処理水放出 中国からのツアーキャンセルなど 観光への影響懸念

東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて放出する措置が始まって以降、中国の旅行会社では日本へのツアーのキャンセルの問い合わせが増えるなど、9月末からの大型連休を前に影響を懸念する声が出ています。

中国では、福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めたうえで海に放出する措置を受けて日本の水産物の輸入が全面的に停止され、国営メディアも処理水を「核汚染水」と呼ぶなどして日本を非難する報道を続けています。

こうした中、日本への旅行を扱う現地の旅行会社によりますと、処理水の放出が始まってからツアーのキャンセルについて問い合わせが増えているほか、旅行会社の中には新規の募集を見合わせる動きも出ているということです。

中国では8月、新型コロナウイルスの感染対策で制限してきた日本への団体旅行がおよそ3年半ぶりに解禁されたばかりで、9月29日から10月6日までは建国記念日にあたる「国慶節」の大型連休となります。

旅行会社の担当者は「依然として日本は人気の行き先だが、健康被害を心配する声もあり注視していく必要がある」としていて、大型連休を前に日本への旅行の申し込みが鈍ることを懸念する声も出ています。

外務省 中国への渡航十分注意

東京電力福島第一原発にたまる処理水の放出開始後、中国にある日本の関係機関に嫌がらせが相次いでいるとして、外務省は現地に渡航する人などに対し、十分注意するよう呼びかけました。

こうした中、中部空港から中国に向かう人たちからは、事態が早く沈静化してほしいといった声が聞かれました。

外務省によりますと、福島第一原発にたまる処理水の放出開始後、中国では日本大使館などに抗議や嫌がらせの電話が相次いでいるほか、日本人学校では敷地に石が投げ込まれたということで、外務省は27日、中国に滞在している人や渡航を予定している人に対し、十分注意するよう呼びかけました。

こうした中、28日、中部空港から中国に向かう人たちからは、事態が早く沈静化してほしいといった声が聞かれました。

中国に留学するという愛知県内の女子大学生は「自分からセンシティブな話題はしないようには気をつけたい。問題が早く落ち着いてほしいです」と話していました。

また、父親は「何事もないタイミングで送り出したかったのですが、残念です。娘には無事に帰ってきてほしいです」と話していました。

一方、中国で働いているという研究者の男性は「中国政府も日本政府も過剰に反応していると感じる。中国にいる自分の知り合いに聞くと『処理水は一部の中国人は気にしているが、周りではほとんど話題にものぼっていない』とも話していた。互いに妥協するなど、両国の上手な対応が必要だと思う」と話していました。