プリゴジン氏搭乗機墜落 ワグネル弱体化ねらいか ロシア側否定

ロシアの民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏が搭乗していた自家用ジェット機には、ワグネルの主要な幹部たちも搭乗していたとされています。墜落はプーチン政権側がことし6月に武装反乱を起こしたワグネルを一気に弱体化させるために行ったという見方が出ています。

ロシアのプーチン大統領は24日、民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏に哀悼の意を表し、ロシア北西部のトベリ州で墜落した自家用ジェット機にプリゴジン氏が搭乗し、死亡したことを事実上、認めました。

ロシア側は犠牲者の身元の確認や機体が墜落した原因の調査を続けているとしていますが、アメリカの複数のメディアは、機内に仕掛けられた爆発物によって墜落した可能性があると伝えています。

墜落した自家用ジェット機には、乗客のリストなどからプリゴジン氏のほか、ワグネルの軍事部門の指導者のウトキン氏や後方支援を担当する責任者のチェカロフ氏も搭乗していたとみられています。

イギリス国防省は25日「プリゴジン氏の死亡は、ワグネルに対し深刻な不安定化を確実にもたらすことになる。ワグネルの創設者でもあるウトキン氏やチェカロフ氏も死亡したと伝えられるなか、ワグネルの指導体制はさらに空洞化するだろう」と指摘し、ワグネルが一気に弱体化すると分析しています。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も24日、ジェット機の墜落は、ワグネルの弱体化をねらったプーチン大統領の指示によって行われたとする見方を示し、「指導部が排除されたことで、今後、ワグネルがロシア国防省から独立して活動する手段はなくなるだろう」と分析しています。

そしてプリゴジン氏についてプーチン大統領が24日、「重大な過ちを犯した」などと述べたことに関連して、「『プリゴジン氏は、大統領が許してくれたと確信していた』とも伝えられているが、武装反乱がプーチン大統領にとってどれだけ深刻な屈辱を与えたかプリゴジン氏は過少評価していた。今回のプーチン大統領の発言は重大な過ちを犯したら忠誠心を示すだけでは乗り越えられないという警告だ」という見方を示しています。

専門家「権力体制の安定化がねらいなのでは」

プリゴジン氏が搭乗していたとされる自家用ジェット機が墜落したことについて、ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員は「プーチン体制、今のロシア国防省に対して刃向かったという観点からするとプーチン大統領をトップとしたクレムリンの関与は否定できないと思います」との見方を示しました。

そのうえで「プリゴジン氏という反乱分子を抱えることがリスクになった。3月には大統領選挙が予定される中で、権力体制を安定化させ、強固にするのが最大のねらいなのではないか」と分析しました。

また、プーチン大統領が24日、プリゴジン氏に哀悼の意を表したことについて「ワグネルを支持する動きが一定数、ロシア国民にあったので、こうした動きや国内世論に配慮したのではないか」と述べました。

今後の戦況については「いまのところロシア正規軍が主となって戦っている」として短期的には影響は少ないという見方を示しましたが「今後ロシア軍が大きく損耗した場合、機動性の高い軍事会社をひとつ失ったという点では少なからず影響がある」として長期的には影響が出る可能性を指摘しました。

ロシア報道官 “臆測 完全なうそ” 政権の関与 全面否定

ロシア大統領府のペスコフ報道官は25日、記者団に対し、「飛行機の墜落とプリゴジン氏を含む乗客の悲劇的な死亡について、多くの臆測が飛び交っている。欧米側がこうした臆測を紹介するが、すべて完全なうそだ」と述べ、プリゴジン氏が搭乗していたとされる自家用ジェット機の墜落をめぐり、プーチン政権が関与したとする疑惑を全面的に否定しました。

また、ペスコフ報道官は、プリゴジン氏の死亡は、公式にはまだ確認されておらず、DNA鑑定などが進められると説明しました。