仙台育英“流れ渡さない継投”最後に力尽く【解説】

史上7校目の連覇はなりませんでした。

仙台育英高校(宮城)は層の厚い投手陣をそろえ、継投で試合の流れを渡さない戦いぶりで2年連続で決勝まで勝ち上がりましたが、最後に力尽きました。
(甲子園取材班 記者 並松康弘)

ことしもエースに頼らず“継投策”で

エース 高橋煌稀 投手

仙台育英は須江航監督が2018年に就任してから投手の疲労をためないことや、相手バッターの目先を変えて対応しづらくさせることを目的に1人のエースに頼らず、複数の投手を起用する戦い方をとってきました。

去年 夏の甲子園で東北勢として初優勝

去年の夏の甲子園でも5試合すべてを継投で勝ちあがり東北勢として初優勝を果たしました。

湯田統真 投手

ことしも大阪の履正社など強力打線を擁するチームとの対戦が続きましたが、最速151キロをマークした湯田統真投手と、去年の優勝投手で、エースの高橋煌稀投手を中心に、この大会でベンチに入った5人の投手全員を起用し、試合後半の6回以降は3試合で得点を与えないなど相手に流れを渡しませんでした。

必勝パターンの継投が…

慶応 丸田湊斗 選手に先頭打者HR

そして、連覇をかけて臨んだ慶応との決勝では、先発の湯田投手が先頭打者ホームランを打たれるなど2回までに3点を失う苦しい展開になりました。

2対3で迎えた5回は高橋投手が2人目としてマウンドに上がりました。

これまでの必勝パターンで流れを呼び込もうとしましたが、守りのエラーなどもあって一挙5点を失い、逆に突き放され、試合の流れは慶応に一気に傾きました。

仙台育英 須江航 監督

須江監督
「湯田投手と高橋投手は、よく投げてくれたと思います。初戦からの積み重ねで2人の負担がもう少し、少ない状態を作れなかったのが総合的な敗因かなと思います。試合後、選手たちはぼろぼろ泣いていましたが『負けたときに人間の価値が出るから、どこで負けても全力で拍手を送ってほしい』と前に話したことを守って、相手に向かって一生懸命拍手していました。その姿は自分の誇りです」

完投数が減少“投手起用 新たな転機に”

高校野球では、2020年に投手をけがから守るために1人の投手が投げる球数を1週間に500球以内とする球数制限が導入されたことなどからエースが1人で投げきるチームは大きく減ってきました。

ことしの大会で、先発したのべ96人の投手のうち、完投したのは14人にとどまり、10年前の45人と比べてもおよそ3分の1に激減。

1府県1代表となり、49校が出場するようになった1978年の60回大会以降では最も少なくなりました。

投手起用が新たな転機を迎えるなか、複数の力のある投手を育てて2年連続で決勝に進んだ仙台育英の戦いぶりは、確かにその足跡を残しました。