佐賀 豚熱で処分進む “ワクチン接種 来週以降準備へ”

佐賀県唐津市の養豚場でブタの伝染病、CSF=豚熱の感染が確認され、農林水産省が九州7県をブタへのワクチン接種の推奨地域に追加すると決めたことを受け、佐賀県では来週以降、接種に向けた準備を始めることにしています。

佐賀県唐津市で2例目となる豚熱が確認された養豚場では、およそ1万頭が飼育されていて、現場では県の職員や自衛隊、それに全国から派遣された獣医師らが1日3交代から4交代でブタの処分を進めています。

佐賀県によりますと、2日午後5時現在で、このうち3898頭の処分が終わったということです。

また、この養豚場からおよそ800メートル離れた場所にある、1例目の感染が確認された養豚場では、処分した496頭を埋める作業が1日夜、終わったということです。

一方、感染が確認された養豚場から半径3キロ以内にある7つの養豚場で飼育されている1万5500頭はすべて陰性が確認されたということです。

今回の感染確認を受けて農林水産省は1日、九州7県をブタへのワクチン接種の推奨地域に追加すると決めました。

接種は獣医師のほか、研修を受けた養豚場の従業員なども可能で、佐賀県では正式な通知が届きしだい、来週にも接種の時期や体制を含む計画を策定するなど、準備を始めることにしています。

長崎や宮崎でも対策始まる

佐賀県と隣接する長崎県は8月30日に県庁で会議を開き、県が農協の関係者などにワクチン接種に向けた体制づくりを進めていると説明し、
▽農場や豚舎を出入りする際の靴の消毒や
▽ネズミやネコなどを農場に侵入させないような対策を、養豚農家に徹底させるよう呼びかけました。

また、宮崎県では養豚農家を対象にしたブタへのワクチン接種の研修会が行われ、県の担当者が
▽太ももや腰への注射を避けることや
▽針を刺す場所をアルコールを含ませた綿で消毒することなどを説明しました。

県はワクチンが打てる養豚農家を300人ほどまで増やしたいとしています。

ブタの飼育数 九州地方が最多

農林水産省の畜産統計によりますと、全国で飼育されているブタの頭数はことし2月時点でおよそ895万頭にのぼり、地域別では養豚業が盛んな九州地方が281万頭余りと最も多くなっています。

都道府県別では
▽鹿児島県が115万頭余りとトップで
次いで
▽宮崎県が81万頭余り
▽北海道が75万頭余りとなっています。

今回、ブタの伝染病CSF=豚熱の感染が確認され、およそ1万頭のブタの処分が進められている佐賀県は8万頭余りとなっています。

専門家「ヒトへの感染 心配する必要なし ワクチン接種迅速に」

CSF=豚熱に詳しい北海道大学の迫田義博教授は「豚熱はブタやイノシシの間ではウイルスが急激に広がって、致死的な状況に至らしめる伝染力と病原性の高い感染症だ。ただ、このウイルスが感染するのはブタとイノシシだけで、万が一、感染した豚肉を食べるようなことになっても、ヒトには感染しない。ヒトへの感染を心配する必要はない」と話しています。

今回、佐賀県の養豚場で豚熱の感染が確認されたことについては、「まずは今回の感染が野生のイノシシによるものか、それとも人の移動などによるものか、できるだけ早く究明することが必要だ。人や物の移動が原因ならまだ食い止めることができるので、養豚場の衛生管理を徹底する必要がある。イノシシからの感染の場合は、九州の養豚場の多さやイノシシの生息数から考えても状況が非常に難しくなるので、早急にワクチン接種やイノシシ対策をすることが重要だ」と指摘しました。

そして、「ワクチンを接種しても100%病気を予防できるわけではないが、ワクチンを使えば感染のリスクが大きく下がることは科学的に裏付けられている。養豚場での感染対策の徹底とともに、ワクチンの接種を迅速に進めていく必要がある」と話していました。