“モー娘。” “AKB48”「育ての親」夏まゆみさん お別れの会

「モーニング娘。」や「AKB48」など人気アイドルグループの振り付けで知られたダンスプロデューサー、夏まゆみさんのお別れの会が東京都内で開かれ、指導を受けた「教え子」たちが恩師との別れを惜しみました。

400人が別れ “いただいた愛情とことばを大切に”

ダンスの未経験者が多かった「モーニング娘。」や「AKB48」の振り付けを担当した夏まゆみさんは、ダンスを通じてメンバーたちを一流のアイドルに育て上げる手腕が高く評価され「育ての親」と呼ばれました。

海外でも経験を積んだ高度で多様なダンスの技術をベースにしたダイナミックな振り付けで注目され、特に、1999年に発表された「モーニング娘。」の「LOVEマシーン」はサビの部分のダンスが歌とともに話題となり、年代を問わず誰もが楽しめるとして宴会やカラオケの定番の曲の一つになっています。

しかし、夏さんはことし6月、がんのため61歳で亡くなり、都内できょう開かれたお別れの会には指導を受けた「教え子」たちも参列しました。

「モーニング娘。」元メンバー 飯田圭織さん
ダンスも歌も知らず北海道から出てきた私を一からご指導していただき、ありがとうございました。音楽と向き合えない時があっても、ちゃんと愛情を込めて『そんな気持ちではだめだ』とお叱りくださったこともありました。大変な私たちをいつも愛情を込めてご指導いただき、たくさんの作品をつくりだし、たくさんの皆さんに感激していただけたこと、私たちで作り上げたあの時間を一生忘れません。

「モーニング娘。」元メンバー 保田圭さん
デビュー当時の私は精神的にも強い子ではなく、めげてしまうことも多く、毎日泣いてばかりいましたが、愛をもって厳しく指導していただくことで、とても強く前を向いて諦めずに頑張れるようになったと思っています。夏先生からいただいたたくさんの愛情やことばをこれからも大切に後輩たちと一緒につないでいきたいと思います。

「モーニング娘。」元メンバー 市井紗耶香さん
先生から教えて頂いたひとつひとつのことは、25年が経った今でも体の中にしみ込んで決して消えません。表現する楽しさを教えて下さり、ありがとうございます。体調が悪かったことに気がつけなくてごめんなさい。夏先生の魂は今も胸の中に生き続けています。どうぞこれからも遠くから近くから、見守っていてください。

会場には夏さんの写真や教え子たちを励ましてきた多くのことばがパネルで飾られていました。

主催者によりますと、きょうは夏さんと親交があったおよそ400人が参列したということです。

お別れの会に参列した歌手の山本リンダさんは、歌番組で夏まゆみさんに振り付けをしてもらったことがあるということで、「情熱があって愛情の深い方だと、いつも感謝しながらごいっしょさせていただいた。初めてお会いした時に、一人ひとりを生かすことを本当に思っていらっしゃる方だと感じました。ふわっと、深く包んでくれたんです」と夏さんとの思い出を語りました。

“ダンスを広めるのが夢”

夏まゆみさんは、ダンサーとしての実績を積みながら、20代の頃から振付師として活動を始め、1998年に開かれた長野オリンピックの閉会式で、公式テーマソングの振り付けを担当しました。

20年前に放送されたNHKの番組で夏さんは、長野オリンピックでの経験について、「『ダンスを広める』という方向性が明確に見えてきたという意味では大きな転機だった。私の夢はダンスを広めることだ」と語っていました。

振付師としてアイドル育成

活動の幅はさらに広がり、つんく♂さんがプロデュースしたアイドルグループ、「モーニング娘。」ではメンバーのオーディションの段階から携わり、その後、「LOVEマシーン」など数多くの楽曲の振り付けを担当しました。

また秋元康さんが立ち上げたアイドルグループの「AKB48」の振り付けでは「会いたかった」が知られています。

夏さんは過去のインタビューで、「芸術と娯楽の“ごった煮なダンス文化”の確立が私の夢です」と語っていました。

その思いを胸に、NHK紅白歌合戦の演出などにも20年以上にわたって携わるなど大規模なイベントをはじめ、ダンスの愛好家向けの教室の運営などにも精力的に取り組んできた夏さん。

事務所によりますと、61年の生涯でのべ200万人以上を指導したということです。

“エースはeverybody” 夏さんのことば

夏まゆみさんは亡くなる3か月前のことし3月、「モーニング娘。」や「AKB48」のメンバーたちを指導した経験やそこから得た自身の考えをまとめた本を発表しました。

30年以上にわたる指導の現場から選び出したことばは72にのぼります。

この中で、夏さんは、自分の能力や魅力を発揮する場所を見つけ、努力することができれば誰もが輝くことができるという自身の信念を、「エースはeverybody」と表現していました。

夏さんの著作に携わってきた編集者の綿谷翔さん
夏さんは、『たくさんのアイドルがいる中でエースがいてそのほかがいるように見えるけれども、絶対にみんなが輝くものを持っているからその場所を見つけるだけなんだ』ということを言っていました。『人は本当にいつでも誰でも輝く』という思いは、夏さんが一番、伝えたかったことかなと思います。