政治

処理水放出【国内外動き】投石相次ぎ中国の日本人学校警備強化

東京電力福島第一原発にたまる処理水の放出に中国が反発を強めるなか、政府・与党はさまざまなレベルで処理水をめぐる対応を改めるよう働きかける方針です。環境省は放出開始の翌日の25日、福島県沖のあわせて11地点で海水の採取を行い、トリチウムの濃度はすべての地点で今回検出できる下限値としていた1リットルあたり10ベクレルを下回ったと発表しました。一方、中国の日本人学校では、敷地に石や卵が投げ込まれる事件が相次ぎ、警備を強化するということです。

国内外の動きについてまとめました。

目次

“日本の水産物販売停止” の看板 北京の飲食店

処理水を薄めて放出する措置が始まって以降、中国では、一部の飲食店で日本から輸入した水産物を使っていないと強調する動きも出ています。

福島第一原子力発電所にたまる処理水について、東京電力が基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めたことを受けて、中国は、日本を原産地とする水産物について輸入を全面的に停止したほか、中国国内で加工や調理を行うことなども禁じました。

こうしたことを受け、中国にある一部の飲食店では、日本から輸入した水産物を使っていないと強調する動きが出ています。

このうち、首都・北京にある日本料理店が集まる施設では入り口に「原産地が日本の輸入水産物は販売を停止しました」と大きく書かれた看板が設置されていました。

これについて、北京市内の人から「合理的で大勢の人が望むものだ」といった声が聞かれました。

日本人学校の敷地に投石や卵投げ込まれる事件も

また、現地の日本総領事館によりますと、放出が始まった今月24日には、山東省青島にある日本人学校では、敷地に石が投げ込まれる事件が起きています。

また、関係者によりますと、翌日の25日、東部・江蘇省蘇州にある日本人学校でも複数の卵が投げ込まれたのが見つかったということです。

いずれも児童や生徒などのほか、建物への被害はなく、学校では、警備を強化するということです。

さらに中国にある日本の大使館や総領事館には放出に対する抗議の電話があったということで、日本大使館などでも不測の事態に備えて警備を強化しています

“日本の化粧品の利用を避けるべき” 中国のSNSに投稿も

福島第一原子力発電所にたまる処理水について、東京電力が基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めて以降、中国のSNS「ウェイボー」では、日本の化粧品の利用を避けるべきだという投稿も見られるようになっています。

このうち「日本の核放射線ブランドを避けるためのリスト」というタイトルがつけられた投稿では化粧品に関連した日本の企業名やそのブランド名などが列記されています。ただ、こうした投稿には明確な根拠は一切示されていません。

これに対して、日本の複数の化粧品メーカーは中国国内向けのサイト上などで中国で販売されている商品は様々な基準を満たしていて安全性に問題ないと説明しています。

処理水放出の現場 報道陣に初公開

処理水の海への放出が始まった東京電力福島第一原子力発電所で、27日に放出が行われている現場が初めて報道陣に公開されました。

このうち、放出に関係する設備を遠隔で操作する集中監視室には、処理水を保管するタンクの水位が計画通り低下しているかなどを確認するモニターが並び、設備の稼働状況の監視が行われていました。

また、大量の海水で薄めた処理水をためる巨大な設備では、いっぱいになった処理水があふれ出して海につながる海底トンネルの方へと流れ落ちる音と思われる大きな音が聞こえ、放出が続いていることが確認できました。

東京電力によりますと、28日午後5時までに1420トンの処理水を放出しているということです。

設備の稼働状況に問題はなく海水のモニタリング調査でも異常はみられないことから、当初の計画通り、9月10日ごろまでにタンク8基分にあたる7800トンを放出するとしています。

立民 枝野前代表「プロセスに深刻な問題」

立憲民主党の枝野 前代表はさいたま市で講演し「処理水を海に流す話がいきなり落ちてくるようなスタートから間違っていて、プロセスに深刻な問題があった。もうちょっと納得感を得られるようなやり方はいくらでもあった」と指摘しました。

また、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことについて「政府が想定していなかったなら論外だ」と批判しました。

