社会

旧統一教会に「過料」7日に裁判所に求めることを決定 文科省

旧統一教会をめぐる問題で、文部科学省は宗教法人審議会を開き、7回の質問権の行使に対し教団側が100項目以上で回答しておらず、違反の程度は軽微でないとして、行政罰の「過料」を科すよう、7日に東京地方裁判所に求めることを決めました。

目次

「過料」7日に裁判所に求めることを決定

文部科学省は、旧統一教会に対し、これまで宗教法人法に基づく「質問権」を7回行使し、▽組織運営や▽財産・収支、▽献金など、500余りの項目について報告を求めてきました。

これについて6日、宗教法人審議会が開かれ、永岡文部科学大臣は「適正な権限の行使に対し、全体のおよそ2割の100項目以上が報告されていない」と説明しました。

そのうえで「違反の程度も軽微ではないことから、この不報告について東京地方裁判所に対し過料の通知を行う予定であることについて意見を伺いたい」と述べ、行政罰の過料を科すよう、裁判所に求める方針を明らかにしました。

文部科学省によりますと、出席した14人の委員からは「過料を科すことは相当だ」という意見が出されたということです。

質問権の行使については必要があれば今後も行うとしていますが「過料を求めた結果が確定するかどうかにかかわらず、並行してさまざまな情報収集をしているため、積み上がれば解散命令を請求する判断もありえる」としています。

文部科学省は7日に郵送で東京地方裁判所に通知し、過料を科すよう求めることにしています。その後、東京地方裁判所が旧統一教会に過料を科すことが妥当か判断することになります。

審理は非公開で行われ、過料が命じられた場合は教団は不服を申し立てることができます。

旧統一教会「解散命じられる事由ない 過料は認められない」

教団は5日、ホームページで「当初から、質問権の行使は違法であり、回答する理由はないと考えてきたが、当法人のコンプライアンスや社会と国民に貢献できる公益法人としての歩みを正確に伝え、少しでも理解してもらうために、信者らのプライバシーおよび信教の自由などを守りつつ、質問に毎回、真摯(しんし)に回答してきた」と掲載しました。

そのうえで「そもそも当法人が解散を命じられる事由はなく、過料は認められない」として、文部科学省が裁判所に過料を科すよう求めた場合には、徹底的に争う考えを示しています。

「過料」とは?手続きは?

過料とは、行政上の義務に違反した場合に国や地方自治体などが団体などに金銭を徴収する行政罰の1つです。

宗教法人法でも、罰則規定として、法人が国や地方自治体などへの書類の提出を怠ったり、虚偽の内容を記載したりした場合などは、10万円以下の過料を科すことができるとされています。

国が「質問権」をめぐって過料を科すよう求めるのはこれが初めてとなります。

今後は、東京地方裁判所が旧統一教会に過料を科すことが妥当か判断することになります。審理は非公開で行われ、過料が命じられた場合は教団は不服を申し立てることができます。

なぜこのタイミングで過料?専門家“次のステップ意識か”

なぜ文部科学省は、このタイミングで過料を科すよう求める判断をしたのでしょうか。

関係者の中では、行政罰の1つである過料を科すよう求めることで「質問権の行使を通じてできることは尽くした」ということや、「教団側が質問権に適切に応じていない」ことを裁判所に示すねらいもあるという見方があります。

宗教法人法に詳しい近畿大学の田近肇教授は「そろそろ質問権の行使という段階を過ぎて“次のステップ”つまり解散命令の請求の検討というステップに移ろうとしているのではないか。次のステップに移るにあたり、旧統一教会の回答内容では誠実に対応したことにはならないということを明確にしたい意図があるのではないか」と分析しています。

そのうえで、今回の過料の通知が解散命令の請求に与える影響について「解散命令の是非を判断するときには、霊感商法や高額献金の悪質性などが問題になるはずで、旧統一教会の質問権行使に対する回答拒否の悪質性とは別の問題だ」と指摘し、過料についての裁判所の判断にかかわらず、解散命令を請求することは可能だと話していました。

