北海道胆振東部地震から5年 心のケアや森林再生など課題も

44人が犠牲になった北海道胆振東部地震から6日で5年になります。被災地では主要なインフラ整備はほぼ完了するなど、復旧から復興へと向かっていますが、被災者の心のケアや大きな被害を受けた森林の再生など、課題も残されています。

5年前の2018年9月6日、最大震度7の揺れを観測した北海道胆振東部地震では、大規模な土砂崩れが起きるなどして、災害関連死を含めて44人が死亡、785人がけがをしました。

地震から5年となり、大きな被害が出た厚真町、安平町、むかわ町の3つの町では、道路や河川といった主要なインフラの復旧工事がほぼ完了するなど、被災地は復旧から復興へと向かっています。

一方、被災者の中には現在も心のケアが必要な人も少なくなく、住民どうしが支え合えるようコミュニティーを再建するなどしながら、こうした人たちをいかに支援していくかが課題となっています。

また地震では、記録が残る明治以降、国内最大となるおよそ4300ヘクタールの森林が被害を受け、去年からは再生計画に基づいて林道の整備や植林などが集中的に進められていますが、これまでに植林などの作業が行われたのは、被害を受けた森林の6%程度にとどまっています。再生には少なくとも数十年を要する見通しです。

さらに、地震の記憶を風化させることなくその教訓を後世に伝えていくことも求められていて、厚真町では地震から5年となるのに合わせ、当時の証言をまとめた冊子や動画を作成するなど、取り組みを進めています。

厚真町 職員が発生時刻に黙とう

厚真町では6日未明から、50人以上の町の職員が町役場の正面玄関の前に集まりました。

職員たちは町内で犠牲になった人数と同じ37本のろうそくを並べ、火をともしていきました。

紙コップで作ったろうそく立てには、「あの日を忘れない」や「地震の教訓を後世に語り継ぎます」などのメッセージが書かれていて、職員たちは地震の発生時刻の午前3時7分にあわせてろうそくを囲んで黙とうし、犠牲者を悼みました。

職員の一人は「地震の時はまだ学生で、ニュースを見て衝撃を受けたことを覚えています。厚真町の復興を願って仕事をしているので、その気持ちを書きました」と話していました。

献花台でも早朝から追悼

厚真町で最も多い19人が亡くなった吉野地区には、今月1日から献花台が設置されていて、地震から5年となった6日は、早朝から犠牲者を追悼するために訪れた人が手を合わせる姿が見られました。

北海道胆振東部地震とは

北海道胆振東部地震は、2018年9月6日午前3時7分に北海道の胆振地方中東部を震源に発生し、厚真町で最大震度7、安平町とむかわ町で震度6強の揺れを観測しました。

山林の大規模な土砂崩れに、厚真町の多くの住宅が巻き込まれるなどしました。

また、厚真町にある道内最大の火力発電所の苫東厚真火力発電所が緊急停止し、道内全域の295万戸が停電する「ブラックアウト」が発生しました。

札幌市清田区では、大規模な液状化現象で、住宅が傾いたり道路が陥没したりする被害が相次ぎました。

住宅の被害は全壊491棟、半壊1818棟などを含む合わせて4万9400棟余りに上りました。

また厚真町、安平町、むかわ町の3つの町では、地震のあとおよそ960人がプレハブ型の仮設住宅やみなし仮設住宅などでの生活を余儀なくされました。

農地に崩れた斜面の土砂が流れ込んで大きな被害が出た農業も、田んぼなどで復旧が進み、一部、復旧の土木作業用に使われていた農地でも来年度から営農が再開され、地震前の姿に戻る見込みです。