NPT準備委最終日 ロシアへの非難相次ぐも 各国対立のまま閉会

世界の核軍縮を目指すNPT=核拡散防止条約の準備委員会は最終日を迎え、議長が会期中の議論をまとめた総括文書の草案を示しましたが、ロシアやイランなどが公式の記録とすることに反対して採択されず、各国が対立したまま委員会は閉会しました。

先月31日からオーストリアの首都ウィーンで開かれていたNPTの次の再検討会議に向けた準備委員会は、11日、最終日を迎え、ビーナネン議長が会期中の議論をまとめた総括文書の草案を示しました。

草案では、▼締約国が世界の核軍縮や核拡散防止に向けNPTの役割の重要性を改めて確認した上で、▼ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関連して、各国が核兵器による威嚇を非難し、ロシア軍が占拠を続けるザポリージャ原発の安全性にも懸念を示したとしています。

さらに▼福島第一原子力発電所の処理水に関連しては、各国がIAEA=国際原子力機関の取り組みを強く支持したとしています。

しかし、この文書は、ロシア、中国、イランが委員会の公式の記録とすることに強く反対して採択されず、これまでの慣例に反して記録から除外されました。

準備委員会では終始、各国から核による威嚇を続けるロシアへの非難が相次いだのに対し、ロシア側は「欧米による安全保障上の脅威が原因だ」などと反論し、対立が際立つかたちとなりました。

閉会にあたってビーナネン議長は「次の再検討会議でも合意が得られなければ、NPTの信頼性が揺らぎかねない」と危機感を示したうえで、各国に歩み寄りを呼びかけました。

日本の引原大使「処理水 正しい理解広がる」

今回の準備委員会では、福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に流す日本の計画について、IAEA=国際原子力機関が「国際的な安全基準に合致する」という報告書を公表したことも、議論になりました。

日本代表部によりますと、日本やIAEAの取り組みに欧米やアジアなど10か国以上が理解と支持を表明し、中国だけが日本の計画を非難したということです。

また、ビーナネン議長がまとめた総括文書の草案も、「締約国はIAEAの関連作業を強く支持した」としたうえで「IAEAの公平で客観的な安全審査の重要性と、科学的アプローチを続ける必要性を認めた」としています。

総括文書は採択されず公式の記録とはならなかったものの、日本の引原大使は記者団に対し「もちろん記録に残った方がよいが、より大切なのは実際に我々が行っていることを各国が理解してくれているかどうかだ。正しい理解が広がり、それを自ら積極的に発言してくれる国が増えてきたことは、非常に意義が大きいと思う」と述べました。