暑いけど全力応援したい!アルプス席の熱中症対策は?

猛暑の中で熱戦が続く甲子園。

アルプス席からの声援は選手にとって何よりの力になります。

しかし、この暑さの中、注意しなければいけないのは、熱中症です。

スタンドでは、学校ごとに創意工夫を凝らしながら生徒たちの体調を最優先に応援が続けられています。

この夏からの選手への暑さ対策

ことしから夏の甲子園で新たな暑さ対策として導入されている「クーリングタイム」

5回終了後に選手が10分間の休息をとります。

さらにベンチに入る選手の数が20年ぶりに増えました。

2人増えて20人です。

「クーリングタイム」で日陰に移動

福島の聖光学院はこの「クーリングタイム」を生徒の休憩に活用しました。

初戦の日、甲子園球場の近くの神戸市では最高気温が36度を超えていました。

7月の福島大会では、生徒がイニング間に日陰に移動し休憩する対策を取っていました。

甲子園では応援団をしている選手やブラスバンドの生徒が屋根のないアルプスから空調の効いた球場の裏の通路まで移動。

今大会はイニング間の休憩が10分間あり、時間的にゆとりがありました。

この通路は冷房が効いているため、しっかり涼むことが出来ます。

試合は2時間半を超えて準備していた飲み物も足りなくなり、急きょ500ミリリットルのペットボトルおよそ400本を買い足すほどでした。

生徒たちは「クーリングタイム」を活用し、休憩することが出来たということです。

アルプスの野球部員
「試合中は休憩ができないが、10分間のクーリングタイムに一度、裏の通路で涼めたことで体が休まりました。熱中症対策としてもよかったですし、後半の応援に集中することもできました」

遠藤直仁 応援団統括責任者
「ことしは特に暑いので、熱中症対策の重要性は増しています。試合が白熱すると生徒たちも無理して応援してしまうので、しっかり休憩する時間を学校側が設けることは大切だと思いました」

アルプス席で水をまく!?

アルプス席でユニークな取り組みを始めた学校もあります。

茨城の土浦日大高校は応援する人たちの周辺の気温を下げ、少しでも涼しくなってもらおうと霧状の水をまきました。

活用したのは消毒などで使う噴霧器です。

学校からアルプス席に2台を持ち込み、チームが守りの際に使っています。

学校によりますと6年前、県内の高校の養護教諭が集まる、研修会のなかで、高校野球の熱中症対策として、提案されたことをきっかけに始まり、6年前(2017年)と前回の5年前(2018年)に出場した際にも甲子園で行ったということです。

今月6日の試合では土浦日大が守備の際に生徒たちが交代で7リットル入る噴霧器に氷と水を入れて担ぎ、アルプス席で声援を送っている人たちに霧状の冷たい水をまいていました。

生徒や保護者は気持ちよさそうにしていました。

1年生の男子生徒は「とても気持ちよくて、気分が上がります。しっかり水分を補給し、体を冷やして熱中症の対策をしたい」とリフレッシュしてから再び声援を送っていました。

水をまいた1年生の男子生徒
「気分の悪い人が出ないように、氷水をふきかけて、応援に集中してもらおうとやっています。噴霧器はとても重いのですが、みなさんが喜んでくれるので、やりがいを感じています」

黒いシャツは暑いよね!?

北海高校は、8月の平均気温が22度で関西と比べて過ごしやすい札幌市からやってきました。

この学校では、甲子園での応援からスタンドで演奏する吹奏楽の生徒の格好を一新しました。

7月まで行われた大会では黒の半袖のポロシャツを着ていましたが、直射日光を浴びて暑そうに演奏する様子が何度も見られました。

北海の攻撃が続くと20分ほど演奏が続くこともあります。

吹奏楽局の顧問・鈴木健一先生は「黒のシャツは熱がこもって危険なのではないか?」と感じました。

「このまま勝ち上がって甲子園に行くことになったら、黒だと大変だ。ことしは特に暑さが厳しいのでは。白いポロシャツを注文しよう!」

鈴木先生が健康を第一に考えて急きょ手配しました。

白いポロシャツは試合前日に

その白のポロシャツは1回戦の前日に吹奏楽の生徒の宿舎に届きました。

台風の影響が心配されましたが、なんとか間に合いました。

試合当日…

そして試合当日、アルプス席では吹奏楽の3年生17人が新しい白のポロシャツに袖を通しました。

吹奏楽局の代表を務める 伴和香さん
「日ざしも強く、北海道と暑さが全く違います。黒だと光を集めるので、白の方がよい」

トロンボーン担当 坂本萌維さん
「湿度も高く暑いので吹きづらさはありますが、野球部に勝ってほしいので一生懸命演奏しています。黒は熱がこもっていたので白になってよかったです」

この試合、強い日ざしの中でしたが生徒たちの応援もあってか延長10回、サヨナラタイムリーで北海が勝ちました。

キャプテン 演奏はうれしい

厳しい暑さの中で、続けてくれる吹奏楽の演奏に選手たちは感謝しています。

キャプテン 今北孝晟選手
「応援は力になりますし後押ししてくれる。打席に立っていてもそういう気持ちになるので、暑い中、応援してくれることにうれしく思います」。

吹奏楽局の顧問 鈴木健一先生
「勝ててよかった。この試合で白のポロシャツに変えて体調不良者が出ていないのでほっとしました」

川之江高校は体操服

愛媛の川之江高校は、黒色の制服から体操服に変えました。

生徒たちは「体操服は通気性もよく、動きやすいので快適。汗も拭きやすく体温も下がると思います」と好評でした。

学校側は体操服に変えた効果について「実感として去年以前に比べて気分が悪くなる人はかなり少なく感じます」と話しています。

憧れの舞台で全力プレーの選手たちを声援で後押しするアルプス席。

各校の自主的な取り組みなどさまざまな方法で暑さへの対策をしています。

まだまだ熱戦が続く甲子園。

どのような対策がより効果的なのか、各校の模索は続きます。

(甲子園取材班 記者/小林研太 吉本はづき 隈部敢 藤原陸人 廉谷直大)