全国で656か所 国宝・重要文化財が浸水や土砂災害の高リスク

全国にある国宝や重要文化財に指定された656か所の建物が、大雨による浸水や土砂災害のリスクが高い区域にあることが、GIS=地理情報システムという技術を使った奈良文化財研究所の独自の調査でわかりました。

調査を行った研究員は「文化財はこれまで火災対策の優先度が高かったが、水害への対策も必要だ」と指摘しています。

近年、地球温暖化などの影響で集中豪雨の頻度が増加していて、2020年には熊本県で国宝の青井阿蘇神社の本殿が床上浸水したほか、去年は新潟県で国の重要文化財の五十嵐家住宅の建物が土砂崩れで倒壊するなど、文化財の建物への被害が相次いでいます。

これを受けて、奈良文化財研究所の高田祐一主任研究員が、GIS=地理情報システムを使って、文化庁のデータベースに登録された2585か所の国宝と重要文化財の建物の位置情報と国土交通省が提供する全国のハザードマップを重ねて独自に調査した結果、656か所の建物について土砂災害警戒区域か浸水想定区域にあることがわかりました。

このうち80か所は特に危険性の高い「土砂災害特別警戒区域」にありました。

さらに浸水想定区域で特にリスクが高い場所について、各自治体を取材して得た詳細なデータを反映している「NHK全国ハザードマップ」を使って高田主任研究員が調べたところ、3メートル以上の浸水が想定される建物が22か所、確認されました。

高田主任研究員は「最近では豪雨が増えて文化財に対するリスクも高まっている。これまでは火災の対策の優先度が高かったが、次のステップとして水害への対策も必要ではないか」と話しています。