“研究者がチフス菌に感染し腸チフス発症” 国立感染症研究所

国立感染症研究所は、研究者1人がチフス菌に感染し、腸チフスを発症したと発表しました。この研究者は業務でチフス菌を扱っていたということで、現在、保健所が感染経路の調査を行っています。

国立感染症研究所によりますと、腸チフスを発症したのは、チフス菌の検査や、治療法の研究などの業務にあたっていた研究者です。

この研究者は今月11日に発熱や腹痛の症状で医療機関を受診してそのまま入院し、15日に腸チフスと診断されていて、現在も発熱や腹痛などが続いているということです。

国立感染症研究所は、研究者が使ったと考えられる実験室やトイレなどを消毒し、現時点で他に体調不良を訴えている人はいないとしています。

研究者は直近で海外への渡航歴はないということで、現在、保健所が感染経路を特定するための調査を行い、研究者の体調の回復を待って詳しく聞き取りをすることにしています。

国立感染症研究所は「保健所の感染経路の調査に協力し、実験室での病原体の取り扱いなどに問題があれば再発防止策を検討することになる」とコメントしています。

「腸チフス」とは

国立感染症研究所のホームページによりますと、「腸チフス」は、「チフス菌」が原因の感染症で、ふん便で汚染された食べ物や水を介してヒトからヒトに感染します。

感染すると7日から14日の潜伏期間を経て発熱や頭痛、食欲不振、全身のけん怠感といった症状が出るほか、重症になると意識障害や難聴が起きることもあります。

「腸チフス」の患者は世界では年間2690万人に上ると推定され、特に南アジアや東南アジアでの患者が多く、衛生水準の高くない国で流行しているということです。

国内では近年、「腸チフス」の感染例は数十例で推移し、その多くが流行している地域への旅行者によるものだということです。

一方、海外渡航歴のない患者も毎年、確認されていて、過去には飲食店での集団感染が起きたこともあります。

感染症法上は「コレラ」や「細菌性赤痢」と同じ「3類」となっていて、患者を診断した医師は、直ちに保健所を通じて都道府県知事への届け出が義務づけられています。