大江健三郎さん自筆原稿をデジタル化した研究拠点 東大に設立

日本人として2人目のノーベル文学賞作家で、ことし3月に亡くなった大江健三郎さんの自筆原稿など、1万8000枚以上をデジタル化した研究拠点が大江さんの母校の東京大学に設立されました。

東京 文京区にある東京大学の弥生キャンパスの一室に設けられた研究施設は「大江健三郎文庫」と名付けられました。

現代日本を代表する小説家で日本人で2人目となるノーベル文学賞を受賞した大江さんは、ことし3月に88歳で亡くなる前から、大学に自筆原稿などを寄託してきたということです。

室内には専用のパソコンがあり、1957年のデビュー以降、発表してきた小説や評論など131作品の自筆原稿など1万8000枚以上をスキャンした画像が閲覧可能です。

このうち
▽1983年の「新しい人よ眼ざめよ」では、タイトルが「眼ざめよ、おお、新時代(ニュー・エイジ)の若者らよ」から変更されたことが分かります。

このほか
▽2013年の大江さんの最後の小説「晩年様式集(イン・レイト・スタイル)」では、数多くの加筆・修正のあとが確認できます。

大学によりますと現代作家のデジタルアーカイブとしては国内屈指の規模だということです。

利用には事前申請が必要で、研究・教育を目的とする人を対象としていて、大学では、所蔵している大江さんの初版本などを含め、これらの貴重な資料から大江文学の研究が進むことを期待しています。

担当する東京大学文学部の阿部賢一准教授は「出版社や自宅に原稿が残っていて、研究者に委ねてくださったといういろいろな奇跡が重なって実現しました。大江さんに来ていただくことはかないませんでしたが、逆に大江さんの文章を読むきっかけが始まったと考えています」と話していました。