26歳専攻医の自殺を労災認定 病院勤務 長時間労働でうつ状態か

去年、神戸市の病院に勤務していた当時26歳の医師が自殺し、労働基準監督署が労災と認定したことが分かりました。病院が設けた第三者委員会は「長時間労働によってうつ状態になり、自殺したのではないか」と指摘していました。

労災認定は去年5月に自殺した「専攻医」

神戸市東灘区にある「甲南医療センター」によりますと、労災が認められたのは、この病院に勤務していた当時26歳の男性医師です。

3年前からこの病院で研修医として勤務し、去年4月からはより専門的な技術や知識を学ぶ「専攻医」として消化器内科で研修を受けながら患者の診療を行っていましたが、去年5月に自殺したということです。

病院は去年、外部の医師や弁護士で作る第三者委員会を設けて亡くなったいきさつなどを調査し、委員会はことし1月、「長時間労働によってうつ状態になり、自殺したのではないか」とする報告書をまとめました。

これについて、西宮労働基準監督署が電子カルテの記録などを調べた結果、労災と認定したということです。

病院側は労働基準監督署が認定した労働時間に基づいて、今月、遺族に未払いの残業代として130万円余りを支払ったということです。

病院が会見「過重な労働させた認識はない」

病院は17日に記者会見を開き、具英成院長は「医師は病院にいる時間すべてが労働時間ではなく、自己研さんが含まれることも多々ある。病院として過重な労働をさせていた認識はない」と述べました。

「専攻医」とは

医師は国家試験に合格して医師免許を取得したあと、基本的な診療の知識や技術を身につけるため、病院で2年間、「臨床研修」を受けることが法律で定められています。

この段階は「研修医」とも呼ばれ、内科や外科、小児科や精神科などさまざまな診療科を回って経験を積みます。

その後、より高度なスペシャリストである「専門医」として認定されるためには、特定の診療科を選び専門的な研修プログラムを修了する必要があります。

この研修を受けている3年目以降の医師が「専攻医」と呼ばれています。

かつての「後期研修医」

専門医制度はそれまで学会ごとに異なっていた認定基準を統一して2018年から始まったもので、それ以前は専攻医は「後期研修医」と呼ばれていました。

制度を運用している日本専門医機構によりますと、専攻医の研修プログラムや期間はそれぞれの診療科ごとに異なりますが、原則として3年から5年に渡り、病院で指導医のもと、患者の診療にあたりながらさまざまな症例について学ぶということです。

専攻医の研修を修了すると、「専門医」の認定試験の受験資格が与えられ、これに合格すると専門医として認められる仕組みとなっています。

研修は「勤務時間内」でも論文準備は「自己研さん」の場合も

機構によりますと、専門は基本の19領域のほか、さらに細かい領域もあり、研修カリキュラムによっては論文執筆や学会発表が求められることもあるということです。

研修は基本的に「勤務時間内」で行われるものの、病院によっては学会発表や論文執筆の準備時間は勤務時間ではなく、「自己研さん」の時間とみなされることもあるということです。