元信者支援の弁護団長「過料は当然」

旧統一教会の元信者などの支援を行っている「全国統一教会被害対策弁護団」の村越進団長は「質問権の行使に対して、宗教法人の責務として真実を明らかにする法的義務があった。それにもかかわらず、旧統一教会は質問に回答しなかったのであり、意図的に真実の解明を妨げてきたと言わざるをえない。過料に処せられるべきなのは当然だ」とする談話を出しました。

そのうえで「過料を求める通知が出されたことを真摯(しんし)に受け止め、被害者に対して誠実に対応するよう改めて強く求める」としています。

これまでの経緯は

旧統一教会をめぐる問題は、去年7月に起きた安倍元総理大臣の銃撃事件をきっかけに浮き彫りとなりました。

逮捕された山上徹也被告が、母親が多額の献金をしていた旧統一教会に恨みを募らせた末、事件を起こしたなどと供述したためです。

被害者救済に取り組む弁護士などからは、教団への解散命令を裁判所に請求するよう政府に求める声が上がりました。

弁護士は「旧統一教会は『教会改革』の方針を発表したが、過去の被害に対する言及が全くないなど信用できず、自浄作用は期待できない」と述べました。

これに対し、政府は当初、憲法に定められた信教の自由を保障する観点から慎重な立場をとっていました。

国会内で開かれた野党の会合で文化庁の担当者は「旧統一教会の役職員が刑罰を受けた事案を承知しておらず『解散命令』の請求の要件を満たしていないと考えている」と述べました。

しかしこの問題や安倍元総理大臣の「国葬」などを背景に岸田内閣の支持率は下落。

さらに、立憲民主党や共産党が、教団をめぐる問題を国会で追及する構えをみせました。

こうした中、去年10月17日に開かれた衆議院の予算委員会。

岸田総理大臣は「宗教法人法に基づき『報告徴収』と『質問権』の行使に向けた手続きを進める必要があると考え、文部科学大臣に速やかに着手させる」と述べ、教団への解散命令請求を視野に宗教法人法に基づく「質問権」を行使することを表明しました。

宗教法人に対する質問権の行使は、平成8年にこの規定ができて以来初めてとなります。

文部科学省は、専門家による会議を設置し、質問権の行使にあたっての基準をまとめました。

これを受けて文部科学省は去年11月、学識者や宗教団体の幹部などで構成する宗教法人審議会を開き、質問項目の案について諮問。

教団が持つ財産や収支、組織の運営などについての報告を求めるなどと説明し、その日のうちに審議会から「質問権」の行使は「相当」だとする答申が出されました。

そして翌11月22日、文部科学省は教団に対し、法人の組織運営や収支、財産に関して報告を求める書類を送り、1回目の質問権を行使しました。

文部科学省は、これまでに質問権を7回にわたって行使し、▽組織運営や▽財産・収支、▽献金など、500余りの項目について報告を求めました。

教団側の回答は、1回目の「質問権」に対しては段ボール8箱分に上りましたが、最近はレターパックなどに収まるほどになってきていて、関係者によりますと、信教の自由などを理由に教団側が回答を拒否した項目が100以上あったということです。

また文部科学省は▽旧統一教会と交渉してきた弁護士や▽被害を訴える元信者などへの聞き取りも続けていて、献金集めの手法など教団の実態について調査を進め、解散命令請求の要件にあたるかどうか、慎重に検討してきました。

松野官房長官「法律に基づき適切に対応」

松野官房長官は午後の記者会見で「旧統一教会の主張や動向の1つ1つにコメントすることや、今後の対応について予断を持って答えることは差し控える」と述べました。

そのうえで「所轄庁の文部科学省で、法人の客観的な事実を明らかにするための丁寧な対応を着実に進め、法律に基づき適切に対応されるものと承知している」と述べました。

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