カンボジア拠点の日本人詐欺グループ拘束 近く移送へ

カンボジアを拠点に、特殊詐欺を行っていた疑いがある日本人グループを現地当局が拘束し、このうち2人について、日本の警察が近く身柄を国内に移して逮捕する方針であることがわかりました。捜査関係者によりますと、うその投資話を持ちかけて、佐賀県の男性から現金をだましとった疑いがあるということです。

日本人7人拘束 うち2人を日本移送・逮捕へ

関係者によりますと、カンボジア北部のタイとの国境の町、アンロンベン近くで、「ホテルを拠点に、オンラインで詐欺などを行っている日本人がいる」という情報が、ことし5月ごろ、現地の捜査当局に寄せられ、日本人7人が拘束されたということです。

現地の日本大使館を通じて情報提供を受けた日本の警察がホテルの部屋で押収された携帯電話やパソコンなどの証拠品を確認したところ、日本国内で現金をだまし取られた特殊詐欺の被害者に関する情報が見つかったということです。

捜査関係者によりますと、警察はこのうち40代と50代の男2人について、佐賀県内の男性にうその投資話を持ちかけ、現金をだまし取っていた疑いがあるとして、現地に捜査員を派遣して近く身柄を日本に移し、逮捕する方針です。

海外を拠点にした特殊詐欺グループの摘発は相次いでいて、カンボジアでは、ことし4月にも南部のリゾート地を拠点にした特殊詐欺グループとみられる日本人19人が摘発されています。

拘束の30~50代 “パスポート取り上げられたか”

関係者によりますと、拘束された7人はカンボジア北部の、タイとの国境の町アンロンベン近くにあるカジノが併設されたホテルに滞在していたということです。

7人は、客室4部屋に加えてオフィスとしても使える部屋を借りていたということで、室内からは複数の携帯電話やパソコンなどが押収されたということです。

7人は30代から50代までのいずれも男性で、このうち3人はパスポートを所持していませんでした。

カンボジアでは、ことし4月にも南部のリゾート地で特殊詐欺グループとみられる日本人19人が摘発されていますが、その後の調べでパスポートや携帯電話を取り上げられたうえ、行動も厳しく制限されていたメンバーがいたことがわかっています。

こうしたことから関係者は、「今回のケースでも、カンボジアに到着後に監視役を担う人物にパスポートなどを取り上げられていた可能性がある」と話しています。

一方、現地の日本大使館によりますと、拘束された7人のうち2人については現在、入国管理局の施設に収容されているということです。

現場は「ポル・ポト最期の地」

拘束された日本人7人が滞在していたホテルは、カンボジア北部のタイとの国境の町、アンロンベン近くにあります。

世界遺産の「アンコールワット」で知られる観光地、シェムリアップから車で2時間あまりの距離にあるこの地域は、1970年代に過激な共産主義を掲げて170万人以上を死に追いやったとされるポル・ポト派が政権を追われたあとも、最後まで抵抗を続けた拠点です。

ポル・ポトが火葬されたとされる場所

ホテルの目の前には、ポル・ポトが死後火葬されたとされる場所があり、いまも近所の住民たちが訪れ掃除をしたり線香を供えたりしているということです。

地元の人によりますと、以前はこの地域を訪れる外国人はほとんどいなかったということですが、10年ほど前から隣国のタイから陸路で訪れる観光客をターゲットにしたカジノ開発が進められ、訪れる人も少しずつ増えているということです。

専門家 “カンボジア 国際的な犯罪拠点に”

東南アジアの犯罪事情に詳しい国際的な人権団体、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のフィル・ロバートソン氏は、法制度の問題や警察官による汚職の横行によりカンボジアが国際的な犯罪組織の拠点になっているとしたうえで、「現地では、オンラインによる詐欺などを行っているのは、中国系の犯罪組織が多いが、いまや日本が追随している状況だ」と指摘しました。

一方で、こうした犯罪に加担している人の中には、暴力による脅しや人身売買の被害者も含まれている可能性があるとして、「日本の警察による捜査で組織の首謀者が誰なのか解明されることが重要だ」と話しています。

そのうえで、ロバートソン氏は「こうした国際的な犯罪を阻止するには、国際的な連携が不可欠で日本も先頭にたってカンボジアに対して犯罪組織の活動停止を求めるべきだ」と訴えています。

外務省も注意喚起

カンボジアをはじめ東南アジアの国々で、特殊詐欺を行っている疑いがあるとして日本人が現地の警察に身柄を拘束されるケースが相次いでいることを受けて、日本の外務省も8月、ホームページで注意喚起を行っています。

このなかで外務省は「海外で短期間に高収入」などといったうたい文句に誘われ、安易な気持ちで渡航した結果、意図せず詐欺犯罪の加害者になるケースがあるとしています。

そのうえで、一度加担するとやめたいと思ってもパスポートを取り上げられたり、個人情報をもとに脅迫されたりして抜け出すことができないおそれがあるとして慎重な行動を求めています。