観光庁長官 “訪日旅行者 年内にもコロナ前水準回復の見通し”

日本を訪れる外国人旅行者が急増していることを踏まえ、観光庁の高橋一郎長官は年内にもひと月当たりの訪日旅行者数がコロナ前の水準に回復するという見通しを示しました。

日本政府観光局のまとめによりますと、先月日本を訪れた外国人旅行者は232万人余りと推計され、新型コロナの感染拡大前の2019年との比較で77%の水準まで回復しています。

これについて観光庁の高橋長官は、21日の記者会見で「訪日客数は少しずつ改善傾向にある。日本に来る外国人と外国に出発する日本人の双方向の回復拡大にしっかり取り組んでいく」と述べました。

さらに、今月10日に中国から日本への団体旅行が解禁されたことについて、高橋長官は「10月の国慶節の時期には中国からの団体旅行客が本格化すると想定している。ひと月当たりの訪日客数が年内にもコロナ前の水準に戻ることも視野に入れている」と述べました。

一方で、高橋長官は「観光需要の急速な回復で宿泊施設などで人手不足が顕著になり、宿泊施設では、稼働を落とさざるをえない状況も生じてきている」と述べ、今後、急増が見込まれる需要に対応するため、宿泊や旅行業界の人手不足の解消に向けて国として支援を強化する考えを示しました。

中国からの団体旅行が再開 インバウンド消費押し上げも

コロナの影響で大きく落ち込んだ外国人旅行者の数は、このところ急速に増えています。

日本政府観光局のまとめでは、7月に日本を訪れた外国人旅行者は推計で232万人余りで2か月連続で200万人を超えました。

7月として最も訪日客が多かったコロナ前の2019年と比べても77%の水準まで回復しました。

一方で回復が遅れているのが中国からの旅行者です。

中国からの旅行者は、2019年7月には105万人余りと外国人旅行者全体の35%を占めていましたが、先月は31万人余りにとどまり外国人旅行者全体の中での比率も13%となっています。

中国からの旅行者は、ほかの国や地域からの旅行者と比べて回復が遅れていますが、背景には、中国政府がコロナ禍以降、日本への団体旅行を制限してきたことがあります。

こうした中、中国政府は今月10日に日本への団体旅行を解禁し、今月18日には中国南部の広州から旅行客の第1陣が関西空港に到着しました。

これをきっかけに今後、中国からの旅行者の数がさらに回復すれば国内でのインバウンド消費の押し上げにつながると期待されています。

中国からの団体旅行が再開されたことで外国人旅行者の数やインバウンド消費額はどうなるのか。

大和総研の試算によりますと、今後、再来年の3月までに中国からの旅行者がコロナ前の水準に回復すると想定した場合、ことしの外国人旅行者の数は2430万人と去年の6.3倍に増えると見込んでいます。

これに伴ってことしのインバウンドによる消費額は、2000億円程度押し上げられ、4兆1000億円程度になると予測しています。

ただ、コロナ禍以降、中国からの旅行者の間で東南アジアなど日本以外の旅行先への人気が高まっていることに加え、このところ中国経済の回復の勢いが減速していることを踏まえ、中国からの旅行者数の回復のペースについては今後、注視していく必要があるとしています。

愛媛 中国人観光客呼び込みでメディア関係者らを視察に招く

愛媛県は、中国人観光客を呼び込もうと、現地の旅行会社やメディア関係者ら13人を視察に招きました。

愛媛の魅力をメディアやSNSで発信してもらうのが目的で、一行は20日、松山城を視察し、国の有形文化財に登録されている「筒井門」でガイドから日本の城の造りなどについて説明を受けました。

また、松山市を一望できる本丸広場ではカメラやスマートフォンで市内の風景を撮影したり記念写真を撮ったりしていました。

中国の新聞社の担当者は「東京や大阪などの大都市とは違ってのんびり旅行できると思うし自然や環境が非常によい」と話していました。

今回の視察について愛媛県には新型コロナの感染拡大後、欠航が続いている松山と上海を結ぶ定期便の再開につなげたいねらいもあるということです。

愛媛県観光国際課の橋本友彰主任は「松山空港の国際線は再開の見通しが立っていないが視察した内容を効果的に発信してもらえるよう働きかけていきたい」と話していました。

一行は、22日まで愛媛県内に滞在し、道後温泉を視察するということです。