ロシア「愛国教育」本格化か 新たな歴史教科書も ねらいは?

ロシアでも今月から新学年が始まりましたが、プーチン政権はいわゆる「愛国教育」を本格化させる構えです。ロシア政府が先月発表したのが、今月から日本の高校生にあたる生徒が使用する“新たな歴史教科書”です。

ロシアがウクライナで始めた軍事侵攻について新たに記載されていて、ロシア系住民を保護するためだったなどと侵攻を正当化しているのです。詳しく見ると「欧米はウクライナに莫大な金銭と武器を提供し、ロシアに制裁を加えている」と書かれていて、欧米批判も目立っています。

この教科書はロシア人の間でも物議を醸していて、国外に逃れた歴史教師のロシア人は「私が見る限り、これは教科書ではなくプロパガンダだ。いわゆる特別軍事作戦についての記載があるが、これは100%学習教材ではない」と批判の声を上げています。

9月1日にプーチン大統領は「愛国教育」のイベントを開催しました。

プーチン政権に異を唱える者は厳しく弾圧する一方で、愛国教育を通して若い世代にもプーチン政権の立場を浸透させる狙いと見られます。

一方、アメリカ国務省は「1万9000人以上のウクライナの子どもたちがロシア政府によってロシアへと連れ去られ、新学年のきょう9月1日を祝えない状況だ」などと批判しています。

そのアメリカ国務省はSNSに動画も掲載し、ロシア批判を展開しています。

欧米やウクライナが懸念しているのは、ロシアによる「愛国教育」が、ロシアに連れ去られたウクライナの子ども達やロシアの占領地域で学校に通うウクライナの子ども達も対象になっている点です。

ロシアにとっては「愛国教育」を通してウクライナの子どもをロシアの子どもへと変えるほか、中には軍事訓練を施す授業もあることから、ロシア兵として動員するねらいもあると見られています。

さらにプーチン政権は、今月、ロシア国内の地方選挙にあわせて占領地でも選挙の動きを進めていて、現にウクライナの東部の都市マリウポリでは、投票の様子や投票箱設置の映像などが入ってきています。

プーチン政権が今月推し進める「教育」と「選挙」。ウクライナの占領地の「ロシア化」を進め、更なる既成事実化を図る狙いで、ウクライナや欧米の反発は必至の状況です。

※9月1日の「国際報道2023」で放送した内容です
※動画は3分11秒、データ放送ではご覧になれません