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経済危機のスリランカ 日本主導の債務再編を高く評価 大統領

経済危機で債務不履行に陥ったスリランカの大統領がNHKのインタビューに応じ、日本が主導して債務の再編を進めていることを高く評価しました。また、中国に運営権が譲渡され、「債務のわな」の典型例とされる南部の港については、「軍事的な管理はスリランカ側の手中にある」と述べ、安全保障とは別問題だと強調しました。

インド洋の島国、スリランカは財政政策の失敗などで急激な通貨安やインフレに見舞われ、去年4月には対外的な債務の支払いができなくなる債務不履行に陥りました。

こうした中、去年7月の政変で就任したウィクラマシンハ大統領がNHKのインタビューに応じ、「日本が主導権をとればどの国も安心できる」と述べ、日本などがことし4月にすべての債権国に呼びかけて、債務問題の解決にむけた新たな枠組みを発足させたことを高く評価しました。

スリランカについては日本は、「自由で開かれたインド太平洋」の重要なパートナーとして重視しています。

一方、中国も巨大経済圏構想「一帯一路」のもとでスリランカを重要視し、融資を増やしてきましたが、ローンの返済が滞ったことを理由に南部の港の運営権が99年間にわたって中国企業に譲渡されるなど、いわゆる「債務のわな」の典型例とされる事態も起きています。

この問題について大統領は「中国には日本のJICA=国際協力機構のような、融資先の債務問題について適切に対処する機関がない」と述べ、融資を受け入れたスリランカ側だけでなく、中国側にも問題があったという考えを示しました。

また、運営権を譲渡した港については、自衛隊の艦船も寄港したことに触れたうえで、「軍事的な管理はスリランカ側の手中にある」と述べ、債務と安全保障は別問題だと強調しました。

ことし4月に発足の「債権国会合」 日本が主導

深刻な経済危機で債務不履行に陥ったスリランカでは、対外債務の残高はことし6月時点で366億ドル、日本円で5兆3000億円に上り、これは2023年の歳入、およそ104億ドルの3.5倍にも達しています。

対外債務のうち2国間債務については最大の債権国が中国で、2国間の債務全体の43%、次いで日本が23%、そしてインドが15%などとなっています。

こうした債務問題の解決に向けて、日本はスリランカ側から、「債務再編のプロセスを主導してほしい」という要請を受けました。

これを受けて日本はフランスやインドとともに共同議長を引き受け、新たな枠組み、「債権国会合」をことし4月に発足させました。

「自由で開かれたインド太平洋」を掲げる日本としては、インド洋の要衝にあるスリランカが経済危機から脱却できるよう支えることが重要だと位置づけています。

ことし5月には初めての会合がオンラインで開かれ、スリランカ側からは経済財政改革を進め、債務の返済に取り組む意向が示されました。

また、それぞれの債権国が返済条件をどのように変えていくのかなど、早期に協調して決めていくことで合意したということです。

一方で、最大の債権国とされる中国はオブザーバーとしての参加にとどまりました。

議長国の日本としては、問題の解決のためにはあらゆる債権国が透明かつ公平に議論するのが必要だとする立場で、中国に対しても引き続き、正式な参加を呼びかけるとともに、建設的に協議に臨むよう求めています。

中国 スリランカを重要視 インフラ開発進める

中国は巨大経済圏構想「一帯一路」に基づいてインド洋の真ん中にあるスリランカを重要視し、さまざまなインフラ開発を進めてきました。

このうち、最大都市、コロンボの港湾部で進められている「ポートシティー」は沖合に大きな人工島を造成し、オフィスビルや商業施設などを建設するプロジェクトです。

269ヘクタールのうち116ヘクタールは中国国営企業の所有となっていて、14億ドルの総工費は全額が中国企業の直接投資によるもので、99年間にわたって中国側にリースされることになっています。

また、市の中心部には巨大な電波塔が中国企業によって建設されました。

高さはおよそ350メートルで、南アジアで最も高いとも言われています。

今年7月に辞任したゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領の兄であるマヒンダ・ラジャパクサ元大統領の政権下で着工されたもので、採算性がないとする批判が出ています。

また、スリランカ南部のハンバントタ港はアジアと中東を結ぶ海上交通の要衝に位置していますが、融資の返済が滞ったことを理由に、運営権が99年間にわたって中国側に譲渡される事態になっています。

この港には去年、中国の海洋調査船が入港しましたが、隣国のインドでは、インドの弾道ミサイルや人工衛星の発射などを監視する目的ではないかと警戒する見方が広がっていました。

スリランカの人々 厳しい生活続く

経済危機に陥ったスリランカでは、市民の抗議活動で前の政権が倒れてから1年がたったいまも人々は厳しい生活を強いられています。

国内では物価水準は依然として高い水準にあり、人々は物価高と景気低迷の中、厳しい生活を強いられています。

28日にはコロンボ市内で、政府の対応に不満を募らせた市民による激しい抗議デモが行われました。

市民たちは債務再編によってさまざまな負担を強いられているとして、政府の経済政策やIMFによる融資にも反対を叫んでいました。

経済危機は医療や子どもたちの教育などにも深刻な影響を及ぼしていて、ウィクラマシンハ大統領は経済の立て直しを急ぐことを求められています。

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