7月の消費者物価指数 去年同月比3.1%上昇

家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる先月7月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月より3.1%上昇しました。上昇率は6月から0.2ポイント下がりましたが、3%以上となったのは11か月連続です。

総務省によりますと、先月7月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として2022年7月の102.2から105.4に上昇し、上昇率は3.1%となりました。

上昇率は6月から0.2ポイント下がりましたが、3%以上となったのは11か月連続です。

このうち「生鮮食品を除く食料」は9.2%上がりました。

具体的には
▽「鶏卵」が36.2%、
▽「炭酸飲料」が16.4%、
▽外食の「ハンバーガー」が14%、
▽「乾燥スープ」が13.7%上昇しました。

ほかにも、
▽「キャットフード」が28.6%、
▽「宿泊料」が15.1%上がったほか、
▽「携帯電話の通信料」は10.2%上昇し、
料金プランの変更などを受けて比較可能な2001年1月以降最も高くなっています。

一方、「電気代」の上昇率はマイナス16.6%で、政府の負担軽減策に加え足もとの燃料価格が落ち着いていることで、下落幅は拡大しました。

総務省は電気代と都市ガス代の負担軽減策などで生鮮食品を除いた指数は1%余り押し下げられたと試算し、これがなければ上昇率は4.2%程度になったとしています。

また、「サービス」は6月の1.6%から2.0%に上昇し、消費税率引き上げの影響を除くと1993年10月以来、29年9か月ぶりの水準となりました。

総務省は賃金と連動性が高いサービス価格は今後の物価の動向に影響するとみられるだけに引き続き、注視したいとしています。

値上げのパン屋 暑さも売り上げに影響

都内にあるパンの販売店では値上げを行っていて、この夏の暑さもあり売り上げに影響が出ています。

集客につなげようと新たな商品の開発・販売などに取り組んでいます。

東京 三鷹市にある創業70年余りのパンの販売店は1日6000個余りのパンを製造・販売していて客は多い時には1日におよそ700人が訪れます。

この店では先月に去年1月以降で4度目となる値上げに踏み切り、一部の商品を除いて販売価格を2%から14%ほど引き上げました。

主力商品のクロワッサンは税込みで210円から226円と7%余り値上げしました。

店によりますと、小麦や油、砂糖などの仕入れ価格の上昇が続いていて値上がりした原材料の数や上昇の幅はいずれも去年の同じ時期を上回るペースだといいます。

数十種類のパンを焼きたてで販売していて客の多くが定期的に購入に訪れる固定客ですが、値上げの影響で販売数が減少した商品もあります。

さらに、この夏の暑さで外出を控えた客も多かったことから、先月の来店客数は前の月と比べておよそ10%減少し売り上げにも影響が出ています。

このためこの店では、先月からパンだけでなくかき氷を販売しているほか、暑くても食欲がわくように辛い味付けの鶏肉入りのパンを期間限定で販売するなど集客につなげようと取り組んでいます。

「トーホーベーカリー」の松井成和 代表取締役は「ことし6月までの半年間に値上げされた原材料の数はすでに去年1年間での数に達しています。1年に2回も値上げしたくなかったのですがやむをえないです。ことしの夏は暑さと値上げと、厳しい状況にあると感じていますが、これからの秋から冬にかけてはパン屋にとって繁忙期なので客の需要をみながら喜んでもらえる商品、そして付加価値のある商品をできるだけ多く提供したい」と話しています。

氷の販売会社 値上げするも猛暑で売り上げ大幅増

都内にある氷を販売する会社では、値上げの影響で出荷量の落ち込みを懸念していましたが、この夏の猛暑で売り上げは大幅に増えています。

東京 渋谷にある従業員20人余りの氷の販売会社では、飲食店やイベント会場向けに業務用の氷を販売しています。

この会社では製氷会社からの仕入れ価格の上昇や氷の冷凍や加工にかかる電気代が上がったことなどを受けてことし4月に販売価格をおよそ10%値上げしました。

このため、値上げの影響で氷の出荷量が落ち込むのではないかと懸念していました。

ただ、この夏の猛暑と新型コロナが5類に移行されたことを受けて、飲食店で飲料やお酒に使う氷をはじめ、かき氷用の氷やイベントや祭りで使用する氷などの需要が大幅に増えました。

会社では今の時期が最も忙しく、従業員が氷を注文に応じた大きさに加工しトラックで配達していますが、人手が足りずに注文に応じられないことも少なくないといいます。

会社によりますと、この夏の売り上げは去年よりもおよそ30%増えると見込まれるほか、感染拡大前の2019年の夏を10%ほど上回る見通しです。

冨士氷室の植松寛社長は「メーカーから仕入れる氷の価格が上がっているため値上げはやむをえない状況だ。この夏の売り上げは猛暑で大幅に増えたが、これ以上値上げをすることはできないと考えていてそういった状況の中だがなんとかやってきたい」と話しています。

