アルツハイマー病新薬 早ければ年内にも患者に使用へ

日本とアメリカの製薬会社が共同で開発したアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新薬について、厚生労働省の専門家部会は21日夜、使用を認めることを了承しました。
近く厚生労働省が正式に承認する見通しで、早ければ年内にも患者に使われるものとみられます。

使用が了承されたのは、日本の製薬大手「エーザイ」がアメリカの「バイオジェン」と共同で開発した、認知症の原因の1つアルツハイマー病の新しい治療薬、「レカネマブ」です。

アルツハイマー病の患者の脳にたまる「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を取り除くことができ、症状の進行を抑えることが期待されています。

エーザイが厚生労働省に承認申請を行い、21日夜開かれた厚生労働省の専門家部会は、有効性が確認でき、安全性にも重大な懸念はないとして、使用を認めることを了承しました。

アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ取り除くための薬が国内で了承されるのは初めてです。

また薬を使う対象について、認知症を発症する前の「軽度認知障害」の人やアルツハイマー病の発症後早い段階の人とすることも了承しました。

近く厚生労働省が正式に承認する見通しです。

また、薬の価格はすでに承認されているアメリカでは1人あたり平均で年間2万6500ドル、日本円に換算しておよそ385万円と設定されていますが、日本ではまだ決まっていません。

薬を開発した「エーザイ」は近く公的医療保険の適用を求める申請を行う見通しで、承認から遅くとも90日以内に中医協=中央社会保険医療協議会で、保険適用と価格について結論が出され、早ければ年内にも患者に使われるものとみられます。

早期診断と価格が課題

「レカネマブ」が国内で承認されても、アルツハイマー病の患者すべてが使えるようになるわけではありません。

この薬の効果が期待できるとされるのは、症状が比較的軽く、脳に「アミロイドβ」がたまっていることが確認できた早期のアルツハイマー病の患者で、症状が進行した患者などは薬の対象にならない見通しです。

また、早期のアルツハイマー病の患者を正確に見つけ出すことも課題です。

脳の中の「アミロイドβ」は、画像にして写し出すPETと呼ばれる装置か腰に針を刺して採取する脳脊髄液で調べていますが、実施できる施設が限られていたり体への負担が大きかったりと手軽に行える検査ではないほか、アルツハイマー病の診断には公的な保険が適用されないため、費用が高額になります。

より簡単で患者に負担が少ない診断技術として、わずかな血液から脳の「アミロイドβ」の量を推定する技術が開発されていますが、診断を確定させる技術としては実用化に至っていません。

さらに、薬自体の価格も課題です。

日本での価格はまだ決まっていませんが、すでに承認されているアメリカでは、日本円に換算しておよそ385万円と設定されています。

日本では、承認から遅くとも90日以内に、中医協=中央社会保険医療協議会で、公的な医療保険の適用と価格について結論が出ることになっていて、議論の行方が注目されます。