埼玉 秩父の小中学生にクマよけの鈴など配布 相次ぐ目撃情報で

クマの目撃情報が相次いでいる埼玉県秩父市で、2学期が始まった子どもたちの身を守ろうと小中学生にクマよけの鈴とホイッスルが配られました。

埼玉県秩父市ではことし4月から8月25日までに市内でクマの目撃情報が39件と昨年度1年間の件数をすでに上回っています。

このため秩父市は、25日から2学期が始まった市内の小中学校のすべての児童や生徒4000人余りに、今回初めてクマよけの鈴とホイッスルを配りました。

このうち、久那小学校では始業式を終えたあとクラスごとに担任の教員がクマよけの鈴やホイッスルの使い方を説明しました。

子どもたちはさっそくランドセルに鈴やホイッスルを取り付けて下校していました。

小学6年の男子児童は「数年前に自宅近くでクマを見たことがあって、怖かったです。今日もらった新しい鈴は音がよく出るので安心して学校に登校できます」と話していました。

久那小学校の浅見和良校長は「これまでは新型コロナや熱中症について注意を払っていましたが、今後はクマへの警戒もしなければならない。こどもたちが安心・安全な学校生活が送れるように見守っていきたい」と話していました。

児童の通学路でも…

クマよけの鈴とホイッスルを配った久那小学校の教員は、23日午前7時55分ごろ、通勤途中の車の中で、クマを目撃したということです。

目撃した場所は、小学校から400メートルほど離れていますが、児童の通学路にもなっています。

教員によりますと、車を運転していたときにやぶから出てきて道路を横切っていったということです。

教員は「大きさは柴犬より一回り大きく体の色が真っ黒で、鼻先が犬とは違うクマの特徴がありました。歩き方がのそのそと大股だったので、クマだと確信しました。びっくりしたと同時に、子どもの安全が気になったので即座に通報しました」と話していました。

住宅地の近くや観光地でも…

埼玉県秩父市でクマが目撃された件数はことし4月から8月25日までに39件にのぼっています。

目撃された場所が住宅地に近いのも特徴で、25日午前7時ごろ目撃されたのは、秩父鉄道の影森駅から数百メートル離れた荒川の周辺で、近くには学校や住宅地もあります。

その45分後には、目撃された地点から近い上流の場所でも目撃されました。

また、多くの観光客が訪れる場所でも目撃されています。

6月中旬には羊山公園の芝桜の丘周辺で、目撃されました。

また先月下旬には秩父ミューズパークの周辺で、さらに今月上旬にはこのミューズパーク内の「ミューズの泉」付近でも目撃されています。

専門家「大切なのはクマを森から出さないこと」

秩父地方をはじめ各地でクマの目撃情報が相次いでいることについて、東京農工大学大学院の小池伸介教授は「今はクマが秋にかけて主食のドングリを探し始める時期にあたるので、山奥の生息地でとれなかったりすると大きく動くことになり、人目につきやすくなる」話しています。

さらに、住宅地の近くでも目撃される要因について、「クマが好物の木の実やクリ、それに畑の作物もクマをひきつけている可能性がある」としたうえで、「クマは賢くて記憶力のいい動物なので、一度そういう成功体験をすればより大胆になったり、また同じ所にやってくることもできる」といいます。

では、クマにどう対処したらいいのか。

小池教授は対策について、「多くのクマは人間に近づきたくはないものなので、鈴を持つことは耳のいいクマに人間のいるところから立ち去ってもらう意味で有効だと思います。何よりも大切なのはクマを森から出さないこと。やぶを刈り払うなどして、人との生息エリアをはっきりと分ける環境作りが大事ではないか。山に入るときには、クマの目撃情報などにも注意を払ってほしい」と話していました。