スーパー あえて値下げを行い売り上げ増加へ

スーパーの中にはあえて値下げを行うことで、客や売り上げの増加につなげようという動きも出ています。

東京都と埼玉県、千葉県でおよそ60店舗を展開するスーパーではすべての店舗で今月1日から一部の商品を値下げしています。

対象は冷凍食品や飲料菓子や調味料など168品目で、1%ほどから最大でおよそ32%値下げをしています。

スーパーによりますと円安や原材料費の高騰、物流コストの上昇などで商品の仕入れ値が上がり、去年から多くの商品で店頭での販売価格の値上げが続いていて再値上げなども相次いでいます。

値上げの影響で店を訪れる客の数は減っていませんが、1人の客が1回の買い物で購入する商品の数「購入点数」は、ことし7月の時点で去年の同じ月より5%ほど少なくなっています。

スーパーでは物価の上昇が続く中、消費者は必要な商品だけ購入するという節約の意識が強くなり、買い控えが起きているとしています。

このため、家族連れなどが購入する頻度が高い商品を値下げしたもので、425ミリリットル入りのオレンジジュースは税抜き109円から98円に、カップラーメンは税抜き169円から138円に値下げしています。

東京 中央区の店舗では訪れた家族連れなどが値下げされた商品などを購入していました。

3人の子どもがいる30代の女性は「毎日、買い物しているとやはり高いなと感じます。子どもたちが夏休みで家にいるのでこういう値下げはありがたいです」と話していました。

スーパーによりますと、すべての店舗を対象に訪れた客の数をまとめた結果、今月1日から今月10日までの客の数は去年の同じ時期より2%増加しています。

また「購入点数」も先月と比べて増加の傾向だということで、値下げの取り組みで客の購入意欲が高まり、客や売り上げの増加につながっていると分析しています。

スーパーでは、年内は一部の商品の値下げを続ける予定で、客の需要や季節などに応じて対象の商品も変えていきたいとしています。

東武ストアの浦野浩治郎 商品本部長は「少しでも家計に貢献できるよう今回の値下げを決断しました。客からの反応もよいと聞いているので今後もこの取り組みを続けていきたい」と話しています。

専門家に聞く 今後の物価の見通しは

7月の消費者物価指数が公表され「生鮮食品を除く食料」は1975年10月以来47年7か月ぶりの高い水準となった5月から横ばいが続いています。
今後の物価の見通しなどについて民間のシンクタンク、「ニッセイ基礎研究所」の斎藤太郎経済調査部長に聞きました。

Q.上昇率が3%以上の高止まりが続いているがその要因は?
A.価格転嫁する動きがいちばん顕著に出ているのが食料品だ。
輸入物価自体が下がり、今後、価格転嫁の動きが徐々に落ち着いていくのではないか。
ことしは30年ぶりの賃上げが実現され、それに応じて企業もサービス価格を上げ始めている。
企業が長い間値上げを我慢していたという側面もあり、値上げをしやすい環境になっている。

Q.物価の上昇で個人消費はどういう状況か?
A.個人消費は物価上昇の影響をかなり受けていると思う。
これまではコロナ禍で積み上がった過剰貯蓄を消費に回してきたが、貯蓄のレベルが新型コロナの感染拡大前の水準に戻ってきている。
このため物価高で増えた負担を貯蓄で吸収できなくなり、物価高のマイナスの部分が大きくなってきている。
実質的には収入が減ってるので、消費の量を減らさざるをえないという状況だ。

Q.物価の上昇はいつまで続くとみますか?
A.生鮮食品を除いた指数の上昇率は秋以降におそらく3%を少し割り込み、年末にかけて2%台後半くらいの水準となるのではないか。
「食料」は今がピークで、少しずつ上昇率が下がる。
一方で、「サービス」の価格は人件費の増加を転嫁する動きがこれから本格化すると思うので、今の2%から3%近いところまで上がっていくと思う。

Q.電気代と都市ガス代の負担軽減策をどうみますか?
A.電気代やガス代というのは家計にとっての大きな負担になりますが、政府の政策によって負担が軽減された。負担軽減策は物価を1%くらい押し下げていたので、これがことしの秋以降になくなるとすると、その分負担が増えることになるので1世帯当たり月平均で3700円負担が増える計算になる。

Q.賃上げの課題は?
A.賃上げ率が物価上昇率を追い越す水準まで上がることが望ましく、今はその途中段階だと思う。
先に物価が上がってしまったというマイナスの面はあるが、賃上げがある程度ついてきている状況だ。
これを続けていくと、物価上昇率が落ち着いてきたときに賃上げ率が物価上昇率を上回り望ましい形になる。
ことしは30年ぶりの高い賃上げ率が実現し、来年や再来年になるかもしれないが、賃上げ率が物価上昇を上回る可能性は徐々に高まっていると考える。