国際電話 復興と風評ふっしょくに向けた商業施設にも

相馬市にある「浜の駅 松川浦」は、震災と原発事故からの復興と風評のふっしょくに向けて3年前に開設され、主に地元で水揚げされた魚などを販売しています。

施設によりますと、処理水の海への放出が始まった翌日の25日、中国の国番号「86」から始まる国際電話の着信があり、応対すると、男性らしき声の人物が中国語のようなことばで一方的にまくしたててきたということです。

それ以降、同じような電話には応対せずにすぐに切るようにしたということですが、着信は日中だけで少なくとも60件相次ぎ、特に多い時間帯には、34件続けてかかってきたということです。

26日になると着信件数は減ったものの、27日も散発的にかかってきているということです。

「浜の駅 松川浦」の山田豊店長は「客や取引先への対応があるため電話線を抜くことはできずとても迷惑だ。このようなことが起きるとは思ってもみなかった」と話していました。

福島県警察本部によりますと、県内の自治体や飲食店などからは、中国の国番号から始まる国際電話の着信で、業務に支障が出ているという相談が数多く寄せられているということで、迷惑電話を受けないようにするサービスに登録するなどの対応を呼びかけています。

福島県の調査でもトリチウム濃度 下限値下回る

福島県は原発事故の前から福島第一原発周辺の海水のモニタリング調査を6つの地点で開始し、処理水の放出に向けた工事などが本格化した昨年度からは9つの地点に増やして調査を続けています。

県は、処理水の海への放出が始まった翌日の25日に採取した海水の分析を行い、26日、結果を発表しました。

それによりますと、9つの地点の1リットルあたりのトリチウムの濃度はいずれも今回検出できる下限としていた値を下回ったということです。

県は分析結果をウェブサイトで公開していて、次の調査を来週中に行う予定です。

福島県沖のトリチウム“全地点で検出下限の濃度下回る”

東京電力福島第一原発にたまる処理水の海への放出を受けて、環境省は放出開始の25日、放水口の付近や遠いところでおよそ40キロメートルの地点など福島県沖のあわせて11地点で海水の採取を行い、研究所でトリチウムなどの濃度について分析しました。

そして26日、分析結果についてトリチウムの濃度は11地点のすべてで今回検出できる下限値としていた1リットルあたり10ベクレルを下回ったと発表しました。

処理水の放出前に同じ海域の海水を分析した際は、高いところで1リットルあたり0.14ベクレルだったということで、環境省は今後、より詳しい分析を進めることにしています。

今回の結果を受けて西村環境大臣は「分析の結果、11カ所すべてでトリチウム濃度が検出下限値未満であり、人や環境への影響がないことを確認した」などと談話を発表しています。

環境省は結果についてホームページやSNSで公表し、当面は、1週間に1回の頻度でモニタリングを続けることにしています。

中国の日本産水産物の輸入停止 即時撤廃求める考え 経産相

西村経済産業大臣はNHKの日曜討論で、「データを透明な形で公表していくことが非常に大事で、きのうおとといの数値はすでに公表され、検出の限界値より低い」と述べ、今後も分析結果を公表し、安全性と放出への理解を促していく考えを示しました。

一方で、処理水の放出に反発し、中国が日本産の水産物の輸入を全面的に停止するなど、影響が広がり始めています。

政府は漁業者を支援するための総額800億円の基金を活用し、風評対策などに取り組む方針で、西村大臣は、「水産物が売れない場合に一時的に保管をすることを含めて使え、すでに宮城県や北海道の漁業者から相談を受けているので活用を急ぎたい」と述べました。

また、中国政府に対しては「即時撤廃を申し入れたところで科学的根拠に基づいた対応を強く求めたい」と述べ、引き続き輸入規制の即時撤廃を求めていく考えを強調しました。

一方、福島県の内堀知事は「福島の漁業者の皆さんが望んでいるのは、自分たちの大切な海で、いまの世代、そして将来の世代も漁業を継続していきたいということだと思う。政府には、漁業者の葛藤を胸にきざんで将来にわたって安心して漁業を継続できるよう万全を期していただきたい」と求めました。

政府・与党 さまざまなレベルで対応改めるよう働きかけへ

福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する措置が始まったことを受けて、中国政府は日本産の水産物の輸入を全面的に停止しました。

