国際

新興5か国 BRICS首脳会議“加盟国拡大”議論の行方は

中国、ロシア、インドなど新興5か国でつくるBRICSの首脳らによる会議が南アフリカで開かれ、中国の習近平国家主席は「BRICSの拡大のプロセスを加速すべきだ」と述べ、加盟国の拡大に意欲を示しました。ロシアとともに欧米への対抗軸としてBRICSの強化を目指す中、加盟条件などの議論の行方が注目されています。

焦点は“加盟国の拡大”

中国、ロシア、インド、ブラジルそして南アフリカの新興5か国でつくるBRICSの首脳会議は南アフリカの最大都市ヨハネスブルクで22日から開かれていて、2日目は首脳らによる全体会議が開かれています。

今回の会議では加盟国の拡大が大きな焦点となっていて、中国の習近平国家主席は「BRICSの拡大のプロセスを加速し、より多くの国を参加させて知恵を集め、国際秩序をより公正な方向に発展させていかなければならない」と述べ、改めて加盟国の拡大に意欲を示しました。

中国やロシア“欧米への対抗軸”目指す

また、対面での出席を見合わせたロシアのプーチン大統領もオンラインで演説し、「BRICSの戦略的な方向性は将来を見据えたもので、世界の多数派の期待に応えている」と述べ、BRICS各国との連携と枠組みの強化を進めていきたい考えを示しました。

中国やロシアが欧米諸国への対抗軸としてBRICSの強化を目指す中、これまでにイランやサウジアラビア、アルゼンチンなど、20か国あまりが参加を希望していて、新規加盟の条件などをめぐる議論の行方が注目されています。

ロシアと欧米の間で板挟みの南アフリカ

ロシアがウクライナに侵攻した後も、南アフリカはロシアとの友好関係を維持していますが、その姿勢をめぐっては国内でも意見が割れています。

南アフリカはロシアの軍事侵攻を非難する内容の国連総会の決議をいずれも棄権しているほか、侵攻から1年となることし2月にはロシアや中国との軍事演習も行いました。

南アフリカの政権与党、ANC=アフリカ民族会議は、かつてアパルトヘイト=人種隔離政策の撤廃に向けた闘争で当時のソビエトの支援を受けた経緯があり、現在もロシアとの関係を重視する傾向があります。

国際関係・協力省報道官「ロシアとの間に歴史的つながり」

これについて、南アフリカの国際関係・協力省の報道官は「われわれとロシアの間には歴史的なつながりがある。ロシアがウクライナとの紛争を抱えているからといって、その事実が変わるわけではない。われわれは国益に基づき、外交を展開する」と述べ、ロシアとの関係の維持を正当化しています。

野党は批判「国際的な地位と経済 大きく損ねる」

これに対して南アフリカの野党からは、政府がロシアによる軍事侵攻を非難せず、友好関係を維持していることで、南アフリカの国際的な地位と経済的な利益を大きく損ねていると非難の声が出ています。

市民の意見も分かれる

市民の意見も割れていて、南アフリカ第2の都市ケープタウンで市民に話を聞いたところ、「南アフリカはロシアと協力すべきではなく、首脳会議を開くべきではない」とか、「ロシアとの友好関係を維持するのは疑問で、欧米との重要な関係を損なうことになる」などと否定的な意見も聞かれました。

その一方で、「南アフリカとロシアは長年、友好関係で結ばれてきた。離れることはできない」とか、「アメリカだってイラクやアフガニスタンに侵略し、多くの市民を殺したことには変わりない」などと、ロシアとの関係を支持し、欧米に反感を抱く声も聞かれました。

政治アナリスト「南アフリカにどちらかを選択する余裕はない」

南アフリカの政治アナリストで、国際関係に詳しいダニエル・シルク氏は「南アフリカの与党にはロシアへの長年の友好関係に加え、欧米への不信感が今もあり、ロシアはそこを巧みに突いた外交を展開している。しかし、経済が著しく低迷する中、欧米との関係も重要で、南アフリカにはどちらかの陣営を選択するような余裕はない」と指摘しています。

アメリカは警戒強める

南アフリカがロシアと友好関係を維持していることにアメリカなどは警戒を強めています。

ことし5月には、南アフリカに駐在するアメリカの大使が、「去年12月、南アフリカの海軍基地からロシアの貨物船に武器や弾薬が積み込まれ、ロシアに運ばれた」と指摘しました。

南アフリカ政府はこれを否定していますが、独立した調査委員会を設けて事実関係を調べています。

また、ことし6月にはアメリカの有力な上院議員らが、南アフリカはロシアの軍事侵攻を事実上、支持しているとして、アフリカ諸国からの輸入品への関税を免除する優遇措置から排除される可能性があると警告しました。

そのうえで、ことし南アフリカでの開催が予定されているアメリカとアフリカ諸国の通商協議の開催地を変更するようアメリカ政府に求めています。

南アフリカにとってアメリカは中国に次ぐ第2の貿易相手で、ラマポーザ大統領がアフリカ諸国の代表とともにウクライナとロシアの双方を訪れ、和平に向けた仲介を申し出るなど、ロシア寄りだとする指摘の解消を図る動きも見せています。

経済界からは懸念の声

しかし、経済界からは、今回、BRICSの首脳会議を南アフリカで開くことで、アメリカからの圧力がますます強まるのではないかとの懸念の声が出ています。

南アフリカの西ケープ州でかんきつ類を生産する農場では、アメリカの貿易優遇措置の恩恵を受けてオレンジの輸出を進めていて、売り上げの45%をアメリカ向けの輸出が占めているということです。

1000ヘクタールの農地で年間4万トンのかんきつ類を栽培し、収穫のピーク時にはおよそ2000人の労働者を雇用するなど、地域経済の要となっています。

しかし、最近は肥料や農薬、燃料などの価格高騰や船での輸送費用の値上がりで、ことしの生産コストは去年に比べて20%上昇していて、ウクライナ情勢の影響に加え、アメリカとの関係が悪化しないか懸念を強めています。

農場経営者「アメリカの優遇措置を失えば大きな損害」

農場を経営するへリット・ファン・デル・メルウェさんは「私たちにはアメリカとの貿易が必要です。もし、大国間の争いに巻き込まれ、アメリカの優遇措置を失えば、われわれだけでなく、地域全体も大きな損害を受けることになります」と話していました。

最新の主要ニュース7本

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

特集

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

スペシャルコンテンツ

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

ソーシャルランキング

一覧

この2時間のツイートが多い記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

アクセスランキング

一覧

この24時間に多く読まれている記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。