タリバン復権2年 経済状況が悪化 深刻な食料不足

アフガニスタンでは、タリバンの復権以降、経済状況が悪化する中、各国から国際機関への支援も減り食料不足が深刻化しています。

アフガニスタン 経済悪化と深刻な食料不足

首都カブール郊外に住むアブドル・ハクさん(64)は、タリバン復権前は商店で働いていましたが、その後の経済悪化によって仕事を失い、今は荷物を運んで13人の家族を養っています。

しかし、一日に得られる収入は日本円で200円ほどで、小さなパンを1人1つ買い与えるのがやっとです。

こうした状況の中、アブドルさんは国連のWFP=世界食糧計画が行う現金支給の対象となり、この日は日本円で6000円余りを受け取り、その足で小麦粉や食用油を買いました。

ただ、物価の高騰などから受け取った額では2週間ほどの食料しか買うことができないといいます。

アブドルさんは「貧しい者には小麦の価格は高いが、WFPの支援を受け食料を買うことができたことは何よりもうれしい。私は60歳を超え、極度の貧困にあえいでいる。どうか私たちをこれからも支援してほしい」と話していました。

女性の教育や行動の自由が制限 WFPの活動にも影響

アフガニスタンでは、タリバンの復権以降、女性の教育や行動の自由が制限され、さらには国連で働く現地の女性職員の出勤の停止が命じられるなどWFPの活動にも影響が出ています。

一方、カブール市内にある保健施設には、連日、食事を十分にとることができない多くの子どもたちが母親に付き添われ訪れています。

一日およそ250人の子どもが医師の診断を受け、栄養不足の度合いに応じてWFPから提供された栄養価の高い食料や薬品が処方されます。

この日、1歳の息子と施設を訪れたファウジアさん(仮名)です。

夫は崩壊したアフガニスタン政府の元兵士で、タリバンの復権以降は報復を警戒しながら仕事を探していますが、なかなか見つからず収入はほとんどありません。

ファウジアさんは「子どもがおなかをすかしているのを見ると悲しくなり、落ち込む」と話していました。

保健施設のアブドルワリ・アリザイ所長は「ここにやってくる子どもたちは日ごとに増えているので、十分な支援を行うことができない」と話しています。

支援必要とされる人の3分の1しか支援できず

WFPによりますと、各国から拠出される資金は減少し、ことし必要な額の2割余りしか集まらず、支援が必要とされる3分の1に当たる500万人しか支援できていないということです。

その背景としては、世界がウクライナ情勢に目を向けていることや、各国が承認していないタリバンの暫定政権が女性の権利の制限を強めていることなどから、支援しにくい状況があるとみられています。

WFPアフガニスタンのフィリップ・クロップフ報道官は「アフガニスタンはすでに非常に憂慮すべき食料危機にある。もし緊急の資金が得られなければ、この状況をさらに悪化させ人々が苦しむことになる」と警鐘を鳴らしています。

日本から祖国の女性たちを支援する人も

祖国の状況を憂い、仕事を失った女性たちがつくる「じゅうたん」を販売し始めたアフガニスタン出身の男性が千葉県にいます。

千葉県松戸市の住宅街にある店。

アフガニスタンのドライフルーツを販売する専門店です。

店主のバブリ・アシュラフさん
「これは黒マルベリー(桑の実)。アフガニスタンの名産です」
「これはグリーンレーズン。甘みもすごくあって、日本で人気が高い」

アフガニスタン出身で、駐日アフガニスタン大使館の職員として働くかたわら「日本との懸け橋になりたい」と6年前、妻とともに営業を始めました。

バブリさんが、ことしから新たに販売を始めたものがあります。

「ことし3月から始めたのは、アフガニスタンのじゅうたんなんです」

アフガニスタンの伝統工芸でもある、このじゅうたん。

現地で女性たちが糸をより、丁寧に織りあげました。

2年前、アフガニスタンで権力を掌握したイスラム主義勢力、タリバン。

女性の教育や就業などを相次いで制限し、ILO=国際労働機関によると、女性の就業者数は25%減少したということです。

バブリさん
「タリバンになってから、毎月のように女性の権利に制限。はじめは学校へ行くな、そのあとは仕事へ行くな、この仕事するな。すごく悪化しています」

祖国の状況に胸を痛めたバブリさんは去年、現地の仲間とカブール市内で使われなくなっていた工場を見つけ、じゅうたん工場を立ち上げました。

働くのは全員女性。

仕事を失った教師や元警察官、大学に通えなくなった学生などおよそ50人が、1か月に10枚ほどのじゅうたんを製作しています。

アフガニスタンでは、じゅうたんづくりなどの手工芸を伝統的に女性が担っていて、女性たちが収入を得るために取り組みやすいのだといいます。

バブリさんも定期的に現地に足を運び、模様の注文などを行っています。

アフガニスタンの工場で働く元警察官の女性
「タリバンが実権を握ってから以前の仕事に行けなくなったのでここでじゅうたんを織っています。アフガニスタンでは社会の半分を占める女性が権利を奪われ、普通に働いて生活することができません。ぜひ日本のみなさんにじゅうたんを使ってもらい、私たちを助けてほしいです」

夫も働けない状況が続いているため、この女性が工場で得た収入が、家計を支えているといいます。

遠く離れたアフガニスタンから日本に届いたじゅうたん。

表現されているのは、アフガニスタンの豊かな自然や暮らしぶりです。

バブリさん
「草木染めのじゅうたんです。アーモンドの花とか松の木とか。あと、犬。遊牧民が飼っている犬とか。こちらはラクダの足跡。昔からラクダにすごく支えられてきた。それでじゅうたんの模様にした」

バブリさんは、来店客に実際に手で触れてもらいながらアフガニスタンの現状も伝えるようにしています。

来店客
「アフガンの女性たちの仕事にもつながります。女性も日本では考えられないような待遇で生活している。本当に小さい力ではあるが、何か協力できれば」

バブリさん
「いまの仕事をなくしている女性たちの状況を日本のみなさんに知ってほしいです。このじゅうたんを見てアフガニスタンのことを少しでも感じていただけけたら」