これについて自民党の萩生田政務調査会長は「科学を根拠にせず政治的な思惑で輸出入を止めることはあってはならない」と批判しました。

こうしたなか、公明党は28日から予定していた山口代表の中国訪問を延期すると発表しました。

中国側から「日中関係の状況に鑑み適切なタイミングではない」と伝えられたとしていて、処理水の放出が影響したものとみられます。

今回の事態について政府・与党内からは山口氏自身が「日中関係全体に影響を及ぼすことは好ましくない」と述べるなど、中国との関係が冷え込むことへの懸念が出ています。

一方で中国の姿勢がすぐに変わるとも思えずきぜんと応じていくべきだという意見もあります。

こうした状況も踏まえ政府・与党は、日本が科学的な根拠に基づいて安全に放出を行っていることを国際社会に粘り強く発信していくとともに、中国に対してさまざまなレベルで対応を改めるよう働きかける方針です。

福島県内に中国からの着信相次ぐ 警察が注意呼びかけ

福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まった24日以降、福島県内の自治体や飲食店、学校などに中国の国番号「86」から始まる国際電話の着信が相次いでいます。

警察によりますと、警察のほか、県や自治体に県内の事業者などから「業務に支障が出ているのでなんとかならないか」といった相談が数多く寄せられているということで、福島県警察本部は26日夜県民に対し注意喚起を行いました。

このなかで警察は
▽身に覚えのない電話番号や番号非通知の電話には出ないこと
▽固定電話では身に覚えのないのにかかってきた電話番号をNTTの「迷惑電話おことわりサービス」に登録すること
▽携帯電話は国際電話の受信拒否の設定をすることといった対策をとるよう呼びかけています。

警察は自治体などと連携して、必要な捜査を進めるとしています。

北京の日本大使館 反日デモなどの警戒強める

北京にある日本大使館によりますと、処理水の放出とは関係のない日本国内の個人や団体に対して中国から嫌がらせの電話などが相次いでいるということです。

大使館は、中国当局に対して法律に基づいて厳正に対応するよう求めています。

また、大使館で26日開催される予定だった日本人ピアニストによるコンサートが延期となりました。

現地に住む日本人が多く集まるため、安全を考慮したとしています。

中国では2012年、日本政府が尖閣諸島を国有化したことをきっかけに反日デモが暴徒化し、日系企業などが被害を受けたことがあります。

これまでのところ大きなトラブルや騒ぎは確認されていませんが、日本大使館は「不測の事態が発生する可能性は排除できない」として反日デモなどへの警戒を強め、現地に住む日本人に対して、外出する際には不必要に日本語を大きな声で話さないことなど注意を呼びかけています。

中国のSNSに日本を非難するよう呼びかける投稿相次ぐ

福島第一原子力発電所にたまる処理水をめぐる日本の対応を受け、中国のSNSには、日本を非難するよう呼びかける投稿が相次いでいます。

SNSウェイボーの投稿の中には「『核汚染水』を海に流した日本を非難したい人は、この番号に電話してください」という文言とともに、日本の参議院の電話番号が記載されたものもあります。

また、東京都内の施設に電話をしたとされる動画では、男性が「なぜ『核汚染水』を海に放出するのか」などと一方的に中国語で話す様子がうつされています。

日本人学校の敷地には投石も 容疑者は拘束

中国 山東省青島にある日本総領事館によりますと、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めたうえで海への放出を開始した24日、中国人が青島の日本人学校の敷地に石を投げ込む事件が起きたということです。

学校の施設や子どもなどに被害はなく、容疑者はすでに警察に拘束されたということです。

外務省「極めて遺憾で憂慮」 中国国民に冷静な行動呼びかけ

こうした事態を受けて、外務省の鯰アジア大洋州局長は26日、東京にある中国大使館の楊宇・次席公使に対し電話で「極めて遺憾で、憂慮している」と伝えたうえで、中国国民に冷静な行動を呼びかけるとともに、中国に滞在している日本人や大使館の安全確保に万全を期すよう求めました。

また事態が深刻化しないように、中国政府が処理水について正確な情報を発信するよう要請しました。

最新の主要ニュース7本

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

特集

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

スペシャルコンテンツ

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

ソーシャルランキング

一覧

この2時間のツイートが多い記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

アクセスランキング

一覧

この24時間に多く読まれている記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。