損保ジャパン 取引再開伝えた際 ビッグモーターが関係強化発言

損害保険ジャパンの社長が去年7月の役員会議で、不正の可能性を認識しながら、いったん中止していたビッグモーターとの取り引き再開を促していた問題で新たな事実が明らかになりました。この会議のあと、担当役員がビッグモーターの社長に対して、取り引きを早期に再開する方針を伝えた際にビッグモーターの社長から、新たに開設する店舗での保険ビジネスをお願いしたいという発言があったことがわかりました。金融庁は両社のやりとりについて詳しく調べる方針です。

去年7月に行われた損害保険ジャパンの役員会議では白川儀一社長が、ビッグモーターへの再発防止策が必要だとした上で、追加の調査は行わず、取り引きを再開するよう促したことがわかっています。

複数の関係者によりますと、この会議の5日後に当時、ビッグモーターの社長を務めていた兼重宏行氏やその長男で副社長だった兼重宏一氏ら幹部が損害保険ジャパンの本社を訪れました。

この中で、当時、損害保険ジャパンの専務執行役員を務めていた中村茂樹氏など担当者が、工場への追加調査は行わず、できるだけ早く取り引きを再開するという方針を伝えたということです。

これに対し、当時の兼重社長は、今後も最大のパートナーとして関係を続けていくと述べた上で、新たに開設する複数の店舗の保険ビジネスを損害保険ジャパンにお願いしたいと発言したということです。

当時、損害保険ジャパンの経営幹部は、取り引きを中止している間にライバルの会社がビッグモーターとの取り引きを拡大するのではないかと危機感を強めていました。

金融庁はこうした両社のやりとりを踏まえ、取り引きの再開を急いだ背景について詳しく調べる方針です。

ビッグモーターをめぐり これまでの国交省の対応

ビッグモーターの保険金の不正請求問題をめぐっては、国土交通省は道路運送車両法に違反する点がないか調査しています。

ビッグモーターをめぐっては、外部の弁護士による調査委員会の報告書で不正の実態が明らかになり、国土交通省は先月26日、和泉伸二社長ら会社の幹部5人を呼んで聴取を行いました。

国土交通省によりますと、聴取は非公開で2時間ほど行われ、報告書の内容を中心に車両の修理や整備について聞き取ったということです。

さらに2日後の先月28日、全国24の都道府県にある34の事業所で一斉に立ち入り検査を行いました。

これらの事業所は報告書で、修理費用を水増しするため故意に車に傷をつけるなどの問題が指摘され、さらなる事実確認が必要だと判断したということです。

あわせて、検査に入った事業所を含む整備工場がある全国135の事業所について、道路運送車両法に違反する点がないか調査したうえで今月27日までの1か月以内に報告するよう、会社の各エリアの責任者に求めました。

これに対し、今月25日、各エリアの責任者から報告があり、現在内容を精査し、事実関係の確認を行っているということです。

道路運送車両法では依頼を受けていない整備や行っていない整備に対する料金の請求を禁じていて、国土交通省は違反が確認された場合、処分を検討するとしています。

ビッグモーターをめぐっては、国土交通省はことしに入って、全国3つの事業所で車検の際に一部の検査を実施していないなどの違反を確認し、車検業務の資格の取り消しや、停止の処分を行っています。

街路樹枯れるなどしたケース 全国で10件確認 国交省調査

「ビッグモーター」の店舗前の街路樹が各地で枯れるなどしていた問題を受けて、国土交通省が先月下旬に行った調査では、国が管理する国道沿いにある111の店舗のうち、過去5年程前から現在までに街路樹が枯れるなどしたケースが全国で合わせて10件確認されたということです。

国土交通省は現在、木が枯れた原因を専門の検査機関に依頼して調査していて、除草剤の使用などが確認された場合には、警察に被害届を提出するとともに、行為者が特定された場合は損害賠償を請求するとしています。

ビッグモーター側への刑事責任追求は

ビッグモーター側の刑事責任の追求は今後どうなるのか。

外部の弁護士による調査報告書では、保険金を水増し請求するため、店の従業員が故意に車に傷をつけたり、不要な板金作業をしていたりしたと指摘されています。

保険金の不正請求は詐欺罪に問われる可能性もありますが、立件するためには従業員らの証言だけでなく、修理前の車の状態を記録した資料など、十分な物証を集めることが必要で、「被害者」の位置づけとなる保険会社側の認識も捜査を進めるうえでの重要なポイントになります。

店舗前の街路樹が枯れるなどしていた問題では、現場から除草剤の成分が相次いで検出され、自治体から器物損壊などの疑いで被害届を受けた警察の捜査が始まっています。

警察は店舗前の植え込みの土を採取するなどして、除草剤がまかれたことと街路樹が枯れたことの因果関係を調べることにしています。

いずれの問題についても、会社の上層部から現場への指示があったかどうかの立証が焦点になると考えられます。