高校野球 おかやま山陽が日大三に勝利 ベスト8進出

夏の全国高校野球、大会11日目の第3試合は、おかやま山陽高校が西東京の日大三高に7対2で勝って春夏通じて初めてのベスト8に進みました。

おかやま山陽は1回、4番・土井研照選手の犠牲フライで1点を先制し、続く2回には先発のマウンドに上がった8番・西野彰人投手のタイムリーツーベースでさらに1点を追加しました。

1点差に迫られて迎えた5回には西野投手のタイムリーヒットなど5本のヒットを集めて4点を奪い、突き放しました。

おかやま山陽は、先発の西野投手が6回途中まで投げて2失点にまとめ、その後は投手リレーで日大三高の反撃を抑え、7対2で勝ちました。

おかやま山陽は春夏通じて初めてのベスト8進出です。

一方の日大三高は、3回にキャプテンの二宮士選手がタイムリーツーベースを打って、1点差に迫りましたが、5回の4失点が響いて試合の流れをつかめませんでした。

《両チーム談話》

おかやま山陽 堤監督「自分自身が信じられない」

おかやま山陽の堤尚彦監督は目標にしていた甲子園3勝を果たし、初のベスト8進出を決めたことについて「自分自身が信じられない。新チーム以降、ずっと甲子園3勝というのは言い続けてきたことなので強豪の日大三高に果敢に挑んでくれて目標を実現してくれたことは凄い」と選手たちをたたえました。また、日大三高の先発、安田投手への対応について「チェンジアップが凄いのでストレートに絞って慌てて振るのではなくて、早めに準備するためにもゆったり振ろうと言った」と話していました。

次の試合に向けて「せっかく甲子園でまだ試合ができるので1戦1戦楽しんで、思い切って選手に頑張ってもらいたい」と話していました。

おかやま山陽 渡邊颯人主将「甲子園3勝 素直にうれしい」

おかやま山陽高校のキャプテンの渡邊颯人選手は「ベンチを外れた3年生が宿舎で相手チームの投手の癖を見抜いてくれたりメンバーのために尽くしてくれていて、何とか勝ちというプレゼントをしたかった。甲子園3勝を目標に掲げていたので素直にうれしい」と話していました。

準々決勝に向けては「初戦から多くの人が駆けつけ声援を送ってくれるおかげで勝ちにつながっているので、感謝の気持ちを忘れずにプレーしていきたい」と話していました。

日大三 二宮士主将「もっと打線を勢いづけたかった」

敗れた日大三高のキャプテン、二宮士選手は一時、1点差に迫る3回のタイムリーツーベースについて「2点差だったので、1点ずつ返そうと思って打席に入りました。もっと打線を勢いづけたかったです」と振り返りました。そのうえで、3年生のチームメートについて「誰か1人でも欠けることなく、24人全員がいたからチームが1つになってここまで勝ち上がれたと思います。もっとみんなと野球がしたかったです」と感謝を口にしていました。

日大三 安田虎汰郎投手「おかやま山陽の打線 すばらしかった」

敗れた日大三高のエース、安田虎汰郎投手は5回6失点だったきょうのピッチングについて「調子が悪かったわけではなく、おかやま山陽の打線が粘り強く、すばらしかったです。それでもなんとかして踏ん張らないといけないのがエースだと思います。自分のせいで負けてしまって本当に申し訳ないです」と大粒の涙を流しながら振り返りました。そして「もっとみんなと野球がしたかったです。最高の仲間と指導者に恵まれ、一緒に野球ができて自分は日本一幸せなエースだと思います」と話し、取材時間のおよそ20分、涙が止まることはありませんでした。

おかやま山陽“徹底したストレートねらい”で好投手を攻略

春夏通じて初めてのベスト8を決めたおかやま山陽。徹底したストレート狙いの作戦が当たり、好投手を攻略しました。

「甲子園3勝」を目標にこの大会に乗り込んだおかやま山陽。迎えた3回戦の相手は、甲子園で過去2回の優勝経験がある日大三高です。目標達成への鍵は今大会ここまで2試合、16回余りを投げて無失点の相手エース、安田虎汰郎投手をいかに打ち崩すかでした。

チェンジアップを得意とする安田投手の攻略に向けておかやま山陽の堤尚彦監督は「チェンジアップを映像で見たときに『これは打てないな』と思ったのでストレート1本に絞って打ち返していこう」と選手たちを送り出しました。

このひと言で「迷いなく打席に入れた」とキャプテンの渡邊颯人選手。1回、ファーストストライクのストレートを逃さずに捉え、ツーベースヒットととし、先制点につなげました。

その後も選手たちは監督からの指示を徹底し、低めに落ちるチェンジアップを見極めて手を出さず、ストライクを取りにくるストレートにねらいを定めて5回までに6点を奪い、安田投手をマウンドから下ろしました。安田投手から打った10本のヒットのうち、7本がそのストレートを捉えたものでした。

堤監督は「あんなに打てるとは思いませんでした。選手たちは狙いどおりよくやってくれました」と話しました。

好投手を打ち崩して勢いに乗る、おかやま山陽。

堤監督は「甲子園3勝はうれしいですが、目標を決勝進出に上方修正します」と続けました。

“元ビジネスマン監督”がベスト8導く

おかやま山陽高校を春夏通じて初めてのベスト8に導いた堤尚彦監督。ビジネスマンとしての経験も生かして選手たちを指導しています。

堤監督はふだんから選手たちに「人のためにと思って物事を考えろ」と伝えていると言います。

堤監督はもともと、おかやま山陽高校の監督に就任する前、マネジメント会社でビジネスマンとして働いていました。

お客さんを相手に働いていた際に欲を出すのではなく、相手が求めていることを先に考えて行動することが大事だという当時の経験が選手たちへの指導にも生かされています。

おかやま山陽の野球部には66個の部訓があります。

この中には「働くとは傍を楽にする」ということばが記されています。自分ではなく、他人を楽にするために働くという意味です。ふだんから監督や部長が繰り返し、このことばを選手たちに伝えていると言います。

こうしたチームの指導もあり、今月13日の2回戦で甲子園球場に雨が降る中、第4試合を控えたおかやま山陽の控え部員たちが、第3試合を戦っていた花巻東高校のアルプス席を雑巾を使って拭き掃除をしました。

この様子の動画が旧ツイッターのXで拡散され「素晴らしい」「えらい」などといった反響が寄せられています。

アルプス席で拭き掃除をした控え部員の1人で、チームの応援団長を務める田川大樹さんは…

チームの応援団長 田川大樹さん
「ふだんからグラウンドでゴミを拾っているので当たり前の行動をしただけです。これだけ反響があるのは驚いています」

このあと、練習会場で出会った花巻東高校の部員からは直接、チームに感謝のことばを伝えられたということです。

堤監督
「いい事をしようと思って部員も動いたわけではないと思う。困っている人が助けたりゴミがあれば拾ったりするのは特別なことではなく普通のことですが、いろんな方に褒めていただけるのはうれしい」

元ビジネスマンの監督に導かれ、グラウンドで躍動する選手たちのプレーだけでなくふだんの行動にも注目が集まっています。