「闇バイト」で検挙 少年たちの証言まとめた事例集公表 警察庁

高額の報酬をうたい、特殊詐欺や強盗などの実行役を募る、「闇バイト」の実態や危険性を伝えようと、警察庁は、検挙された少年たちの証言をまとめた事例集を公表し、安易に応募しないよう呼びかけています。

警察庁によりますと、去年1年間に特殊詐欺に関わったとして検挙された2458人のうち、19%にあたる473人は20歳未満でした。

中には「闇バイト」に応募して犯罪行為に加担したケースも少なくないため、このほど、検挙された少年たちの証言をまとめた事例集を公表しました。

事例集では応募してから検挙されるまでの基本的なパターンが紹介され、
▽犯行グループに「報酬は口座に振り込む」と言われたものの、支払われずに逮捕されたケースや、
▽報酬を上回る金を巻きあげられたうえ、警察に密告されて逮捕されたケースなど、
都合よく利用されたあと「捨て駒」として切り捨てられる実態がわかります。

また、
▽犯行グループに自分や家族の個人情報を送信したあとに、詐欺に関わることを断ろうとすると、「家族全員殺す」などと脅され、続けざるをえなかったケースも紹介されています。

警察庁は、事例集をホームページで公開するとともに、都道府県警察や教育機関に配布して活用してもらうことにしています。

警察庁の担当者は、「『闇バイト』はアルバイトではなく犯罪だ。たった一度でも手を染めれば、必ず警察に検挙される」として、安易に応募しないよう呼びかけています。

一度加担すると逮捕されるまで…

事例集では、「闇バイト」に応募してから逮捕されるまでの経緯について、検挙された少年たちの証言を交えて解説しています。

応募する際に多いのは、みずからSNSなどで「高額報酬」などと検索するケースで、
▽「SNSに『お金に困っている』という書き込みをしたら、犯行グループから『働いてみないか。大金を稼げる仕事がある』とメッセージが届いた」とか、
▽「副業募集のアカウントを作ったら、海外の荷物の受け取りに関する仕事を紹介するというメッセージが届いた」といった実例が紹介されています。

応募すると、続いて犯行グループから秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」や「シグナル」を入れて、やりとりするように指示されます。

その後、「アルバイトをするための登録情報として必要だ」などと個人情報を送るように求められ、保険証や住民票、顔写真に加え、家族構成や勤務先、交際相手の情報などをことば巧みに聞き出してくるといいます。

こうした個人情報を送信すると、仕事の詳細が伝えられますが、詐欺だと気付いてやめようとすると、その個人情報をもとに脅されます。

中には、
▽「警察に捕まるリスクが大きいと思い断ると、『自宅に押しかける。母親から狙う』と脅された」とか、
▽「途中で詐欺だと気付き、やめたいと言ったら、『家族全員殺す』などと脅迫された」といった証言があり、
犯行グループの末端として加担せざるをえなくなる状況に追い込まれるのです。

さらに、
▽2回目の仕事を断ったところ、「この前の荷物はおばあさんからだまし取ったお金だ。詐欺の運び屋に加担したな。あなたの顔写真や住所を知っているので逃げられない」などと脅迫されたケースもあり、
一度加担すると、逮捕されるまで抜けられなくなるということです。

警察庁は「怪しいバイトに応募してしまったなど、少しでも不安に感じることがあれば、警察に相談することで、犯罪への加担を未然に防ぐことができる」としています。

「闇バイト」募集は大手求人サイトでも

闇バイトの募集はSNSだけでなく、大手求人サイトでも行われていたことがわかっています。

警察庁によりますと、ことし1月までの1年余りで、特殊詐欺に関わったとして東京や愛知など7都県の警察に検挙された男女38人は、大手求人サイトで実行役の募集に応募していました。

募集広告では、仕事内容について、「配送」や「宅配」「ハンドキャリー」などと紹介されたうえで、応募すると、秘匿性の高い通信アプリに切り替えて連絡をとるように指示されたということです。

警察庁は厚生労働省などと連携し、求人サイトの運営会社に違法な求人の削除やチェックを働きかけるなど、対策を強化しています。

また、SNSや求人サイトなどに記載された、高額の報酬の支払いをうかがわせる内容に加えて、「受け子」や「出し子」、それらを示す隠語の「UD」、それに「運び屋」「荷受け」といった単語を含む書き込みについて、サイトの管理者に削除するよう要請する対策を、早ければ来月から始めることにしています。