高速道路を運転中に“地震” ドライバーの対応は?

関東大震災の発生から9月1日で100年になります。
大きな地震が発生した場合、救助に向かったり支援物資を運んだりするために緊急車両用のルートをいち早く確保する必要があります。

しかし地震で道路が損傷したり、ドライバーの対応によっては放置された車などがルート確保の妨げになったりする可能性も指摘されています。

もしも運転中に大地震に遭遇したら、私たちドライバーはどうすればいいのでしょうか。

首都直下地震など想定 首都高で訓練

関東大震災の発生から100年となるのを前に、都内の首都高速道路では首都直下地震などの大地震を想定して訓練が行われました。

訓練は最大震度7の揺れを伴う大地震が発生して、高架橋のつなぎ目に段差が発生したとの想定で行われ、首都高速道路やグループ会社の社員およそ130人が参加しました。

橋に見立てた現場には段差を避けようと横転した車のほか道路上に止まった複数の車が道を塞いでいて、首都高速道路の社員は車を誘導したり残された車を運転したりして、通行できる車線を確保していきました。

一方ドアがロックされ鍵も残されていない車は、社員が窓を割ってドアを開けてサイドブレーキを解除し、トラクターでけん引していました。

車線を確保したことでレッカー車が到着し、横転した車を移動させたあとに土のうやスロープを設置して段差をなくしていました。

首都高速道路では震度5強以上の揺れを観測すると一部の区間を通行止めにして点検を行うほか、震度6弱以上の揺れでは被災地に向かう緊急車両の専用道路となるため、緊急車両が通行するスペースをいち早く確保する必要があります。

運転中に大地震 どうする?

自動車を運転中に大地震に遭遇したらどのように対応すれば良いでしょうか。
警視庁や首都高速道路が呼びかけている対応です。

【急ブレーキは厳禁】
揺れを感じたら急ハンドルや急ブレーキは避けてゆっくりと減速して道路の左側に車を停めてください。

急ブレーキは追突事故につながるおそれがあり大変危険です。ハザードランプをつけるなど周囲に知らせてから減速をすることが大切です。

高速道路では左側にスペースが無い場合は車を右側にとめて、緊急車両などが通る車線を確保してください。

【通行止めや被害のおそれも情報収集】
首都高速道路では震度5強以上の揺れで通行止めとなり、道路の点検が行われます。

また、警視庁によりますと震度6弱以上の揺れを伴う地震が起きると、高速道路や都心に向かう国道などでは緊急車両の通行を確保するため一般の車両は通行止めなどの規制がかかります。

停車したらスマートフォンやラジオなどで地震の情報や交通情報を確認してください。地震で道路に被害が出ている可能性もあるため、むやみに動かず警察や高速道路のパトロール隊の指示に従って移動するようにしてください。

【車から離れるときはキーをおいて】
救助活動などのため、自衛隊や警察、消防など緊急車両の通行を確保するため、道路上の一般車両を移動させる場合があります。

車を置いて避難する場合には、貴重品を持ち出して連絡先を残した上で、キーは車内に置いて、ドアのロックをかけずに離れるようにしてください。

“八方向作戦”で緊急車両用ルート確保へ

首都直下地震が発生した場合、都心部ではがれきや放置された車などによる深刻な渋滞などが起きるおそれが指摘されています。

このため国や東京都、首都高速道路などは2015年、東京の都心へ救助に向かったり支援物資を運んだりするための緊急車両用のルートを確保するための計画、“八方向作戦”を作りました。

計画では東京の周辺から都心に向かう主要道路を8つの方向に分け、地震発生から「48時間以内」にそれぞれ少なくとも上下1車線を緊急車両用のルートとして確保するとしています。

目標を「48時間以内」としたのは、災害の発生後、生存率が大きく変化する「72時間」が近づく前に救助活動を進めるためです。

“八方向作戦”によるルートの確保のため、優先的に作業する道路をあらかじめ選び車両撤去の機材の備蓄なども進められているほか、国土交通省などは警察や消防、それにトラックの業界団体と連携した訓練も行っています。

ドライバーの2割 震度5弱の揺れ気付かず

災害時の交通について研究している千葉大学大学院の丸山喜久教授は、2003年に起きた宮城県沖を震源とするマグニチュード7.1の大地震の際に、東北自動車道を通行していたドライバーおよそ200人にアンケートを行い、揺れの強さと運転手の行動の関係などについて分析しました。

その結果、震度5弱の揺れではドライバーのおよそ8割が地震に気付きましたが、2割は最後まで気付かなかったと回答しています。

また揺れを感じた人にどのような行動をとったか聞いたところ、路肩に停車した人は2割にとどまっていました。

丸山教授は「揺れを感じてすぐに減速すると地震に気付いていない車に追突されるおそれがある。首都圏は特に車間距離が近く直下型地震では緊急地震速報も間に合わないおそれがある。二次災害を防ぐためにもハザードランプをつけて周囲に知らせながらゆっくりと減速してから停車することが重要だ」と話しています。