“新型コロナ感染の入所者対応でうつ病発症” 労災認定 兵庫

兵庫県宝塚市の高齢者施設に勤務する60代の女性がうつ病を発症したのは、新型コロナウイルスに感染した入所者の対応にあたった際の心理的負担が原因だったとして、労働基準監督署が労災と認定していたことが分かりました。

労災と認定されたのは、宝塚市の介護老人保健施設に勤務する60代の女性です。

代理人の弁護士によりますと、女性は事務職として勤務していたおととし4月、施設で新型コロナの集団感染が起き、対応する職員が足りなくなったため上司から認知症の入所者のエリアで業務にあたるよう指示されました。

そして、配膳やおむつ交換のほか、新型コロナで亡くなった入所者の遺体の搬送などを6日間担当したということです。

翌月、事務職に復帰しましたが、亡くなった人を間近に見た光景が繰り返し思い出されたほか、食欲不振や不眠の症状が出て休職し、うつ病と診断されたということです。

これについて西宮労働基準監督署は「新型コロナへの対応は緊張を強いられる業務である上、遺体の顔が見える状況での作業は心理的負荷が大きかった」などと指摘し、ことし5月に労災と認定したということです。

女性は現在も休職しているということで、弁護士を通じ「当時は、あの状況がいつまで続くのか分からず心理的にしんどい状況が蓄積していった。労災と認定されて安心した」とするコメントを出しています。

弁護士によりますと、新型コロナに関する業務の心理的ストレスを理由とする労災認定は珍しいということです。

介護職員のメンタルケアに役立つガイド策定 厚労省

新型コロナウイルスに対応する介護職員のメンタルケアに役立ててもらおうと、厚生労働省はおととし、専用のガイドを策定しました。

この中で、新型コロナウイルスに対応する介護の現場では、重症化しやすい高齢者に感染させないよう細心の注意を払いながら職員が業務にあたる必要があり、「平時よりも大きな心理的ストレスを抱えている状態にある」と指摘しています。

そして、今まで以上にメンタルヘルスケアに留意した職場環境を整えることが重要だとして、ガイドでは、メンタルヘルスケアについての教育や研修の実施や、相談しやすい環境づくり、ストレスチェックの実施など、職場で行える対策の実施を呼びかけています。