっています。

イーロン・マスク氏が率いる「スペースX」をはじめ、民間の衛星打ち上げビジネスの競争が国際的に激しくなるなか、「H2A」ロケットでは打ち上げ費用の高さや設備の老朽化などが課題となっていました。

そのため、JAXAなどは総開発費およそ2000億円をかけて新たな主力ロケット「H3」の開発を行っています。

ことし3月、「H3」初号機の打ち上げは失敗しましたが、JAXAは原因を絞り込み、部品を一部変更するなど対策をした上でできるだけ早く次の「2号機」の打ち上げに挑む考えを示しています。

内閣府によりますと来年度に予定されている「H2A」50号機の打ち上げを終えたあとの再来年度以降は「H3」に移行する予定です。