ベネチア国際映画祭 濱口竜介監督作品上映 観客から大きな拍手

イタリアのベネチア国際映画祭で、最優秀賞を競う部門にノミネートされた濱口竜介監督の作品、「悪は存在しない」が上映され、観客から大きな拍手が送られました。

世界3大映画祭の1つで、ことしで80回目を迎えるイタリアのベネチア国際映画祭は先月30日に開幕し、今月9日まで行われています。

最優秀賞にあたる金獅子賞を競うコンペティション部門には「ドライブ・マイ・カー」で数々の国際的な賞を受賞した濱口竜介監督の長編作品「悪は存在しない」がノミネートされていて、4日、上映会が行われました。

上映会の前には濱口監督や主演の大美賀均さん、共同企画者で音楽を担当した石橋英子さんらがレッドカーペットに登場し、写真撮影に応じていました。

「悪は存在しない」は、主人公が暮らす自然豊かな村の近くにキャンプの宿泊施設を建設する計画が持ち上がり、それが村の水資源や生態系に影響をもたらすことが明らかになるという物語です。

上映後には、観客が立ち上がって監督らに7分以上にわたって拍手を送っていました。

作品を見たイタリアの記者は「濱口監督は映像を通して物語や登場人物の感情をあらわすのが得意で、今回の作品もすばらしかった。何らかの受賞に値するのではないか」と話していました。

審査結果は9日の夜、日本時間10日の未明に発表される予定です。

濱口監督「情熱的に迎えてもらった」

上映後、報道陣の取材に応じた濱口監督は「観客がどのような反応をするか不安もあったが、イタリアという土地柄か、情熱的に迎えてもらった。歴史のある映画祭に参加できてうれしい」と話していました。

映画の共同企画者で「ドライブ・マイ・カー」でも音楽を担当した石橋英子さんは、「企画が始まった時はまさかこんなにすばらしい作品になり、ベネチアに来られるとは思っておらず感慨深い」と話していました。

また主演の大美賀均さんは、これまでの濱口監督の作品でもスタッフを務め、今回もシナリオ制作などに携わっていたということで「濱口監督に主演を打診されたときはまさかと思ったが、どの現場よりも周囲が励ましてくれる温かい現場だった」と制作現場の様子を話していました。

濱口監督は「悪は存在しない」というタイトルの意味を尋ねられると、「特に含みはなく撮影現場の自然のなかでシナリオを考えていて、ふと浮かんだタイトル。映画のシナリオとタイトルの緊張関係を楽しんでほしい」と応じていました。